序章 光
そいつは、いきなり俺の前に現れた。
「私には、やることがある。それをあんたに手伝って欲しい」
「なんで俺がテメェに手伝わなきゃいけねぇんだ!」
「まぁ、普通そういう反応になるよね」
そう言うとそいつは持っているキセルを、俺に向けた。
「お前には手伝う選択しかない! 死人のあんたが、私の血を飲めば生き返られる。
さぁ、どうする?
ここで腐るか、その腐る時間を延ばすか」
「なんだよ……。それ……」
「すること、まだたくさんあるだろう? どうだ? 悪者を倒せるぞ?」
女が発した言葉に眉をひそめる。
悪者、だと?
「わ、悪者?!」
「そ。死人を迎えるのが“死神”そして、もう一人いる」
「もう、一人?」
「吸人鬼さ」
女はキセルを加え、煙をはいた。
フーっという音が辺りに響く。
「そいつらは、人の魂・命・心を食べてしまう。時々あるだろ? 人間が狂って人間を殺すって話。
それは全部吸人鬼の仕業だ。あいつらは、人間の心食って心の戸惑いを壊すんだ」
「こ、壊すって……」
「そのまんま。食べられ続けると自我を失う」
その言葉に目を見開く。
自我を失う? 馬鹿言うなよっ!
「馬鹿言うなッ! お前見たいな女の話、誰が信じるかッ!」
俺は女に向かって怒鳴った。
女は気にしたようすもなく、キセルをくわえたままだ。
「雛罌粟だ」
「は?」
突然、脈絡のない言葉を言われポカーンとなる。
その俺の反応にはじめて、不快さを表にだした。
「は?ではない。私の名だ。獅子 雛罌粟! お前の名は? あ、覚えてないか」
「な、何言ってんだ! 名前くらい……あれ……?」
名前を言おうとするが、その肝心の名前を思い出せない。
女――雛罌粟は、俺に近づき顔を覗き込んだ。
「名がなくては不便だ。何か良い名はないか……」
雛罌粟は俺を見つめて、名前を考えているようだった。
おいおい、なんで俺がはじめて会う女に名前を決めてもらわなきゃならんのだ!
「アキラだな」
「は?」
「お前の名は、これからアキラだ」
いきなりそう言われ、戸惑う。
何故、アキラという名なんだ?
「アキラは私のペットの名だ。だから、アキラだ」
「はぁぁぁああぁぁッ?!」
俺の疑問を見透かしたように、雛罌粟は愉快そうに言った。
何なんだッ! この女ッ!!
「アキラは、光と書くんだ。良い名だろう……?」
愉快そうな雛罌粟の笑みに、俺は何も言えなくなった。 |