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闇夜の決闘

暫く竜達の追跡は続いてはいたがすぐに終わりを向かえた。


突然サイゾウ達に動きがあったからだ。

護衛の人達が先陣をきるかのように走り出し。その後を頭巾の男とサイゾウがゆっくりと歩く。


「うわぁーーーー!!」

その数秒後に男の叫び声が挙がった。


「動いた!追うぞ!」

ヤススケは駆け出した。

竜達も後に続く。

現場に赴くと囲まれ、これから斬られるであろう男の姿があった。その表情は青白く、生気が感じられない。それほど男に恐怖が全身を支配しているのだろう。


「兄上!!これ以上の狼藉はお止めください!!」

ヤススケの懇願する声。

「ヤススケ。おのれ」

それとは別に頭巾の下から怒りの交じった声が出てきた。

あれがヤススケさんの兄、ミツスケか。


「兄上。大人しくお縄についてください」

「やかましい!!弟の分際で、兄に逆らうか!!」

「兄や弟という問題ではありません!民の上に立つ者としてあなたは何をやろうとしているのですか」

そう言って怯える男を指差す。

「街に蔓延るゴミを始末している。これは政だ」

「何が政ですか!!兄上のやっていることは、ただの人殺しです!!」


「おい!おい!随分と面白い展開になってきたなあ」

割り込むようにして喋りだす者がいた。

サイゾウ・ゲンタだ。

「こんなの俺〝達〟から見れば、時代劇のクライマックス一歩手前だよな・・・」

言葉を切り、竜に視線を向ける。


「そう思わないか?日陰・竜」

「・・・・・・」

「だんまりは寂しいじゃねえか。そうか。そうか。口じゃなく。こいつで語れってことか」

腰に差していた剣をサイゾウは抜いた。

剣の種類はバスタード。叩ききることを前提にした得物。戦法は剛の剣と言う言葉が似合うだろう。

竜は「くるか」と思い身構えた。

「でも待ってろ。こいつは手に入れたばかりでどれくらいの性能なの知らないんだ」

しかし。違った。だが、サイゾウの思惑はすぐに察せれた。


サイゾウが視線を恐怖している男に向ける。

「試し切りしてから相手してやるよ」

大きく振りかぶり

「うわぁーーーー!!」

振り下ろした。


金属音が男の叫び声を下記消した。


「へえ」

「ふざけたことを言ってないでください」

小太刀を抜き、サイゾウのバスタードの刃を止めた竜。


「すげえじゃねえか!!」

サイゾウは叫ぶと同時に後方に跳躍、地面に足がつくと同時に再び地を蹴り、斬りかかった。

竜も地を蹴った。

両者が交差する。金属音が鳴った。


「こりゃ驚いた」

サイゾウが声をあげた。サイゾウの剣が根元から先がなくなっていたのだ。

消えた先は空中を回転し、地面に刺さる。


「まだ、使ってないし、刃こぼれすら起こしていないのに、どんな小太刀だよ。それ」

竜の持つ小太刀を示す。

「まあいい。そっちがその気ならよ」

言って、一振りの鍔も装飾のない日本刀を抜いた。

刀身は月の光に反射して輝く。

そう様子に見惚れる竜。しかし。サイゾウの言った言葉に顔が歪む。


「自分の刀に殺される気分はどうだ」

それに気づかない竜ではない。

サイゾウが手に持つ刀。それは、刀鐵が竜のために打った日本刀だった。


「こいつも不幸だよな。最初の試し切りの相手がご主人様なんてよ!」

サイゾウが振った。

それを受け止める竜。

その瞬間。見えない力に押され竜は吹き飛ばされた。

「なぁ!?」

「ほお。こいつはすげえな。お前みてえな奴には勿体無い代物じゃねえか」

刀を見るサイゾウ。


「参ったのう。竜。どうやら。まずい相手とかち合ってしまったのう」

竜之心からも珍しく声に焦りと緊張が入り交じっている。


確かにまずいなあ。


どうやら僕の歒は、彼だけじゃないみたいだ。


師の魂の宿る小太刀を構えなおし、見据える。


サイゾウが再び攻めてくる。

竜は小太刀を前に出す形で構える。

小太刀は、防御に適した武器だ。しかし、それ以上に普通の刀と違って返しやすく、通常よりも早く攻撃を加えることができる。


今回竜は防御に徹していた。

しかし

「がぁ!?」

防御など無意味だ。とでも言うかのように刃と刃が衝突した瞬間に爆発が起きたかのように竜だけ吹き飛ばされていた。

再び地面を転がる竜。すぐさま起き上がり、態勢を立て直す。


(これが、あの刀の力なのか)

竜はそう推察していた。


「こいつの力はすげえな。触れさせることもさせねえなんてよ。これじゃあ。人一人殺すこともできねえよ」

サイゾウも同じ推察をしていたらしく。そんな事を呟いている。

「お前は、何も感じないのか」

「何がだ」

「そんな簡単に人を殺すなんて言えて何も感じないのか」

「何言ってるんだ。お前。これまで散々人の命を奪っておいてよ」

サイゾウの言葉が竜の胸に刺さる。


「今更綺麗事を言うのかよ」

「言わないさ。けど、僕には領分がある」

「ち。胸糞の悪いことをほざくな!」

刃が再び迫る。

竜は鍛え上げてきた脚力を利用した高速移動を出した。

「見えてんだよ!!」

しかし。ここでサイゾウが何かを投擲した。


「!!」

両太股に激痛が走った。

後ろに崩れるようにして竜は倒れた。

竜が太股を見る。そこにはサバイバルナイフに似たダガーが二本。太股に一本ずつ刺さっていた。

「これで話に聞いていた移動も無理だな」

「っ」

彼の言うとおりだ。

事実。足は使えない。


ゆっくりと歩み寄ってくるサイゾウ。

手には竜が手にするはずであった刀。


「いい加減に錆にならんか」


無慈悲にサイゾウは刀を振り下ろした。

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