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ネクストライフ 作者:相野仁

おまけ・番外編

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頑張るデカラビア

「お前さ、すぐ死にそうだよな」

 アウラニース様は突然そんな事を言いだす。
 え、いや、そうならない為に僕は拾われたんじゃ?

「あんまり弱っちい奴を育ててもな」

 ため息をついちゃったよ、この人。
 何で僕を拾ったんだろう?

「というわけでお前にはエナジードレインを覚えてもらう」

 どういうわけかさっぱりだけど、強くなれるなら頑張ります。
 アウラニース様が合図をすると、ソフィア様が一歩前に出てきた。

「ソフィアが実践するから死ぬ気でラーニングしろ」

 え? 実践で? どういう事?
 目を白黒させているとソフィア様が僕の体に手を触れ……あれ、僕スライムなのに普通に触られている?
 な、何だろう……体から力が抜けていく。
 僕は何をされているんだ……?
 ソフィア様が手を離した時、僕はへろへろになっていた。

「今のがエナジードレインです。接触した相手の元気を吸い取り、自分のものにするスキルです。会得すると、戦闘が少し有利になりますね」

 それは分かります。
 でもどうやって覚えればいいんですか?
 そして遠距離攻撃が得意な相手だと、接近出来るか分からないんですが、どうすればいいんでしょう?

「そんなの自分で考えろ」

 アウラニース様にそう言われ、僕は思わず

「えええー」

 と叫んでいた。
 理不尽じゃない? とんでもなく理不尽じゃない?
 ソフィア様が苦笑し、

「ラーニング持ちならば自然と身につくでしょう。それまで何度もやればいいのです」

 と言ってくれる。
 今またやられると僕死んじゃう……あ、回復してからですか。
 ですよねー。
 よかった、ソフィア様が常識的で。

「何だ、オレに常識がないとでも言いたそうだな?」

 アウラニース様に睨まれる。
 自覚があるなら何とかして下さいよ。
 僕、普通に死にかけているんですから。

「お前みたいに弱い奴、育てるのは面倒だなぁ」

 じゃあ拾うなよ……ごめんなさい、嘘です。
 拾ってもらえて感謝しています。
 だから殴らないで、アウラニース様に殴られると消し飛んじゃう。

「ちゃんと強くなっているか確かめようとしただけだぞ?」

 本当かなぁ?

「お前を殺すくらい、予備動作とかいらないし」

 それもそうですね。
 冗談にしては全然笑えないんですけど。
 するとソフィア様がアウラニース様に提案する。

「他の者と引き合わせて切磋琢磨させてはいかがです?」
「あーそれもありかもな」

 アウラニース様は今思いついた、みたいな反応をした。
 ひょっとしてと思うけど、今まで他の存在を忘れていたとか……?
 アウラニース様ならありえそうだなぁ。

「じゃあ飯を食ったら会わせるか。えーと、お前、名前なんだっけ?」

 デカラビアですよ!
 もしかして自分がつけた名前を忘れたんですか!?

「オレは弱い奴の名前は覚えない」

 謝るどころか胸を張られたよ。
 一体、何の為に名前をもらったんだろう。
 僕は情けなさと悲しさでがっくりとなった。

「大丈夫。私が覚えていますから」

 ソフィア様が優しく微笑む。
 ああ、まるで天使のような笑顔だ。
 ソフィア様って優しくて強くて、凄いよなぁ。
 僕もソフィア様みたいになれたらいいな。

「む。何やら腹立たしい事を考えているな?」

 アウラニース様に睨まれる。
 どうしてこの人、こんなに勘が鋭いんだろう。
 もはや鋭いなんてレベルじゃない気がする。
 と、そこへアイリス様が戻ってきた。

「ただいま戻りました」

 腕がタコやイカみたいな触手になっていて、自分より大きな魚や熊なんかを抱えている。
 だって魔王だしなぁ。
 アイリス様とソフィア様はそうだと言われたわけじゃないけど。
 でも、襲ってきた魔人を一秒で倒していたもんなぁ。
 もうこの人達に関しては、驚いたら負けかなと思う事にした。
 アイリス様はとってきた獲物を少しずつ、僕に分けてくれる。
 死体からでもラーニングしろって事らしい。
 ちょっとずつ強くなっているとは思うんだけど、具体的な事は分からないな。
 何せ、アウラニース様、ソフィア様、アイリス様が全部倒しちゃうから。
 さっきの話から察するに、どうやら僕以外にも育てている奴がいるようだ。
 アウラニース様の退屈しのぎってだけで納得出来ちゃうけどね。

「とりあえずお前食え。そしてラーニングしていけ」

 ……死体を食べても出来るんですか?
 その割には今まで出来てなかったような?
 バッタとか小魚とかじゃダメだったのかなぁ?

