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悪役令嬢は男前

作者: 風柳 翔

1.ヒロイン


 はい。

 フィリア・ララは私ですが?


 え? 私の話を聞きたい?

 誰かと間違えてません?

 私はただの冒険者。それもようやくDランクに上がったばかりの駆け出しですよ?

 そんな話、聞いても面白くないでしょう?


 ……ちょ、ちょっとそれ、誰から聞いたの!?


 え?

 ………リグってまさか、宰相閣下のこと!?


 なるほど。わかったわ。

 あなたも転生者(・・・)なのね。


 ええ、そうよ。

 私もそう。

 リグラム閣下から聞いてるんでしょう?


 ……そうだけど、一つ忠告。

 どこに耳があるかわからないから、宰相閣下のこと、『リグ』なんて呼ばない方が良いわよ?


 え?

 いつ『転生者』だって気が付いたか?

 そうね。

 5歳の時、高熱を出した後。

 テンプレでしょ?


 でも、ここが『かとスク』の世界だって気が付いたのは魔法の素質ありってことで、『リトス学園』への特別入学が決まった時よ。


 あ、『かとスク』は知ってる?

 正確には『輝け!ときめけ!スクールライフ』っていう乙女ゲームだけど


 あ、知ってるんだ。

 だから今が、ゲームとの状況が違いすぎるんで驚いてるのね、なるほど。


 『かとスク』のヒロインは、特別入学の庶民。

 攻略対象者は5人。


 そう。

 認めたくないけどね。

 つまりそのヒロインが私ってわけ。


 このこと、あんまり言いたくないの。

 黒歴史なんだから。


 ……まあね。

 最初は張り切ってたわよ。

 素敵な王子様とラブラブスクールライフ!ってね。


 でも、入学してすぐ困惑したわ。

 だって、いないんですもの。

 いえ、攻略対象者じゃなくて、ディーが。


 だからディーよ。

 ディリアーナ・ドリス・ラスフォート。

 ラスフォート辺境伯の一人娘。

 いわゆる伯爵令嬢。

 アドバイザーであり、かつライバルの彼女がね、いなかったの。


 え? 知らない?

 あれ、ゲームやってないの?

 あ、やってないんだ。


 なるほど。

 乙女ゲーム好きな友達がいて、その子からざっくりと話を聞いただけなのね。


 あのね、ゲームでは、ディーは第二王子の婚約者だったのよ。


 ディーは第二王子より3つ上だけど、婚約者の入学にあわせて学園に入学するの。

 そう、ヒロインと同じ魔法科に。


 そして第二王子のルート以外ではアドバイザーとしてヒロインの恋を手助けする友人役。

 第二王子ルートにおいてはライバル………というか、いわゆる悪役令嬢の役どころになるわけ。


 ええ、そう。

 第一王子じゃなくて、第二王子。


 現実では、第一王子の婚約者で、学園には入らず、辺境伯の領地にいる、なんてこと、その時は知らなかったの。


 だから、渡された学生名簿を何度も見返しちゃったわ。

 本当にいないってわかって、すごく不安になった。


 だって、第二王子の攻略以外は、ディーがいないとどうにもならなかったから。


 ………そうね。

 ゲームのシナリオを無視して行動すればよかったのだと、今なら思うわ。


 でも、当時は『私はヒロイン!』って思いこんじゃってたから。


 攻略対象者を落とすのは私の義務! みたいな?


 ちょ、ちょっと引かないでよ。

 だから言ったでしょ? 黒歴史だって。


 まあ、そんなわけで。


 私は結局ディーのサポート抜きで学園生活を送ったのだけど。


 ディーがいないと、そもそも第二王子以外との出会いがないのよね~。


 だから必然的に、第二王子ルートに入ってたわ。


 ルートに入った後は、他の攻略対象者とも徐々に知り合うけど、そこで乗り換えるとバッドエンドだからさ。


 まあ、色々想定外もあったけど、最終的には第二王子から好意を寄せられて、長期休業中に、王宮に招待されたの。


 で、そこで王妃様とお会いしたのだけど……。


 メッチャ渋い顔されたのよね~~~。


 今にして思えば、タイミングが悪かったのよ。オッド国の姫君との婚約話が持ち上がってる最中だったから。


 っていうか、第二王子も、だからこそ私を連れてったんでしょうね。

 勝手に決めるなアピール?


