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ネクストライフ 作者:相野仁

おまけ・番外編

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VSメリンダ

「なあ、メリンダを復活させてみようぜ」

 アウラニースは突然、そんな事を言い出した。

「え? 何で?」

 マリウスが尋ねるとにこやかに答える。

「お前とどっちが強いのか、興味あるな」

「いや、さすがに今やったら俺が勝つと思うけど」

 マリウスは困惑した。
 魔法使いとしての力量はさておき、今の彼は神の力を持っている。
 いくら偉大な英雄と言えど、人間相手に負けるとは思わない。

「魔法使いとして戦えばいいじゃないか?」

「うーん」

 珍しくしつこいアウラニースに押され、マリウスは考え込む。
 目の前の魔王の意図を別にすれば、彼もメリンダという大英雄には興味がある。
 ただ単に強いだけでなく、魔法の体系を確立させ、マジックアイテムを創出した女傑だ。
 英雄という表現すら生ぬるい、偉人と言うべき存在だろう。

「本物を復活させるのは問題がありそうだけど、本物と同じ力を持った存在を作るのならいいかもな」

 とうとうマリウスはそんな事を言った。

「ほう、どうする?」

 アウラニースは両目を輝かせ、全身から「わくわくおーら」を放つ。

「サイコメトリーを使えば再現できるはずだ」

 もちろん、メリンダの事を覚えている存在が必要になるが、これはアウラニースなどが該当する。

「死者への冒涜になりかねないから、こっそりとな」

 マリウスがそう言うと、アウラニースは悪戯を企む悪がきのような顔でうなずく。
 こうして「メリンダ・ギルフォード」は、本物ではないにせよ一時的にこの世界に蘇る事になったのだった。




 ターリアント大陸より遠く離れた地にマリウス、アウラニース、ソフィア、アイリスはいた。
 以前作った名もなき大陸である。
 そして、マリウスとアウラニースが力を合わせ、一人の女性を生み出した。
 メリンダ・ギルフォード。
 千年以上も前の時代を生き、今日まで伝説と語り継がれる魔法使いだ。
 見た目は二十代半ばくらいで、金髪碧眼である。
 容姿は特に優れている訳ではないが、全身から放たれる魔力は凄まじい。

「全盛期のメリンダですね」

 ソフィアが解説するとアウラニースはうなずいた。

「オレがやられた時より、ずっと強いな」

 どうやらアウラニースを封印した時、まだメリンダは発展途上だったらしい。
 マリウスが対峙してみた感想は、聖人となる前の自分より強そうだという事であった。

「私達は戦っていないが、戦っていたら危なかったかもな」

 アイリスがそう言ったのも無理からぬ事だと思える。
 マリウスは一歩前に出て、過去の英雄に話しかけた。

「俺はマリウス。一手指南願いたい」

「……いいだろう」

 玲瓏たる、されどどこか虚ろな返事が来る。
 そしてマリウスの体は氷で覆い尽くされた。
 氷系の禁呪「アブソリュート・ゼロ」を無詠唱で放ったのである。

「……マリウス、死んだ?」

 アウラニースが半ば呆然とつぶやくと、氷は砕け散り、中からマリウスが無傷で現れた。
 きちんと防御魔法で身を守ったようである。

「やべ、いきなり死にかけた」

 マリウスは冷や汗をかく。
 「神言の指輪」の効果がなかったら、防御が間に合わなかっただろう。
 また、アウラニースとの戦いを経験していなければ、「神言の指輪」があっても危なかったに違いない。
 メリンダの魔法の射出速度は、それだけ凄まじかった。

「……できる」

 マリウスを殺しかけた女英雄は、次の攻撃に移る。

「<邪悪を滅する雷神の槍よ。無常の風と共に我が敵を滅ぼせ>」

(複合詠唱による合成!?)

 マリウスは目を見開く。
 複合詠唱とはゲームでアウラニース撃破後に追加される、エキストラスキルの一つである。
 異なる詠唱を組み合わせ、合成魔法を発動させやすくするのだ。
 消費魔力は大きくなるという欠点はあるが、それを補ってあまりある威力がある。
 会得したプレイヤーの戦いぶりを見て、マリウスはそう思ったものだ。
 「ヴァジュラ」と「アニヒレーション」、二つの禁呪の合成が彼に襲いかかる。
 受けきれないと判断したマリウスは、ワープで間一髪回避した。
 そしてそこに再度禁呪が襲う。
 「リフレイン」を無詠唱で使ったのだろう。
 またしても紙一重で避ける。

(尋常じゃない強さだな、オイ)

 マリウスは冷や汗をかいた。
 魔法の始祖とも言うべき存在であり、一度はアウラニースを止めているのだから、当たり前なのだろうが。
 正直、油断しないつもりでどこか侮っていたと思う。

