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ごみ箱
作:結城菜緒


 私は、今日もごみ箱にごみを捨てる

 どの家にだってあるはず。その名のものは。


 毎日毎日、いやな顔せずにせっせと仕事をするんだ。

 温かさだって備えてる。ごみ箱機能のついていない冷たい機械のなかじゃ、削除したら跡形もなく消えてしまうもの。

 本当のごみ箱は、少し違うんだ。気づかずに私が捨ててしまった大切なものを、何も言わずに少しの間大事に持っていてくれる。気づいた私があせって探しだすと、何も言わずにスッと差し出してくれる。


 誰にもほめてもらえないけど、それが私なのかもって思って今日も働く。誰かにほめてもらうことを望んでいるわけじゃなく、感謝の気持ちはもっていて欲しいなと思ってる、少し変わったあなた。

 誰よりも朝早く起きて、みんなが快適に一日をすごせるようにはりきってる。一番疲れているのは、あなただと自分でよく知っているのに。がんばり屋のあなた。

 居てくれるのがあたりまえって思われてる。そこに居るものとばかりみんな思っているから、少し移動しただけで投げたごみが散らばってすぐに家の中は汚くなるし、そこにいてくれないと変な感じがするんだ。

 汚い役を自ら引き受けて毎日を過ごしてる。誰もがいやがる残り物をかたづけるのもあなただし、それをいやがろうともしないであたりまえのようにやっている。きっと本当は、ごみよりも新品のクリームパンのが食べたいって、知ってるんだ。それでもごみを食べ続けてる。

 汚いごみをぶつけてばかりいた。自分のことしか考えていなかったんだよ。家の誰もが。あなたにばかり矛先が向けられて。つらかったよね。傷つけちゃったよね。

 いつだって笑顔を忘れないんだ。大きな口をあけて、みんなを待ってる。どんなものも受けとめる心の強さと広さがあるんだ。


 あなたは、それの中の鏡だと思う。

 本当にそう思う。


 今さら、面と向かっては言えないよ。だから、ここに書き記すね。


 ありがとう
 今までごめんなさい
 本当にありがとう


 ごみ箱、本当にいらないものを入れる箱。
 でもなんだか、そのがんばりのせいで、少し大切な物までいれたくなる不思議な箱。
 私は、今日もごみ箱にごみを入れる。
 ありがとうの気持ちを静かに込めて。

 あなたが家にいてくれて、私は幸せ者です。



どうだったでしょうか?評価、感想、指摘、なんでも待ってます。











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