 なんにしても、側室として囲うのは認めても良いが、正妃にはできないって、面と向かって断言されたのは結構キツかったわ。

 庶民だし仕方ないんだけどさ。


 で、そのすぐ後よ。

 第二王子に、兄上の結婚式に一緒に行こうって誘われたの。


 その時、初めて知ったの。

 ディーが第一王子と婚約してること。

 第一王子は、ディーの父親であるラスフォート辺境伯に、現地でしごかれているってこと。


 え?

 ゲームに第一王子は出てこなかったのかって?


 出てたわよ。

 バッドエンドの一つで。


 第二王子攻略に失敗すると、ディーの策略で、第一王子と婚約することになるの。


 で、ゲームの第一王子は、なんつーかこう、ちょっと小太りで気弱でオドオド人目を気にするタイプだったの。


 だから、実際に会ってビックリよ。

 小太りどころか、キッチリ鍛え上げられた体育会系爽やかイケメンだったんだもん!


 うん。

 ラスフォート辺境伯の教育のおかげだって、今ならわかるよ。


 魔物退治が日常な辺境で、その筆頭に鍛え上げられたら、太ってる暇とかないよね。


 でもそれ以上にビックリだったのがディーよ、ディー!


 ゲームでは、いかにもな伯爵令嬢で、同じ制服でも何か違うんじゃないかっていうオーラが出るくらいの真正お嬢様だったのに。


 女だてらに軍服着て、兵士たちと一緒に魔物退治に行く伯爵令嬢って何!!


 剣の腕も立つし、魔法も強力。おまけに一軍率いる才覚も充分で、女ながらも辺境伯の正式な跡取りってマジですか!?


 ゲームではいつも綺麗にセットされてた髪は無造作に後ろに縛ったままで、化粧なんて全然してないのにキラキラオーラだけは健在ってどういうこと!!


 そう、男前!

 一言で言えば男前だったのよ!


 で、思わず言っちゃったの。

 本人を目の前にして。

 ウテナ様みたいだって。


 そしたら、ディーはちょっと驚いた顔したんだけど、すぐにニヤッて笑って、

「世代の差か。私ならオスカル様というところだ。絶対運命黙示録の方とはな」

 って答えたの!


 そう、ディーも転生者だったのよ!!


 それから二人で色々話しこんだわ。


 なんかね、前世でディーは、5人兄妹の末っ子で、上4人全員男の子だったんですって。

 だから小さい頃から男の子に混ざって遊んでたし、思考も男の子寄りで、正直女の子が何考えてるのかわからないんだって。


 つまり、前世から性格は『男前』だったってことよね。


 で、辺境伯の一人娘であることを知ると、強くなるため修業を開始したらしいわ。

 魔法の素質もあったから――これはゲーム通りだけど――どんどん強くなったんだって。

 ラスフォート辺境伯が、跡取りとして正式に認めるくらいにね。


 なんかね、ゲームと同じように、最初は第二王子との婚約話が出てたそうよ。


 でも、辺境伯を継ぐ身だからって断ったらしいの。


 ちなみにゲームでは、辺境伯は遠縁の子供を養子にしてたわ。あ、ちなみにこの養子も攻略対象者ね。


 で、何やかんやあって、結局第一王子が婿入りすることになったの。

 ほら、第二王子は正室の子供だけど、第一王子は側室の子供だからね。王妃様的には厄介払い? みたいな?


