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ネクストライフ  作者: 相野仁
おまけ・番外編
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アウラニースVSソフィア&アイリス(続き)

「今度会う時はもっと強くなっておけ」


 そう言い捨てて去っていったアウラニースの背中を、アイリスとソフィアは悔しそうに見送る。

 明らかに本気ではなく、見逃してもらったという思いが強い。


「どうする? あいつまた来そうだぞ」


 アイリスはソフィアに相談する。

 本当は嫌なのだが、自分一人でどうにかできる相手ではないと思い知らされたばかりだ。

 彼女にとっては苦渋の決断だったし、ソフィアも無視をせず返事をする。


「逃げましょうか。あの女の知らない場所まで。あんな輩にあなたとの決着を、邪魔されてはたまりません」


「賛成」


 二人は頷き合うと早々にその場から離脱した。

 彼女達は多少の休憩を挟み、三つの大陸を超える。


「ここまで来れば平気か?」


 アイリスの発言にソフィアは賛同しなかった。


「いえ、もう少し離れてから様子を見てみましょう。あれほど強いと、我々が戦い始めれば感づくかもしれません」


「面倒だが仕方がないか」


 アイリスは舌打ちをしながらも、彼女の言い分を認める。

 強者ほど感知能力に優れているという認識は、この時すでに浸透していたのだ。

 彼女たちはさらにアウラニースと遭遇した地点から距離をとり、ある大陸にて身を隠す。

 この間、ほとんど会話はなかったが、彼女たちは本来殺し合いの真っ最中だったのだから、無理もないことだ。

 アウラニースというとんでもない存在の理不尽な横槍がなければ、まだ戦っていただろう。

 それともいい加減決着はついただろうか。

 

「腹減った、何かとってくる」


 アイリスは不意にそう言い、身を隠していた洞窟から出る。

 数百年飲まず食わずでも平気なソフィアとは違い、彼女は適時飲み食いしなければならない。

 食事をするくらいならばいいだろうと見送った矢先、アイリスの叫び声が聞こえてきた。

 

「ば、馬鹿な!」


 あのアイリスが驚くとは何があったのかとソフィアが外に出てみると、そこにはアウラニースが立っていたのである。


「よお、見つけたぞ」


 彼女はアイリスとソフィアを見て不敵に笑ったが、二人にしてみれば悪夢でしかない。


「どうしてここが分かった?」


「勘」

 

 アイリスの問いかけに理不尽きわまりない返事が来る。


「ただの勘で分かったとかふざけすぎでしょう」


 ソフィアは不快そうに吐き捨てる。


「信じないなら別にいい。ただ、オレから逃げようと思わない方が、お前たちのためだぞ」


 アウラニースは不本意そうな顔で言う。

 彼女なりの親切心なのだが、言われた方がどう受け止めるかは別の問題である。


「黙れ!」


 アイリスがしかけたため、ソフィアは仕方なく援護に回った。

 一対一ではおそらく相手にならない。

 まして今のアイリスは空腹なのだから余計だ。

 アウラニースはアイリスの正拳突きを普通に避け、下段蹴りを普通に止めてから彼女を殴り飛ばす。

 

「くっ」


 ソフィアでは当てるのも大変なのに、アウラニースがとても簡単そうにやる。

 これを見れば力の差を嫌でも再認識してしまうが、それでも逃げずに戦いを挑む。

 今回の戦いでは普通に殴られた。


「お前はただ殴っても無駄らしいからな。最初からレッキングありだ」


 非常にうれしそうに解説してくるアウラニースの顔が、ソフィアには大変腹立たしい。

 ところがアウラニースはすぐに怪訝そうになり、首をひねる。


「お前たち、前回より手ごたえがないぞ。もしかして消耗中か」


 一回殴られただけなのに分かってしまうのか、とソフィアは舌打ちした。


「何だ。それじゃつまらない。今日はもう帰る」


 アウラニースはふてくされた顔になると、さっさと立ち去ってしまう。


「な、何なんだあの女は……」


 アイリスは怒りがたっぷりこもった声に、ソフィアは心の底から共感する。


「まるで逃げても無駄だと忠告しに来たようですね」


「どこまでもふざけた女だ」


 アイリスは悔しそうに言う。


「……このまま引き下がりませんよね?」


 と彼女に聞いたソフィアの声は低く剣呑な気配に満ちていた。


「ああ。だが、どうする? 何か手はあるのか?」


 アイリスの質問にソフィアは首を縦に振る。


「やむをえません。本格的に手を組みましょう。まずはアウラニースを片付けるのです」


「……それまでは休戦か。たしかにあいつを何とかしなきゃ、お前と決着をつけるのは無理かもしれないな。いいだろう、手を組もうじゃないか」


 アイリスの決断は遅くなかった。

 二人は握手をかわし、アウラニース対策のために相談する。

 

「あたしたちをなめてわざと攻撃を受けることがあるから、そこを狙って大技を出すというのはどうだ?」


「あの女、やけに勘は鋭いですよ。回避能力も優秀なので、あまり期待はできません。分かっていてもかわせないような攻撃を考えた方がまだマシでしょう」


 アイリスの提案にソフィアが反論した。

 もっともだと思った彼女はぶつぶつと言う。


「分かっていてもかわせない攻撃か……あたしの真の姿の攻撃もダメだったし、お前もダメだったよな。いっそ合体技でも出すか?」


 彼女は冗談のつもりだったのだが、ソフィアは笑わずに考え込む。


「いえ、ありかもしれませんよ。最初の一撃でいきなりぶつければ、さすがのアウラニースといえども面食らうかもしれません。問題はあのアウラニースが避けられないような攻撃を出せるのかという点ですね」


「より速く、大規模な攻撃を仕かけるしかないか」


「ええ、いくらアウラニースでも大陸一つが消える攻撃は避けられないでしょう」

 

 二人はどのような技にするか相談し合う。

 

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『神速詠唱の最強賢者《マジックマスター》』

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