(一方的にやられるのは趣味じゃないしな)

 マリウスは反撃する事にした。

「【ヴァジュラ】【アグニ】【アブソリュートゼロ】」

 メリンダが放つ禁呪の波状攻撃をかいくぐりながら。

「【アニヒレーション】」

 マリウスが放ったのは必殺の黒き烈風だ。

「【ニュートラル】」

 そしてそれは、メリンダの魔法によって中和され、無効化されてしまう。
 黒い風は白い風とぶつかるや否や、霧散してしまったのだ。

「はぁ?」

 マリウスは思わず目が点になる。
 ニュートラルの効果は知っていたが、こんな防御法に利用するとは思いもよらない事だった。
 禁呪を防がれるなど、なおの事である。
 そんなマリウスに伝説の魔法使いからの反撃が来る。

「【ウンヴラ】【アブソリュートゼロ】」

「【アグニ】【スターレイン】」

 禁呪を禁呪で相殺していく。
 魔法使いが見れば、卒倒しそうな光景が展開されていく。

「互角か」

 アウラニースがそう呟いた。
 マリウスはあくまでも神の力は使っていないし、メリンダは封印魔法を使っていない。
 それを置いても互角とは、彼女の予想通りだった。

「まあ、魔法使いとしての技巧は、メリンダの方が遥かに上ですけどね」

 ソフィアがそう言う。
 マリウスの反応を見るに、禁呪は禁呪でしか防げないとでも思っていたのだろうと推測する。
 技量で劣るマリウスが互角に持ち込んでいるのは、ひとえに魔法の威力の差だろう。
 後、マリウスの回避能力の高さもだ。

「自分より技巧に勝る相手の攻撃を食らわないって、相当凄いよな」

 アイリスが感想を述べる。

「確かにな。オレみたいに勘で避けているのか?」

 アウラニースが首をひねると、ソフィアがまさかと否定した。

「勘だけで解決できるのは、アウラニース様くらいのものでしょう」

「……オレ、今褒められたのか? 貶されたのか?」

 アウラニースは微妙な顔をする。

「褒めたに決まっています」

 ソフィアは表情を動かさずに即答した。

「そうなのか」

 アウラニースはそれ以上は黙る。

(聞こえているよ)

 マリウスは心の中でだけ、観衆達に言った。
 彼がメリンダの攻撃を避けられるのは、一応どれも見た事はあるものばかりだからだろう。
 もしかするとこの回避力こそが、最大の武器かもしれない。
 マリウス自身、密かにそう思い始めていた。
 何故ならば、彼はいささか自信喪失気味になっていたのである。 
 彼の魔法をここまで完璧に防がれた例は、あまりない。
 アウラニースは力で相殺したと言った方がいいし、ティンダロスは単に命中していなかっただけだ。
 ところが、メリンダは技巧で無効化してくる。
 下位の魔法で上位の魔法を蹴散らすのはマリウスもやった事があるが、彼の場合は完全な力技だ。
 対するメリンダは上手くいなしたり、受け流したり、中和している。
 現存する全ての魔法は彼女が生み出したという事なので、どう対処すればいいのか知悉しているという事なのだろうが。

(知らず知らずのうちに思い上がっていたのか?)

 マリウスは自嘲する。
 こうしていられるのは、修行で得た力ではない事くらい、分かっていたつもりだったのだが。
 メリンダとの戦いは、マリウスにとってよい勉強となっている。
 望外の結果と言えるだろう。
 特に複合詠唱のやり方、下位の魔法で上位の魔法をいなす方法が大きい。

(なるほどなるほど)

 マリウスは少しずつ余裕ができ、メリンダの戦い方を記憶に刻む。
 ところがである。

「うがああああ」

 突如として咆哮が起こった。

「オレも混ぜろっ!」

 アウラニースがとうとう我慢できなくなったらしく、乱入してくる。

(今までよく我慢した方かな)

 マリウスはそう思い、ため息をついた。
 メリンダの体の輪郭はぼやけ、光となって消える。
 マリウスとアウラニースが力を供給する事で存在していたのだから、マリウスが供給を止めれば消える道理だ。

「ああっ」

 アウラニースは悲鳴じみた声を上げて抗議する。

「仕方ないだろ。三つ巴とかごめんだ」

 マリウスは肩を竦めた。

「異議あり、お前だけ楽しんでいるんじゃない」

 アウラニースはふくれっ面になる。

「俺とメリンダの戦いが見たいって言ったのはお前だろ」

「ぐぬぬ……」

 マリウスの指摘に、アウラニースは悔しそうに唸った。
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