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ネクストライフ 作者:相野仁

おまけ・番外編

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赤ん坊

 マリウスの二人の息子、ジークとフリード。
 その名の由来を知っているのは名づけた本人のみであるが、そうでなかったら子供達は迷惑に思ったかもしれない。
 もっとも、他にも迷惑に思いそうな事は挙げられる。
 最たるものが、子供達の様子をじっと見つめる複数の影だ。
 その名をそれぞれゾフィ、アル、エルという。

「私達もご主人様の子が欲しいと思わんか?」

「思います」

 ゾフィの問いにアルとエルが即答する。

「我々と人間の間に子供はもうけにくいからなあ」

 ゾフィが残念そうにつぶやくとエルが訂正した。

「ご主人様は神の力を持った帝王ですよ。もっとも余計にできにくくなった感はありますが」

「人間とならできるのは不公平だよね」

 アルが口を尖らせる。
 彼女は淫魔との出産率は低いのに、人間とはそのままなのが不満なのだ。

「仕方ないんじゃない? 神と淫魔って対極的なものだし」

「それは分かるけど、神と人間はいいってのが納得できない」

 エルがなだめても頬を膨らませただけだった。 
 ゾフィがからかうように言う。

「何でも人間は神だけでなく悪魔や天使とも子作りができるらしいぞ。聞いた話だがな」

「え? 本当ですか?」

 アルどころかエルまでもが驚く。
 さすがにこの事は知らなかったようだ。

「うん、呆れたまでの繁殖能力だな。ゴブリン並みと言えるかもしれん」

 人間が聞けば激怒しそうな評価をゾフィは口にする。
 人間の繁殖能力が高いのは、ナイアーラトテッフがそのように作ったからだ。
 基礎能力で魔の陣営で劣る分を他の部分で補おうとしたのである。
 もちろん、淫魔三名にそんな事が分かるはずもない。

「悔しいからジークとフリードを可愛がって来よう」

 アルはそう言って部屋を飛び去った。
 ゾフィとエルは苦笑しあい、その後を追う。
 今更だが、淫魔達の服装は露出過多であり、欲望がある男全てに対してあまりよろしくはない。
 もっとも、けしからぬ事を考える者は誰ひとりとしていなかった。
 マリウスのお手つきだと知られている事もあるが、それ以上に彼女達が強いからである。
 気がついたらゾフィは魔王級、アルとエルは上級魔人並みになっていたのだった。
 いくら淫魔には房事を重ねれば強くなる種族特性があると言っても、これは異常である。
 つまり彼女達を抱いている男が異常なのだった。
 その異常である男はと言うと、現在我が子と戯れている。
 より正確に言うならば、二人を代わる代わる抱っこしていた。
 最近になって首が座ったのでやっとできるようになったのである。
 親ならばと止められたりはしなかったのだが、恐怖心に勝てなかったのだ。
 神の力を使えば何とでもなるとは言え、実際にやるのは何か違うだろうと。

「違います、陛下。もう少し手の位置を調整しないと安定しません」

 中年の女官に抱き方の指導をされながらである。
 何とかして上手に抱っこしようと四苦八苦するマリウスだった。
 当然の事ではあるが、この手の事で出産と育児を経験している女性達には敵わない。
 マリウスのみならず、バーラやロヴィーサも同様だ。
 母親としての心得などを伝授されている。
 乳母やもり役に丸投げするのは、彼らの性格が許さなかったのだ。 

「む、何か落ち着きがないなぁ」

 マリウスがやや残念そうに言う。
 赤ん坊達は視線を一つの方向に定めるという事がない。 
 あっちこっちきょろきょろ見回している。
 子供の目を見て笑いあいたい父親としては、それが不満なのだ。

「赤ん坊に落ち着きを求めるなんて無謀ですよ。アウラニースに求めるよりもね」

「そういうものなのか?」

「そういうものなのです」

 百戦錬磨の女官に断言されては、マリウスとしても引き下がるしかない。

「なあなあ、今オレ喧嘩を売られなかった?」

 暇そうにマリウス達の事を眺めていたアウラニースが、そんな反応を示す。

「もののたとえなんだから黙ってろ」

 マリウスが言うと「えー」と言いながら黙ってしまった。
 順調に躾は進んでいるようだ、と女官は考えたが口に出すのは控える。
 不満そうな態度を隠さない女に、ソフィアとアイリスが何やら話しかけていた。
 マリウスは気を取り直し、子供に向き直る。

「ばぁ、パパですよー」

 舌を出して声をかけたが、ちょうどジークは横を見たので効果がなかった。

「……」

 マリウスはめげずに声をかけていく。
 子守りも戦いなのだと思いながら。
 そんな帝王を見たアウラニースが突如として叫んだ。

「よし、オレも子供を産むぞ!」

「……え?」

「はぁ?」

 アイリス、ソフィアを除いたその場の者達が一斉に間抜けな声を上げる。
 何をどうしたらそんな考えにいきつくのだろうか。

「何ですって?」

 そしてアウラニースの宣言は、タイミングよく、あるいは悪くやってきた淫魔達の耳にも入った。
 目ざとく気づいた大魔王は破顔する。

「ちょうどいい。オレ達六人で孕み祭りだ!」

「……六人?」

 マリウスが思わず聞き返すと、アイリス、ソフィア、淫魔トリオが順に示された。

「これで六人だ」

「パスですね」

「同じく」

 ソフィアとアイリスが間髪入れず拒絶する。

「えー」

 不満そうな主人にソフィアが言った。

「私達の分も頑張って下さい」

 アイリスもたたみかける。

「アウラニース様のお子、ぜひ抱かせて下さい」

「お、おう」

 まんまと言い包められてしまう姿を見て、マリウスはため息をついた。

「アイリス、ソフィア。そこは止めてくれよ」

「無理ですね」

 ソフィアはやはり即答する。

「今のアウラニース様の目、何を言っても無駄な時の目ですから」

「諦めが肝心だぞ」

 アイリスと二人で心が温まるような応援(?)をされた。

「わ、私も! 私も二人目を!」

 対抗意識を燃やしたのか、バーラが立候補する。

「妾だって!」

 それにつられたか、ロヴィーサも手を挙げた。

(まさかの子作り戦争?)

 マリウスは現実逃避を始めている。
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