「それを試すところから始めろ」

 了解です。
 魚を食べて、熊を食べるけど何も起こらない。
 スキルを持っていないのか、それともラーニングを失敗したんだろうか。

「適当に獲って来たので、もしかしたらスキル持ちじゃなかったかも」

 アイリス様がそう言うと、

「スキル持ちを獲って来いよ」

 アウラニース様がアイリス様の頭を殴る。

「あいた」

 アイリス様は頭を手で抑えたけど、これって凄いよな。
 だって地面には亀裂が入っているし、痛いですませちゃうアイリス様だって化け物だと思う。

「……その前に話せるようにするのがいいかもしれません。魔人に進化すれば自ずと可能となるでしょうが、それまでは不便ですし」
「ふむ。それもそうだな」

 そう言えば僕、まだ喋れないんだよね。
 アウラニース様達は全員テレパシーってやつが使えるから、今のところ問題ないんだけど。
 アウラニース様に至っては、テレパシーなしでも僕の考えが分かっちゃうみたいだけど。

「じゃあそこらの人間を捕まえて食わせてみるか?」
「会話出来る生き物なら何でも構わないのでは?」

 アウラニース様とアイリス様がそう言っていると、ソフィア様が待ったをかけた。

「その前にまだ入りますか?」

 そこで三対の視線が僕に集まる。
 もうお腹いっぱいです、ごめんなさい。
 ソフィア様、待ったをかけてくれてありがとうございます。


 僕らは移動した。
 と言っても僕はアウラニース様に掴まれていただけなんだけど。
 ……ところで、何でアウラニース様達は僕を掴めるんだろう?
 アウラニース様達だから、でいいんだろうか?
 別に違和感はないんだけど。
 僕らが移動した先にはでっかい奴がいた。
 頭も腕もいっぱいある、とんでもなくでっかい奴。

「へカトンケイルのザガンだ」

 アウラニース様がそう言う。
 へカトンケイル?
 ゴブリンとどっちが強いんですか?

「ん? ゴブリンより強いスネークより強いコカトリスより強いかな」

 とりあえず強そうってのは分かりました。
 ソフィア様が更に解説してくれる。

「彼は巨人族。ドラゴンと並び称される上級モンスターです。もっとも巨人族は、アウラニース様のせいで壊滅状態ですけどね」

 ど、ドラゴン?
 会ったら逃げられず死ぬしかない、会わない事を祈れって言われるあのドラゴン?
 ドラゴンくらい強いの?
 それってメチャクチャ強いんじゃない?

「ドラゴンだってアウラニース様のせいで半壊状態だろう」

 アイリス様がため息をつきながら教えてくれる。
 そ、そうなんだ……アウラニース様何してるの?
 一応部下になりそうなモンスターを壊滅させるなんて。

「滅ぼしてはいないから、そのうち復活するさ」

 アウラニース様はあっけらかんと笑う。
 やっぱりこの人が圧倒的怖いよなあ。

「ザガン」

 ソフィア様が呼びかけるとザガンくんはこっちを見る。

「何か用っすか」

 何だろう、このおなざりな態度。
 こ、殺されちゃうんじゃない?

「こっちもオレの配下にしたから顔合わせを、と思ってな。間違って攻撃したらオレが殺す」

 アウラニース様がそう言ってもザガンくんは平気そうだった。

「スライムなんて攻撃しませんよ。みっともねえ」
「ならいい。課題は? こなしているのか?」

 アウラニース様が質問する。
 課題って何だろう?

「とりあえず、この森にいたサーベルフォックスなら全滅させたと思うんすけど、これで強くなるんすか? もっと強い奴と戦いたいんすけど?」
「弱い奴が生意気言うな」

 アウラニース様はぴしゃりと言い放つ。
 へカトンケイルでも弱いのか。
 そうだよな、魔王がパンチ一回で死ぬもんなあ。
 そこでソフィア様が会話に加わる。

「ところでザガン。こうして会話な出来る生き物を見かけませんでしたか?」
「はあ。ダークエルフならちらほら見かけましたが。どうかしたんすか?」

 誰もその質問には答えなかった。
 答えてあげればいいのに。
 僕の味方なんだし。
 ……味方でいいんですよね?

