変態だよ!林田くん!(3/12)PDFで表示縦書き表示RDF


前話までのあらすじ:林田くんが友情を知ったようです。変態だけど。
変態だよ!林田くん!
作:高橋うがい!!



第三変態「悪魔だよ!財前くん!〜前編〜」


 林田が財前に全てを明かした翌日、学校は昨日と同じく朝から喧騒にまみれていたが、話題は「林田のひったくり犯逮捕」ではなく、隣町で起きた「双子の女子高生自殺事件」で持ちきりだった。時計の針がただ二周しただけにも関わらず、既に林田の美談は跡形もなく消え、昨日は目を合わせただけで黄色い声を発していたクラスメイトは、今日は打って変わって事務的な朝の挨拶を交わすだけだった。
「新しい話題が出来ると、みんなすぐそっちに興味を示すんだな」林田の座る席の隣で、財前が呆れたように言う。「残酷だな」
 林田が鼻で笑うだけで、たいした反応を示さないと財前はつまらなそうに舌打ちをして、しばらくすると「あっ」と何かを思い出した表情をした。「姉貴のパンティ・・・」
「馬鹿、お前!ここで話すことじゃないだろ!」自分の鼻息が荒れているのが分かる。財前がわざとらしく「しまった!」という顔した。
「で、持ってきたのか?」席を近づけて、耳元で囁くように言っているが、元々の声が大きい為、あまり意味がない。
「持ってきたよ、ほら」机の横のフックに掛けていた、黒いボストンバッグのファスナーを財前にだけ見ることが出来る位に、小さく開き、中を見せる。
「確かに、これは姉貴のパンツだ」うむ、間違いないと言いながら財前がバッグの中に手を伸ばそうとするのを、防いだ。「なんだよ、返せよ」
「お前は馬鹿なのか?本当に馬鹿なのか?」額に冷や汗とも取れる脂汗が滲む。「ここでパンティを渡したりしてみろ、お前まで変態のレッテルを貼られちまうぞ」
「『お前まで』ってお前もまだ貼られてないだろ」財前はしてやったり顔をしたが、いつのまにか周りのクラスメイトたちが視線をこちらに向けていることに今更気付き、声を小さくした。「確かに、ここはマズいな」
「だろ?」
「マズい、非常にマズい」
「放課後、例の場所で。ということで良いかな?」
 財前が首肯して机を元の位置に戻すと、始業のチャイムに合わせ、担任の岡部が教室のドアを手加減なしに開け、大きな声で朝の事務的な言葉を発した。「みんな、おはよう!」

―――バッグの中身を誰にも悟られてはいけない。
 体育の授業でサッカーをしている時も、掃除時間で便器をモップで磨いている時も、そのことばかりを考えていた為、どれも中途半端な結果になってしまった。
 放課後を告げるチャイムが鳴り、担任の岡部が「では、今日はこれで終わり。解散!」という言葉が聞こえた瞬間に、陸上のスタートダッシュの要領で教室から駆け出した。階段を駆け下りている途中で、部活の顧問でもある担任の岡部に「部活を休む」と報告をするのを怠っていたことに気付き、急遽、踵を返す。急いで教室に戻るが、岡部の姿は既になく、疎らなクラスメイト達だけがそこには残っていた。「職員室まで行かないと悪いのか」面倒だな、と思いながら教室を後にしようとしたが、視界にある男子生徒が映り、自分の幸運に感謝する。
「斉藤、ちょっとこっちに」ちょいちょいと手招きをすると、斉藤は面倒臭そうな表情をしながらも、林田のほうに向かってきた。
「なんだよ、つーか部活は?」あからさまに不機嫌そうな声で言った後、斉藤は肩まである髪を、持て余すように撫でた。時々だが、こういう仕草で斉藤に女性らしい印象を受ける。
「その部活のことなんだが」体調不良で今日は部活を休みたいんだ、と告げると、斉藤は意外にも「やっぱり」と言った。
「だから、今日は体育のサッカーだめだめだったんだな」斉藤が馬鹿にするというよりも、心配そうに笑う。頬が動くことにより、印象的な右目の下にある泣きボクロも動く。
「岡部に言っといてくれるかな?」林田は手を合わせ、懇願した。
「分かったよ、どうせ今日は部活に出るし、いいよ」
「ありがとう!」気の難しい斉藤が、簡単に了承してくれることに若干の違和感を感じながら、教室を後にした。「急がなくては・・・」

「すまん、すまん」
「おせーよ」いつも思うのだが、財前は来るのが早すぎる。一体、どんな手段を使ってここまで来ているのか、気になってはいたが、タイミングが無く、聞けないでいた。
「とりあえず、先に返すよ」バッグからパンティを取り出そうとする。「正直、名残惜しいよ」
 突如、財前がバッグに入る寸前の林田の腕を掴む。「まあ、待て待て」
「なんだよ」
「お前、気付いてないのか?」財前が林田の背後を指差した。
「は?」訳も分からず、口を開いたまま指された場所を見る為に、踵を返す。
 財前が指差す場所。そこには、にやにやと笑う斉藤が立っていた。


―――後編へ続く。


「双子の女子高生自殺事件」の話は、他著の「気分はもう短編集『#11 さよならですのよ』」のことです。良ければ読んでみてください。(林田〜にはまた関係がありません。)

後編に続く。(CV.キートン山田)






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