 ディーはね、ゲームのことは知らなかったわ。


 まあ、そういう性格じゃ、乙女ゲームなんかしないわよね。

 私からゲーム世界だって聞いてびっくりしてた。


 で、その後何故か謝られちゃった。

「すまぬな。どうやら、知らないうちにフラグを全部なぎ倒したらしい」って。


 それから聞かれたの。

 本当に第二王子と一緒になりたいのかって。

 もしそうなら、これも何かの縁だし協力するって言ってくれたんだけど、断ったわ。


 第二王子とも別れて故郷に帰るって答えたの。

 だって、好きな人には自分だけ見てほしいもの。側室なんて、絶対無理。


 そう言ったら

「同感だ。その辺は転生前の感性かもしれぬがしかし、第二王子を好いているのではなかったか?」


 問われた初めて気が付いたのだけど、私べつに、第二王子がものすごく好きだったってわけじゃないのよね。


 ただ、第二王子ルート以外に入れなかったっていうだけで。

 そう答えたら笑われたわ。

「無理やり攻略対象者の中から選ぶ必要はないだろうに」って。


 うん、その通りよね。

 でも、その時まで私、全然そのことに気が付いてなかったの。

 なまじゲームの記憶があったから、それで自分を縛ってただけだったのよね。


 故郷に戻ってどうするのか聞かれたから、冒険者になるって答えたわ。


 ふふ。

 実はね、幼馴染が冒険者してたのよ。

 で、私も学園で魔法をきっちり勉強したし、彼と組んで冒険するのも悪くないかなって。


 そう言ったらディーがね、だったらここ、ラスフォートを拠点にすると良いって言ってくれたの。


 あなたも知っているでしょう?

 ここラスフォートは、魔物が住む土地と隣り合ったまさしく辺境の地。


 辺境伯の第一の任務は、魔物が国内に入らないよう、砦として国を守ること。

 つまりは国境警備よね。


 と同時に、ここは、魔物を狩る冒険者たちでにぎわう街でもある。


 ギルドもしっかりしてるし、今のところ領主とギルドの共同体制も問題ないから、冒険者になるならここに来いって言われて、一も二もなくお願いしたわ。


 ま、そんなわけで。

 私は今、ここで駆け出しの冒険者しているってわけ。


 あ。

 相棒が戻ってきた。

 じゃ、私行くね。


 え?

 もちろんディーとは今でも仲良しよ。

 前世の話が気兼ねなくできる相手って、お互い貴重だしね。


 あ、宰相閣下から、ディーに宛てた招待状も持ってるの?


 だったら行った方が良いわ。

 私の話なんかより、きっとずっともっと面白いはずよ?

 なにせ、自分でも知らないうちにフラグなぎ倒した男前な悪役令嬢なんだから。







2.悪役令嬢


 遅くなって済まない。

 私がディリアーナ・ドリス・ラスフォートだ。


 宰相からの書状は読ませてもらった。

 貴女が第二王子の婚約者筆頭候補か。


 書状には、貴女も転生者で、かつ、ゲームの記憶があるとのことだが?


 『かとスク』を知っているのであれば、確かにこの状況は釈然とせぬよな。

 ゲーム通りであれば、第二王子の婚約者は、私かフィリアなのだから。


 ああ、フィリアにはもう会ったのか。


 そうだな。

 ゲーム通りに行かなかった原因は全て私だろう。全く知らないうちにフラグを全部へし折ったらしい。

 ま、知ったこっちゃないが。


 ん?

 前世の記憶を取り戻した切っ掛け?


 6歳の時だ。

 原因不明の高熱で3日ほど意識不明だったらしい。

 ようやく熱が下がり、意識が戻ると同時に前世の記憶がよみがえった。


 おや、良く知ってるね。

 ああ、フィリアから聞いたのか。

 その通り。

 前世の私はまさに『男勝り』でね。

 それまでは少しお転婆、くらいだったらしいのだが、以後、男子顔負けの腕白になったと母上に嘆かれた。


 しかし父上は逆に喜んだ。

 女伯爵として後を継がせると言いだしてね。

 本気でしごかれたよ。

 6歳の子供相手に何やってるんだか。

 まあ、それに応えてしまった私も大概だが。


 ああ。魔法も使える。

 水魔法と回復魔法だ。

 便利だぞ、遠征先でも水を気にせず身体が洗えるのは。


 うん?

