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ネクストライフ 作者:相野仁

五章「婚活戦争?(後)」

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間話「一方その頃」

「魔王ザガンが死んだ」

 この情報を掴んだ魔人ゲーリックは頭が真っ白になった。
 封印されているとは言え魔王である。
 そんな簡単に滅ぼされるのでは封印などされるはずがない。
 しかし魔王ザガンは一向に復活しないし、封印地に向かったルパートやセンドリックとは連絡が取れない。
 最悪の事態を想定するべきだと勘が告げている。

「マリウスか……?」

 魔王を滅ぼせる人間など他にいない。
 魔演祭を見た限り、バーラやヘムルートといった連中では無理だ。
 自分達はとんでもない怪物の存在を見落としていたのではないだろうか。
 この情報をどうすればいいのだろう。

(行ってみるか……いや、危険だな)

 ゲーリックが人間ならば、マリウスを封印地で待ち伏せさせる。
 魔王の復活を企む魔人がやって来るのだから。
 マリウスを倒す自信など、ゲーリックは持ち合わせていない。
 ルーベンスに報告し、判断を仰ごう。
 そう決めると早速連絡を取る。
 ゲーリックのスキル「トランスフォーム」は変身した相手が使える魔法やスキルも全て使える、非常に便利なものだ。
 今の姿だと相手と思念会話を可能にする「テレパス」が使える。

<ルーベンス様、ゲーリックです>

<ゲーリック? どうした?>

 脳内に響く、穏やかながらも存在感がある声に安堵を覚えながら、ゲーリックは報告を行う。

<そうか。一度来い、場所は……>

 ルーベンスは慌てず騒がず落ち着いていた。
 内心はどうあれ、さすがは魔人組織の首領と思える。






 ゲーリックが指定された場所に行くとルーベンスともう一匹、ブラックアウルがいた。
 ブラックアウルは光に包まれ、人型へと変異する。
 かつてゲーリックも通過した、魔人化の瞬間であった。

「ちょうどいい時にきた。私が新しく見つけた仲間、ラームだ」

「ラームだッ! よろしくなッ! 先輩ッ!」

 無駄に明るく声が大きい奴だとゲーリックは感じた。

「早速だがラームよ。お前にはゲーリックが持ってきた情報の真偽を確かめてきてもらいたい。ザガン様の封印地がどうなっているのか、空から調べて来るのだ」

「お任せあれッ! このラームがッ! 華麗にッ! 堅実にッ! 見事にッ!調べてきますともッ!」

 ラームはモンスター形態に戻って羽ばたいていった。

「……何もあんな奴を使わなくても」

 呆れの成分が大量に混ざったゲーリックの言葉に、ルーベンスはため息を返した。

「仕方あるまい。非常事態だ。ザムエルは始末され、ゾフィ、ルパート、センドリックは戻ってこん。これ以上、現有戦力を損なうわけにはいかん」

 つまりラームは捨て駒にする為に選ばれたのだ。
 ルーベンスの心配もゲーリックは分かる気がする。
 最大で十二人いたのが八人にまで減ってしまった。
 単純に数字を見れば三分の一の損失である。
 全員が下級魔人なので戦力的にはそこまでの打撃ではないが、それでも危機感を覚えるのは当然だとゲーリックは思う。
 もっとも、他に危機感を覚えそうなのがルーベンスくらいだというのが、目下の悩みどころだった。

「奴にも“テレパシー”は教えておいた。余程のドジを踏まぬ限り、連絡くらいは出来よう」

 ルーベンスの言葉にはラームへの期待というものが一切感じられなかった。
 魔王消滅の報が事実かどうか、確認出来さえすればよいという考えなのだろう。
 ゲーリックは非情だとは思わなかった。
 この時期で都合よく魔人になる者を発見出来たとは考えにくい。
 魔人化する為にルーベンスが手助けをした、という可能性の方が圧倒的に高いのだ。
 見方を変えれば魔人の助けがなければ魔人になれない程度の輩、となる。
 そんな存在は失っても惜しくはない。
 見込みがある者は皆、自力で魔人化するのだから。
 ゲーリックも、数多な冒険者やモンスターを糧として魔人となったのだ。

