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ネクストライフ 作者:相野仁

三章「魔の足音」

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八話「第三競技(前)」

『魔法使い達の祭典も残すは一競技、今回もランレオが制するのか? はたまた他国が阻止するのか? 運命の鍵を握る最終競技は“シューティング・ロワイヤル”です!』 

「おお、待ってました!」

「あれ? でも普通にやっても盛り上がらなくない?」

 観客の何人かが疑問の声を上げる。

『はいはい、せっかちさん。今からルールを説明しますよ』 

 観客から笑い声が起こり、静まると競技内容とルールが説明される。 
 選手は特殊なパッドを着用する。
 そして魔力弾を生成して、パッドに当てる。
 一度当てると一ポイント獲得となり、被弾した人間に衝撃が与えられる。
 ダウンすると更に一ポイント加点される。
 パッド以外に当てると逆に一ポイントマイナス、ダウンさせると更に一ポイントマイナスになる。

『選手の皆さん、ここまでで質問はありますか?』

 マリウスが手を挙げて質問する。

「魔力弾を魔力弾で防ぐのはありですか?」

『ありです。と言うか、魔力弾以外で防ぐのは反則です。そして大切なのは、魔法を使うとその場で失格、最下位となります』

『魔力量、判断力、命中精度……魔法使いに必要な様々な能力が試されるね』

 更にダウンしている者への攻撃も反則、ダウンした状態で攻撃するのも反則。

『減点対象になりますのでご注意下さい』

 ダウン状態が十秒以上経過すると、二秒ごとに一点加算される。
 ここまで説明された時、ミレーユが手を挙げた。

「ダウンした時、複数の攻撃を受けていた場合はどうなるのですか?」

『その場合は両者にダウンポイントが入ります』

 説明は続く。
 二十人を五人四組に分けて予選を行い、最もポイントを獲得した者が決勝に進出する。
 予選敗退者にはそれぞれ三ポイント、決勝進出した者には一位から順に二十五ポイント、二十ポイント、十五ポイント、十ポイントが与えられる。
 予選と決勝で得たポイントは全て個人成績に加算される。 
 予選の試合時間は三分、決勝の試合時間は五分である。

「待てえ! 異議ありだ!」

 ランレオ関係者の一人が叫ぶ。

「諸国の交流と最後まで大会を盛り上げようとするボルトナー王国のやり方にケチをつける気は毛頭ないが、これまで上位だった意味が薄れるルールは感心しない! 改定を求める!」

 観客達からもざわめきが起こり、「真剣勝負的には変だよな」「でも祭的にはありだろ」と議論が交わされ始める。
 ヘンリー四世は臣下の発言に眉をひそめはしたが、表立って反論はしなかった。
 ベルンハルト三世なども角を立たない言い回しを考えようと頭を動かしている。
 白けた空気が漂い始めた中、バーラがため息をついて反駁した。

