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天晴れ晴れやか一寸待ってよ?!
作:水無月五日



これが七話、とうとうばれたわ。


 今日はスペシャルな日。そう、学生の誰もが待ち望んだ土曜日。
 暇すぎて死にそうな土曜の日。こんな日は何処かに出かけたいわね。でも、それは許されないわ。何せ私は今バイト中…いや、お手伝い中なのだから。
 カランコロンと音を立て、戸が開かれる。
「いらっしゃいませー」
「いらっしゃいませでござる!」
 私と楓ちゃん二人に迎え入れられた客は……。
「おう、突っ込み委員長」
「それはもう言わないで!?」
 誰が期待したか、野田太郎登場。いや、マジで期待してないわ。さっさと回れ右、お帰りなさい。
 って、いうか、あれ、バイトの時は同姓同名で押し通せって……今更ながらしまったわ! これは小癪な、孔明、孔明の罠よ!
 土曜や日曜になればそこそこ客足のある『天晴れ』平日は学校行ってるから解らないけど、一応隠れた名店って事らしいわ。本当にその存在は隠さないと駄目だけれどね。
「三葉ぁ、オーダー」
 野田太郎がメニューを掲げ、私を呼ぶ。モロ名指しじゃない!? いつか言った台詞はなんだったのよ!?
 とりあえず無視したかったけれども、無視をしたらしたで何を言い始めるか解ったもんじゃない野田太郎。クレーマーになる前に対処しなければいけないなんて、なんて迷惑な客かしら。
「はい、何でしょう、野田せ……」
「三葉ぁ、お前は今天晴れでバイトしてるだろ、だから言うこと言わなきゃいけないんじゃないのか?」
 トレイに水を乗せオーダーを聞きに行った私に向け、野田太郎は笑顔を向ける。とても殺意の沸く笑顔を。
「なんのことでしょうか?」
 野田太郎は顎で楓ちゃんをさす。
「いらっしゃいませ、殿ッ!」
 新しく来たお客さんの案内をする楓ちゃん。時刻は十一時四十分ぐらい。おそらくランチタイム目当てのサラリーマンでしょう。大変よね、大人は。土曜日とか関係なく働かなきゃいけないなんて。って、そういえば私も働いてるんだった。
「ほらほら、早く」
 ふんぞり返った非常にでかい態度の野田太郎は働く事について考えていた私の思考を中断させ、何かを催促している。
 いや、何が言いたいかは解ってるわよ。でも此処で言ってしまったら私の負けじゃない?
「はーやーくー」
 野田太郎はテーブルに備え付けられてある割り箸を割り、机を叩き始める。あんたはお腹を空かせた子供か。
 これ以上一人の客で戸惑ってるわけにはいかないわ。まだ店の中には野田太郎合わせて四組しか居ないけど、さっきから楓ちゃんばかり動いてる気がするわ。
 あぁ、もう言ってやろじゃないの!
「ご、ご注文はお決まりですか……と、と…殿……」
 うわ、言った、言った! 超恥ずかしい! というか、私男性客相手にこれ言ったの初めてじゃない!? 普段は学校終わって十九時程度までの短いお手伝いだから、あまり接客とかなくて、仕事といえば翌日のクッキーなどの仕込だったから。
「うむ、注文か。まだ決まっておらん、下がってよいぞ」
 時代劇の殿様みたいな態度と喋り方で注文を終える野田太郎。決まってないのに呼ぶんじゃないわよ!?
 野田太郎、あんたはファミレスでウェイトレス呼ぶボタンが押したくて、注文も無いのに押すタイプね! そして押した口実として『ドリンクバーのコーラお願いします』とか言うのね! 流石に一人じゃそんな事しないでしょうが、友達と居たらやるわよね!
 え、説明が生々しい? あはは、私はした事無いけど……まぁ、知識としてはあるわね。そんな馬鹿な事した奴を私は知っているから。ねぇ、神様?
「楓ちゃんとはまた違った味があるな。楓ちゃんはどちらかというと幼馴染とか素直な妹タイプだが、三葉はツンデレ、素直になれないツンデレ妹タイプだな」
 何冷静に研究してるのよ。
 とゆーか、あんなに自己中な野田太郎がこんな所に来るなんてねぇ。ぶっちゃけ此処は従業員の少ない、なんとか喫茶みたいなものよ? まぁ、値段とかは紗江子さんのこだわりで格安なんだけどさ。ちょっとそこら辺は誇れるわね。何だかんだ言って、紗江子さんの料理の腕前は私の知ってる中ではトップだわ。そりゃぁ、知り合いにはテレビに出るようなシェフ居ないから。
 でも、この先紗江子さんが『よし、お客様とのレクリエーションをメニューに入れるわよん』とか言ったら前言撤回し、訴えるわね。
 野田太郎も程なくして注文を決め、私もちらほらと増えてきた客の応対をしながら昼の地獄を乗り切った。途中腹が減って余程気を紛らわしたかった野田太郎が色々と私を弄り倒してきたりとアクシデントはあったけれども。
 お昼時が終わる店はいつものような静けさを取り戻したわ。まぁ、飲食店で静かなのが日常的ってのは駄目だけど。
 紗江子さんはお昼の注文をすべて作り終えると、いそいそとダンボールを抱え、店の外に出て行った。店の中には私と楓ちゃんだけ、と言いたいところだけど、しぶとく野田太郎が居る。さっさと帰れ。
「さて、そろそろ会計でもするか。いくらだ?」
 野田太郎が財布を取り出す。私はメニューを見て計算を始める。
「五百円になります」
 といっても、ランチ一つだから足し算とか全くしなくていいんだけど。
「五百円か……ツケで」
 財布のお札入れに指を突っ込み、そのまま指を出す。とゆーか、何のためにお札入れに指を突っ込んだの? 絶対意味無いわよね!?
「はーい、野田の殿様、おめでとうございます、ツケ…七万円丁度でござるよー」
 楓ちゃんがレジの後ろに掛けてあるホワイトボードを持ってこっちに来た。
「ちょ…ななッ……それ!?」
 ツケは冗談で言った事だろうと思っていたのと、レジの後ろに掛けてあるホワイトボードは確か、今日のランチメニューが書かれていたはずだった事の二つの出来事に驚いて、私は取り乱す。
 ホワイトボードには確かに『野田太郎 ツケ 7,0000円 目指せ、10,0000万円!』と書かれていた。
 と、とりあえず……そのホワイトボード両面に書けるのね。それに目指すな。その目標は明らかに間違ってるわ。ツケは借金のようなもので、貯金ではないわ!
 色々と突っ込みたい事は多いのだけれど、野田太郎は追随を許さないと背中で語っていたわ。