「ザガン様消滅が事実であれば如何いたしましょうか」

「慌てるな」

 ルーベンスは目と声で逸るゲーリックを落ち着かせようと試みた。

「事実であれば我らの手には負えん。つまり方針を転換せねばならん」

 ルーベンスはどこまでも落ち着いていた。
 遥か天上の存在である魔王が死ぬ、という事態なのにさすが古参の魔人だとゲーリックは感心させられる。
 そんなゲーリックの心理を見透かしたかのようにルーベンスは言った。

「私は千年以上生きる魔人。魔王様が滅ぶのも見た事があるのだよ」

 古参の凄みというやつだろうか。
 ゲーリックはそんな事を考え、ルーベンスを頼もしく思った。

 

 

 

 ゲーリックが持ち場に戻った後、ルーベンスは深くため息をついた。
 実のところそこまで落ち着いているわけではない。
 彼が優れていたのは落ち着いているように見せ、周囲を落ち着かせるという手段に関してだった。
 頭の中は混乱状態で、結論を出す時間を稼ぐ為に慌てる必要がない、といった態度を取っただけである。
 魔王ザガンを滅ぼせる存在というのは非常に脅威だ。
 魔王と言えども長年封印されると弱体化する、というのは割と有名な事実なのだが、だからと言って完全に滅ぼすのは難しい。
 でなければ人類は弱体化するまで待ってから滅ぼそうと試みるだろう。
 過去にそんな例がないのは、魔王を滅ぼすには勇者並みの強さがいるからだし、魔王が弱体化するには百年単位の年月が必要だ。
 封印してから数百年後、ちょうど魔王を滅ぼせる実力者がいるとは限らない。
 人間達は気づいていないが、時折魔人が人類を攻撃するのは、潜在能力が高い者が実力をつける前に叩くという理由もある。
 ルーベンス傘下の魔人達も、ほとんどは知らないだろう。
 「敵を騙すにはまず味方から」という人間達がやる方法を、ルーベンスは自分なりに実行しているのだった。
 もっとも他の大陸でも同じく古参の魔人が、同じような事をやっているのだろう。
 強大な魔王を封印する勇者や英雄が過去に何人も誕生しているのに、モンスターが駆逐されてしまわない本当の理由だとルーベンスは思っている。
 彼らは個体数が少ない為、数体の魔王とその配下の魔人を倒したところで限界が来てしまうのだ。
 もし彼らが魔人の数だけ存在していれば、とっくにモンスターは滅ぼされているだろう。
 では何故もっと大規模な攻撃を加えないのかと言うと、苦い前例があるのだ。
 その昔、大規模な攻撃で人類を滅亡寸前に追いやった時、メリンダ・ギルフォードという不世出の怪物が生まれたのだ。
 彼女は何体もの魔王を滅ぼし、最強の魔王アウラニースを封じ、魔法という学問やマジックアイテムという道具を創出した。

「あんな化け物、二度と生むな……」

 ルーベンスを可愛がってくれた最古参魔人の末期の言葉である。
 アウラニースを筆頭に多数の魔王と魔人がいたのに、たった一人しか戻って来なかった。
 あれを繰り返してはならない、と思うが問題は多い。
 強気な姿勢を見せねば人間が言う「カリスマ性」は維持出来ないのだ。 
 魔人の多くが同胞達を人間に殺されていて、強い恨みがある。
 ドラゴン、グリフォンと言った高位モンスターは例外だが。
 その辺も配慮してやらねばならなかった。

(気になると言えばマリウスだ。何故この時期に現れた?)

 確かに人類国家の戦力をじわじわと削いでいるが、目に見えた成果が出るのは当分先の事だ。
 前触れもなく唐突に現れ、それも過去が不明ときた。
 何者かが介入したと考えざるを得ない。
 その者の正体と目的を何とか突き止めたい、とルーベンスは思った。
 そうすればメリンダ級の化け物を戦わずに排除出来るかもしれないのだ。
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