涙
文章表現に不安があります。
そのため、ご意見、ご感想があると嬉しいです。
それでも楽しんでいただけたら幸いです。
倒れた竜にサイゾウの刃が迫る。
すかさず竜は転がり移動する。
しかし刃が竜がいなくなった場所に接触する寸前、竜の小太刀とぶつかりあった時の現象が起きた。
地面と刃との間で爆発が起きた。
転がる竜は衝撃を受けて、さらに急激な速度で地面を転がっていく。そして、建物の壁に体を打ち付けて止まった。
「チッ。仕損じたか。だが、その傷では、お前の最大戦力の高速移動は無理だな」
サイゾウの指摘は正しい。竜の太ももにはさっきサイゾウが投擲したダガーが深々と刺さっていたのだ。
「さてと、ジワジワとなぶり殺しといこうか!」
「く!」
前回りで回避。
「あめえんだよ!」
振り返った時にはサイゾウの刃が振り下ろされていた。
小太刀で受ける。
しかし
「ぐぁ」
受け止める寸前で衝撃が発生。竜を再び吹き飛ばした。
背中を地面に打ち付ける。
(呼吸が、できない)
受けた衝撃の影響か思うようにできない。でも急がないと追撃がくる。
渾身の力を込めてバックステップ。
太股に痛みが走る。
痛みをこらえ、距離をとることに成功した。
「う・・ぐぐぐっ。ぐわぁ!!」
一気に太股に刺さっていたダガーを引き抜いた。
そのために出血が酷くなる。
(出血多量で駄目になりそうだな)
「しぶといよな。お前」
「しぶといのが、長所なんですよ」
「だけどよ。もう流石に〝限界〟だろう」
事実そうなのである。足をやられ、得意の駿足ができない。しかも太股から出血を続いているために出血多量になる危険性だってある。
「諦めて錆になれよ」
「く」
再び刃がぶつかる。
しかし、今度は吹き飛ばされることはなく小太刀で受けとめることができた。
「どうした!どうした!もう力尽きるのかぁ!!」
足に力が入らず、太股からは出血が続く。
膝が曲がり、崩れていく。
サイゾウが押し潰すように力押しで押し込んできた。
(限界だ)
地面に膝をつき覚悟した。
その時、竜は手に何かが当たる感触を感じた。
感じたところを見る。そこには、透明な水滴がついていた。
竜は最初、汗かと思った。
だが、新たな水滴が目の前で落ちた。
サイゾウの汗かと思った。
だが、サイゾウは汗を掻いていない。
「おい!なんだこりゃ!?」
困惑の表情をしていた。
竜は見た。この水滴が落ちてきた原因を。
それは刀であった。サイゾウの持っている竜が持つはずであった刀から、にじみ出るようにして刀身から出てきている。
(刀から、水が)
それはまるで、涙。本当の主人を否応なく斬らなければならないという刀の気持ちの表れのようだ。
刀から出る水は止まらない。むしろ増えてきている。
さらに、その水滴は、どんどん増していき、ついには水道の蛇口から出るような勢いで出てきた。
鍔迫り合いをして崩れている竜はその水をまともに受けた。
「わっぷ!?」
『竜よ』
「師匠」
『いいか。よく聞きなさない』
「え」
竜は竜乃心の話しを聞いた。
サイゾウ視点。
俺は鍔迫り合いをしてこれで殺せる。そう思った。俺は勝利を確信していた。
しかし。ここで信じられない現象が起きやがった。
俺が振るっていた刀の刀身から水が出てきたのだ。
俺が指示することなく。勝手に。
混乱した。訳がわからねえ。
その水が野郎に掛かりやがった。
そこまでは見ていた。だが、次の瞬間。俺の視界が一回転しやがった。前へと重心が掛かり、そしてさっきまで強い力で握っていた刀の柄がスルッと綺麗に離れていきやがった。
俺は初めて自分が投げられたと解った。
俺は起き上がって周囲を見た。
今だに戦っているばかな兄弟とその護衛達。
だが、そんな中にいやがった。
俺を見据えて。
俺がさっきまで持っていた刀をしっかりと握り、出血が止まり、傷がふさがり、平然と立ってやがった。
「決着を着けましょう」
そう言って切っ先を俺にむけてきた。