 ああ、婚約話な。


 そう。最初は第二王子との婚約話があったらしい。

 らしいというのは、私の耳に入る前に父上がつぶしてしまった話なのでね。


 王妃としては、母上を取り込みたかったのだろうな。


 あ、知らないか。

 母上は元王女だ。

 現王の妹だよ。

 つまり私は、王子たちの従妹というわけだ。


 知ってると思うが、第一王子は側室、第二王子は正室の子だ。


 一応、第二王子が『王太子』となってはいるものの、王妃は不安だったのだろう。


 王の姪である私を婚約者にして、王位継承を確実なものにしたかったのだろうな。


 しかし、父上がそれを断った。

 その頃にはもう、私を正式に後継者としていたからね。


 で、そのすぐ後に第一王子を婿として迎え入れてほしいと打診があった。


 もともと、第一王子は私の2歳下、第二王子は3歳下でね。年齢的には第一王子の方が近い。


 王妃としては、目障りな第一王子を辺境に押し込めておけるならそれでよし、というところだったのだろう。


 一方、父上は、第一王子が『磨けば育つ』人材であると聞き及んでいた。

 故に、こちらで鍛えればよしと考え、申し出を受けるとともに第一王子を呼び寄せた。


 私が13歳、第一王子が11歳の時だ。


 私と母上に話があったのは、王都へ使いを送った後だ。


 私も母上も唖然としたが、まあ、特に反対する理由もなかったからね。互いに顔を見合わせて、肩をすくめて終わりだ。


 ああ。そういう人なんだよ、父上は。


 だが、本題はその後だった。

 どうやら王妃は、道中、第一王子を亡き者にし、その首謀者を辺境伯とすることを計画していたらしくてね。

 父上はそれに薄々気づいていた。


 で、私に命じた。

 第一王子を途中まで迎えに行き、王子の危機を救えと。


 重ねて言うが、この時私は13歳だ。

 かなりな無茶ぶりだろう?

 しかし、わが後継ぎならそれくらい気概を見せろと言われたよ。


 もちろん、兵はつけてくれた。

 騎兵を30だけな。


 ま、腕は確かだった。

 全員、ブルーズだったしな。

 あ、近衛隊のことだ。青い徽章をつけているのでブルーズと呼ばれている。


 少数精鋭?

 まあ、そうだが……。

 単にそれ以上の人数を割けなかっただけだよ。


 結果的には父上の情報は正しかった。

 我々は暴徒に見せかけた王妃の手の者に襲われている馬車を救出した。


 ………誰から聞いた?

 まあ、確かに言ったな、その時。

「私のものに手を出した代償は高いぞ」と。


 それ以来、妙に第一王子に懐かれた。

 というか、どうやらあこがれの対象とやらになったらしい。

 『もの』扱いされた相手に懐くとかあこがれるとか、変な性格だよ、ホント。



 ………え?

 おい、いつからいたんだよ、バル。


 ああ、紹介しよう。

 これがバル。

 バルフィナード・クリノ・クロワ。

 おっと、今はクロワじゃなくてラスフォートだ。

 そう、第一王子。今は私の夫。


 私みたいなじゃじゃ馬に一目惚れするおかしな奴だよ。


 ま、王都にはいないタイプだろうから、珍しかっただけだろう。


 ああ、もう、そういうのいいから。

 クサいセリフ吐くな、バル。

 気持ち悪い。


 いいからちょっと出てろ。

 まだ話の途中だ。


 え?

 ああ、それは任せるよ。


 わかったわかった。

 終わったら行くから。



 ふう。

 すまないね。

 邪魔はしないように言っておいたんだが。


 え?


 ああ、ゲームとはだいぶ違うらしいな。

 フィリアも驚いてたよ。


 うん、ここに来た時は確かにちょっとぽっちゃり気味だったな。

 でもま、父上にしごかれて、兵士たちに混ざって訓練して、魔物退治に赴いて。

 太ってる暇はないだろう。


 バルは魔法も得意でね。

 『炎』だから魔物退治には有効だ。

 それと、王都で学んでた戦略の知識。

 これもかなり実践に応用できた。


 今ではブルーズの隊長だよ。

 世間一般でいう近衛連隊長ってヤツだ。


 夫として?