「みっともない真似は止めてちょうだい、ゼフロム。まるで私達が第三競技で勝てないから見苦しく言いがかりをつけてるみたいだわ」

 バーラの綺麗な声はよく通り、隠し切れぬ怒りと軽蔑がゼフロムを怯ませた。

「ひ、姫様……しかしですね」

「私とフィリップが最後まで観客を魅了しつつ勝てばいいじゃないの。それこそがランレオの誇りというものでしょう」

 バーラはゼフロムに再反論を許さず言い募る。

「それとも私達の力がそんなに信じられない?」

「め、滅相もありません」

「じゃあルールは変えなくていいわね?」

 ゼフロムはがっくりと肩を落とした。
 バーラが「お騒がせしました」と一礼すると、実況は再開された。

『コホン……戦い方次第では上位選手を出し抜く事も、一発逆転も充分ありえます』

『バトルロワイヤルだからね。一対一で戦う必要ないしね』

『しかしながら実力がないと逆転が難しい、という公正さも持ち合わせているのです』

『特に今回は予想するのが難しいね』

 予選第一組はルーカス、ヘムルート、ステイシー、マーク、アレスの五人。

『おおっと、ルーカス選手とヘムルート選手がいきなり当たりました!』

『上位四人が別組になるんだろうけど……今回はヘムルート選手、ウォーレン選手、そしてマリウス選手っていう有力どころが五位以下にいるからね』

『これは予選から激闘の予感です! 選手は大変でしょうが、見る方としてはワクワクが止まりません!』

 ワイスが叫ぶと会場から大きな拍手が沸き起こった。

『マリウス選手と同組になったらご愁傷様だけどね』 

 フェリックスのおどけた発言に笑い声がところどころで起こった。

『では早速第一組、試合を開始しましょう』 

 ルーカス、ヘムルート、ステイシー、マーク、アレスを残して他の選手は壁際まで下がる。 
 パットは胸、両肩、両肘、両膝の七ヶ所だ。

『それでは第一組始め!』

 ワイスの号令と共に各々が魔力弾を作り出す。
 ルーカスとヘムルートが八、ステイシーが六、マーク、アレスが五と強い者ほど多く作り出していた。
 ヘムルートとステイシーは三つずつ、マークとアレスは全てルーカスを目がけて放った。
 ルーカスは更に魔力弾を作って迎撃したが間に合わず、五発受ける。

「くっ」

 体に衝撃が走り、ルーカスは軽く呻いて後ずさりした。

『おおっと、ルーカス選手に集中砲火! これが上位者の宿命だ!』

『まあ四対一になるのは必然だよね。ただ、それほど単純でもないけどね』 

 フェリックスの指摘通り、ステイシーはヘムルートも狙い、自分が狙われる事を予測していたヘムルートは相殺に成功した。

『ステイシー選手、ヘムルート選手も狙いましたが失敗! どうやら読まれていたようです!』

『ヘムルート選手だって五位なんだから、狙われるのは当然だよね』

 のっけから白熱した戦いに会場内は大いに盛り上がった。

「ルーカス! ルーカス! ルーカス!」

「ヘムルートさ~ん!」

「ステイシーちゃーん!」

 観衆から大きな声援が乱れ飛ぶ。

『ルーカス選手、ヘムルート選手、前回上位者だけあって観客人気もありますね。期待に応えられるでしょうか?』

『美人なステイシーちゃん……ゴホン、ステイシー選手も人気あるね』

 戦いは続く。
 ヘムルートは断続的に魔力弾を作成しつつ他の選手を牽制し、隙を見せたところをすかさず攻撃していた。
 一方のルーカスも似たような戦法を行っているものの、明らかに苦戦している。
 ルーカスが一度に作れる魔力弾の限度は十で、同数までは相殺出来てもそれ以上が同時に飛んでくると対処しきれずに被弾してしまうのだ。
 一度に十作れるが隙も多いルーカスと、一度には八が限界でも間髪入れずに作り続ける事が出来るヘムルートの差が出ていた。

『ああ、ルーカス選手がとうとうダウン! ここまで集中的に狙われると、いくら実力者でもたまらない! しかし何故ここまでルーカス選手が狙われるのでしょうね、フェリックスさん?』

『他の選手も狙うからポイントが稼ぎやすいというのが一つ。ヘムルート選手は魔力弾の小出しが上手くて狙いにくいというのが一つ。更にはマリウス選手の事が頭にあるんだろうね』

『マリウス選手よりはルーカス選手の方が止めやすいと?』

『そうだね。それに組み合わせとポイントの稼ぎ方次第では国別成績での逆転もありえない話ではないからね』

 弱い方、叩ける方を叩くのは基本なのだ。
 ルーカスがダウンした事で、集中攻撃の矛先がヘムルートへと向かった。
 しかし、ヘムルートが先に飛来した魔力弾五発を相殺したところで試合終了となってしまった。

『結果を発表します! 一位はヘムルート選手、三十四ポイント、二位はステイシー選手三十三ポイント、三位はマーク選手とアレス選手、三十ポイント、最下位はルーカス選手、十八ポイントです。ヘムルート選手が決勝進出、優勝候補ルーカス選手は予選敗退となりました』