「場所は?」
「あっちです」

 ザガンが一本の腕で方向を示す。
 もしかしていっぱいある腕を別々に動かしたり出来るんだろうか。
 だとしたら器用だね。

「ならついてこい」

 アウラニース様は僕に声をかけ、ザガン君が示した方角に向かって歩き出す。
 ソフィア様とアイリス様が続いたので僕もついていく。
 あの、この流れなら訊けそうなので訊いちゃいますが、モンスターってどれくらいいて、どの種族が強いの?
 そして皆さんの種族は?

「オレはタイラントだな」

 知らないなぁ。
 どんなモンスターなんですか?

「モンスターじゃないぞ」

 え? 何を言っているのかよく分からないんですが。
 アウラニース様は魔王なんですから、モンスターでしょう?

「だからモンスターじゃないっての。何度も言わすな」

 アウラニース様に殴られる。
 あ、頭が揺さぶられて、し、視界が揺れちゃう。

「まあ、モンスター出身でないのに魔王なのは、アウラニース様くらいでしょうか」

 私が知っている限りの話ですけど、とソフィア様は言う。
 そうなのか。
 モンスターじゃないのに魔王って、アウラニース様ってつくづく規格外なんだなあ。

「ちなみに私はヴァンパイアでアイリスはクラーケンですよ」

 ヴァンパイアとクラーケン?
 よく知らないや。
 でも強いんだろうなあ。
 アウラニース様って例もあるけど、少なくともアイリス様とソフィア様が強いのは確実だろう。
 と思っていたら、アウラニース様とアイリス様が、何やら意味ありげにソフィア様を見た。
 どうしたんだろう?
 疑問は伝わったはずなのに誰も答えてくれない。
 何だろう、訊いちゃいけない事なんだろうか。 

「そこで止まれ」

 鋭い声がして、僕の心臓が潰されそうな敵意が浴びせられる。
 遠く離れた場所で、弓を構えてこっちを見ている奴らがいた。
 あれがダークエルフなんだろうか。

「ほう。おでましか」

 アウラニース様は平気な顔どころか、嬉しそうでさえある。
 そして無造作に歩いていく。
 当然、弓は発射された。
 光や炎をまとって飛んできたそれを、アウラニース様は片手で掴み取ってしまう。

「なにっ?」
「ええっ?」

 驚きの声が上がるけど、無理もないと思う。
 何本も放たれた魔法の矢を片手で止めちゃうなんて、すごすぎだよね。
 僕はアウラニース様だから、で納得しちゃえるけど。

「よっわいな~」

 アウラニース様はそう言いながら、矢をぽいっと捨ててしまう。

「化け物め!」

 ダークエルフ達は弓矢を捨てる。
 そして嫌な感じが一気に跳ね上がった。

「【コンゲラーティオ】」

 ま、魔法?
 僕の周囲を綺麗な氷の壁が覆い尽くす。
 こ、こんな攻撃、僕死んじゃう。
 ……と思ったけど、まだ生きている?
 何だろう、よく分からないけど、僕の近くにアウラニース様が立っていて、僕と自分の周りを薄い壁で包んでいる。
 冷たいだけで死ななかったのは、アウラニース様が守ってくれたからかな?

「魔力を圧縮した薄い膜を何重も展開する応用技術ですよ。これにより、あなたのような流動体を掴んだり、魔法攻撃から身を守ったり出来るのです」

 ソフィア様がそう説明してくれた。
 ソフィア様やアイリス様も同じような事をしているっぽい。
 この人達、強すぎじゃない?
 アウラニース様が歩き出すと氷の壁はあっけなく砕け散る。
 ダークエルフ達は呆然としていた。

「な、何者だ……ま、まさか魔人?」
「オレは魔王だ」

 アウラニース様は傲然と名乗る。
 ダークエルフ達は絶望していた。

「わ、私達を滅ぼすつもりか?」

 虚ろな目で問いかけてくる。
 どこか力がない、なくなってしまった気がした。

「どうでもいい。今日はこいつのお勉強なんだ」

 そう言って僕の体をこつんと叩く。
 何だかとても可哀相だから、殺さなくてもいいんじゃないかなあ?
 ダメでしょうか?

「お前がちゃんとラーニング出来ればどうでもいい」

 アウラニース様はそう言う。
 どうやら本当にダークエルフ達はどうでもいいみたい。
 という事は、僕の責任は重大だな。
 頑張ってこのダークエルフ達が殺されないようにしてあげなきゃ。

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