 ……そうだな。

 悪くは、ない。


 言っておくが、私にしては最大級の褒め言葉だぞ、これ。



 まあ、そういうわけだから。

 私やフィリアが第二王子とどうこうなるなんてことは絶対ない。


 懸念事項がそれだけなら、安心して嫁がれると良い。


 済まないが、そろそろ時間だ。

 慌ただしくて申し訳ない。


 そうだな。

 結婚式となれば我々も参列することになるだろうから、その時にまた会おう。

 貴重な転生者仲間だ。

 何かあったら遠慮なく言ってくれ。

 宰相によろしくな。







3.腹黒宰相


 お帰りなさいませ、王太子妃殿下。


 ……まだ妃殿下じゃない?

 確かに、まだ正式ではありませんが、確定してますし、よろしいでしょう?

 今から慣れておいてくださいませ。


 それで、いかがでしたか?


 ふふ。

 そうですね。

 ゲームのことなど気になさらない方がよろしいですよ。


 今ではすっかり状況が違っておりますしね。


 え?

 ええ、そうです。

 私も転生者で、かつ攻略対象者の一人です。


 いいえ。

 ゲームのプレイヤーではなく、シナリオライターでした。

 だからゲームのことも裏設定も良く知っていますよ。


 前世の記憶がよみがえって最初に思ったことは、ディーの設定はこちらの方がいい、ということでしたよ。


 男前の辺境伯令嬢というのは面白い。

 創作意欲を掻き立てられます。


 まあ、書いてる暇なんてないですけどね。


 え?

 ああ、ディーから書状ですか。

 拝見させていただきます。


 ……………。

 ふふ。

 いえ、大したことは。

 同じ転生者同士、あなたの力になるように書いてあります。

 ええ、勿論、全力で補佐させていただきますのでご安心を。


 はい。

 では、明日は予定通り、第二王子……王太子殿下の婚約者として、発表させていただきますので、そのおつもりで。


 では、おやすみなさいませ。






 ………。

 ん?

 ああ、お前か。


 影ながらの護衛、ご苦労だった。


 この書状か?


 ふふ。

 お見通しだよ、あの伯爵令嬢は。


 今の王妃がエデス国の姫。

 今度の王太子妃はオッド国の姫。

 共に魔法の素質はない。


 しかし、わが国の軍事力は、魔法の力に依存している部分が多い。

 今までは、優れた魔法師の筆頭が我が王家であった。

 しかし次代の王族に魔法の力を望むのは難しい。


 それゆえに、第一王子を辺境へ送った。

 優れた魔法師である辺境伯令嬢との間に生まれる子供は、魔法の力をしっかりと受け継いでくれるだろう。


 おそらく今後、辺境は魔法師の苗床となる。

 力を磨く者は皆、かの地へ行くことになるかもしれんな。

 何せ、魔物退治という日常業務の中で魔法の力を伸ばすことができるのだから。


 そのうち『リトス学園』の魔法科は、かの地へ移す必要があるかもしれん。


 いや。『リトス学園』の魔法科を廃止するだけでいいか。

 後はディーがやってくれるだろう。


 ああ。

 こちらのそういう思惑をしっかり言いあてたよ、あの御令嬢は。


 そのうえで、こちらの思惑に乗ってやるから、王太子妃を支えろと言ってきた。


 無論、異論はない。

 全力で支えさせていただくさ。


 ま、仮に何かあったとしても、あちらに王家の種は残るのだ。

 最悪の事態だけは避けられる。


 もちろん、そうならないよう、全力は尽くす。私も死にたくはないからね。


 王都も辺境も、共に栄えるに越したことはない。

 転生者同士、内政でやりたいこともほぼ同じ。

 詳しく打ち合わせなくても動向の察しはつく。


 ふふふ。

 今後が楽しみだ。

 先の見えないシナリオというのはいいものだな。


 理解できないか?

 お前に理解してもらわなくても構わんよ。

 少なくとも一人、辺境に理解者がいるからな。



 さて、そろそろ休むか。

 お前も休め。

 明日からまた忙しいぞ?



            <完>

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