『さすがにルーカス選手が最下位なのは予想外だったね。それにしても見応えのある熱戦だったね』

「ル、ルーカスさんが最下位だと……?」

「ヘムルートさんが一位通過なのは不思議じゃないけど……」

 観客にとっても衝撃的な結果で、大きくざわめいていた。

『そうですね。一方でヘムルート選手が優勝候補の意地を見せてくれました』

『実力者が増えて大会のレベルが上がっただけで、別にヘムルート選手が弱くなったわけではなかったという事だね』

『はい。さあ第二試合と参りましょう』

 第二試合の組み合わせはフィリップ、ウォーレン、カタリナ、ポール、グレゴールとなった。
 再びどよめきが起こる。

『フィリップ選手とウォーレン選手の激突となります』

『第一試合の例があるし、両者とも油断出来ないよね』

 フィリップもウォーレンも緊張を表情に出している。

『それでは第二試合、始め!』

 やはり今度も成績上位者であるフィリップに魔力弾が集中する。
 そしてそれを防ぎ切れずに被弾するのも同じだ。

『体をずらして生身で受ければ点を取られないどころか、相手が減点となりますよね、フェリックスさん』

『並みの魔法使いならともかく、ウォーレン選手やカタリナ選手のような実力者の魔力弾をまともに受けたら怪我するよ。最悪、骨折は覚悟しないとね』

『ああ! 魔力弾以外での防御禁止! 魔法を使ったら反則負けのルールですね!』

『そう、生身で受けるしかないんだよね』

 もちろん相手を怪我させて戦闘力を奪えば有利になるが、それは他の敵も同じ事だし、自分以外の相手全てを怪我させるのも困難だ。
 バトルロワイヤル形式なのだから。
 それでも実力者ならば何とか出来るのかもしれないが、ポイント加算ルールのせいで実力者ほど集中攻撃を受けやすくなっている。

『つまりよほどの実力がないと、かえって上位者が不利になるって事じゃないですか?』

『そうだね。ただ、組み合わせ次第で思惑も変わるしね』 

 フェリックスの言う通り、フィリップだけでなくウォーレンも狙われる。
 カタリナなど、むしろウォーレンの方を狙っている節さえあった。
 集中砲火が外れた時を見計らって反撃に出るが、逆に攻撃を食らってポイントを稼がれる。
 それがフィリップとウォ-レンのパターンだった。

『それまで!』

 第二競技が終了し、観客席が大きくざわめき出す。
 正確なポイントは把握出来ていないが、フィリップとウォーレンが苦戦していたのは誰の目にも明らかだった。

『一位はカタリナ選手、二十四ポイント! 二位はウォーレン選手、十九ポイント、三位ポール選手、フィリップ選手、十八ポイント、最下位グレゴール選手十三ポイント! 何と、フィリップ選手とウォーレン選手、共に敗退!』

『いやはや、とんでもない展開になってきたね』

「あ、ありえねー」

「冗談だろ……? 優勝候補達がどんどん敗退なんて」

「んな馬鹿な……」

 またしてもな展開に観客達も動揺を隠せなかった。

『観客席のざわめきが納まらないのも無理ないですよね、フェリックスさん』

『そうだね。失礼ながらカタリナ選手の勝ち上がりはちょっと想定してなかったね』

『ポイント計算がややこしい事になりそうです』

『主催者的には嬉しい誤算でウハウハだろうね』

 残りの有力選手はバーラ、ミレーユ、マリウス、そしてアガシュ。
 当たらないのは四位以内に入っているバーラとミレーユくらいで、今後の試合でも熾烈な潰しあいが予想出来る。

(フィリップが脱落して、ちょっとは楽になったな)

 マリウスはそんな事を考えていた。
 シューティングロワイヤルはマリウスの想像よりも複雑だった。
 思い返せば優勝のゆの字も言われていないのだが、どうせなら勝ちたいという思いはある。

(とりあえず、パッドを壊して怪我させないようにしないとな)

 マリウスが気をつけるとすれば、まずそこだった。
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