 日曜日。学生は学業から解放される最後の日。そんな日でも私はお手伝いに勤しんでいる。
 稼ぎ時である日曜日に客は皆無。店としてはかなり危ない状況に立たされてないかしら? ま、駐車場もない、道も狭いって店にわざわざ家族連れが来るはずも無いわね。こんな日曜日で外食するんだったら私は断然ファミレスね。
 そう思っていると、タイミングよく扉が開く。
「うわー此処こんな店なんだぁ……少し気になっていたんだけど……なんか変じゃない?」
「そーかしら? 和風でいいと思うけどー?」
『いらっしゃいませ、姫、姫、殿ッ!』
 忍者のように楓ちゃんはすぐさま客の下へと走る。姫二回、殿一回って事は三人か。お冷を準備して、楓ちゃんが席に案内するからすぐさま水を持っていくっと。
「お冷になり……」
 水の入ったグラスを客席に持っていったとき、自分でも表情を変えたのがはっきりと分かった。
「い、いらっしゃいませ……殿に姫……」
「お、葵じゃんー。やっほー」
「三葉さんだー」
「おう。ツッコミ委員」
 アルバイト先で一番会いたくなかった人と会ってしまった。コレがコンビニのバイトとかならまだマシなんだけど、働いてるところがアレだから……。
 小田茉莉と馬田枝瑚、そして野田太郎。なに、何なのこの組み合わせは!?
「ひ、人違いじゃないでしょうか、私はジョナサン・B・ジュニアですよ?」
「いや、ドンだけ酷い言い訳よ?」
 小田茉莉が手の平を私の胸にめがけ放つ。
 うぐ、効いたわ……。
「えぇ、私はお察しのとおり、三葉葵よ、何か文句ある!?」
「どんだけ尊大なんだ、ジョナサンーーーッ!」
 とりあえず三人の注文を聞いて、注文を運び終わる。
「な、確かに面白いものが見れただろ?」
「そうですねぇー先生についてきてよかったです」
 野田太郎の言い方から予想するに……こいつが二人を連れてきたっての!?
 ホント余計なことしかしない人よね!?
 お昼ごはんを食べに来た野田太郎と、デザートを食べに来た二人。
 お客も来ないので、私は小田と馬田さんと話す。
「いやー、私んち此処だからわりかし手伝ってるのよ」
「というか、先生にバイトばれて大丈夫?」
 ちらりと野田太郎を盗み見ると、私達の会話を聞いていた野田太郎が口を開く。
「あー、俺は別にバイトをすることについてはとやかく言う気はさらさら無い。とゆーか、星稜の教師らで此処に来る奴はおらんだろ。もし、来る奴がいたら俺に報告しろ」
 自分の事は棚に上げてそういう事言うの!?
「あら、楽しそうじゃない葵ちゃん」
「あ、紗江子さん」
 暇を持て余していた紗江子さんがこちらの輪の中に入ってくる。
「皆かわいいわねぇー。どう、どう? 家で働かない?」
 止めなさい、紗江子さん。今この状態で店員増やしたら人件費の無駄になるでしょう! 充分三人でもやっていけているというのに!
 結局夕方ぐらいまで二人は店に居て、遊びに来たようなものだった。野田太郎は騒動を巻き起こすだけ巻き起こして早々に立ち去っていった。やれやれだわ。


久しぶりに手をつけました。
そろそろスピードあげて頑張りたいと思います。













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