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ネクストライフ 作者:相野仁

おまけ・番外編

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闘い

 「性王」マリウスの夜はさぞ豪奢だろうと羨ましそうに言う男達は多い。

「誤解だぁ」

 マリウスはそう主張する。
 それが事実だと断言出来る者はいない。
 当たり前だが、マリウスを除けば男子禁制だし、アイリス、ソフィアといった客観的な判断が出来る者は、関わろうとしないのだ。
 別に空気が悪いとかいった事はないし、世間一般で言う寵愛争いのようなものも存在しない。
 マリウスはその手の事を嫌うし、「サイコメトリー」を使えばごかましなど不可能だ。
 では何故マリウスが上記のような反応なのかと言うと。

「マリウス、あーんして」

「あーん」

「次は私ね。あーんして」

「あーん」

 といった事が起こる。
 ロヴィーサがやり始めるとバーラも真似をする。
 要は「ご奉仕戦争」の勃発だった。
 もっとも、他の女への競争意識は全く感じさせず、ひたすらマリウスに奉仕しようとしているので、マリウスとしても怒りにくい。
 注意をしようと思ったら、

「至らないところがあれば、どうぞ遠慮なく仰って下さい」

 と真剣なまなざしで見つめてくる。
 しかも他の女も参考にしようと、固唾を呑んで見守るのだ。
 こうなってくるとまさか「尽くしすぎ」と叱るわけにもいかない。
 「女に尽くされて文句を言うのか」と自問し、「贅沢すぎるな」と自答してしまった。
 食事が終わるとロヴィーサに膝枕耳かきをしてもらい、バーラに団扇で煽いでもらう。
 本来ならば侍女がすべきような仕事でも、女達はやりたがるのだ。
 職制上の問題があるのではないかと言うと、

「妻が夫に尽くすのだから問題がありません」

 と異口同音に返された。
 エマを見ると黙って目を逸らされる。
 全身で「わが身は可愛いのです」と訴えていた。

「私達が尽くすのはご迷惑でしょうか?」

 泣き出しそうな顔で上目遣いで尋ねられ、マリウスは白旗を掲げる。
 せめてもの救いは、ゾフィ達やアウラニースが乱入してこない事だろうか。
 ゾフィは黙々と巡視業務に取り組み、アルとエルはそれの補佐をしている。
 日常の奉仕は嫁の仕事と割り切っているらしい。
 アウラニースに至っては、冷めた目で見るどころか

「オレにも奉仕する人間を寄越せ」

 と言い出し、気を利かせたソフィアとアイリスが奉仕をして黙らせた。

(どうすればいいんだ?)

 やがてマリウスは困り果てて頼りになる淫魔に相談してみる。

「助けて、エルえもん」

 泣きつかれた本人は「意外と余裕があるような」と思ったが、そこは忠実さを示して、

「では、ろーてーしょんでしたか? 交代制度を設ければいいのでは?」

 と提案した。
 これならば少なくとも、ひっきりなしにご奉仕される心配はないというのである。

「さすが」

 マリウスは喜んで早速取り入れる事にした。
 が、それだけで全ての問題は解決しない。
 夜こそが最大の難関と言えた。
 ロヴィーサ、バーラ、ゾフィ、アル、エル、エマ、アイナ、レミカ、アウラニースと子作りに励むのが日課である。
 庶民からすれば「ふざけるな」と言いたくなるような事でも、マリウスにとっては子作りも立派な仕事であった。
 簡単には死にそうにないとは言え、世継ぎをもうけなければならないのだから。
 さてその仕事だが、最低でも一対六、最高で一対九になる。

「舐め舐めして下さい」

「縛って下さい」

「いじめて下さい」

 誰がどの発言をしたか、あえて記さない。
 無理していそうな者もいたので。
 マリウスがこちらの世界に来て最初に具合が悪くなった部分は腰であった。
 医者にかかりたくない一心で回復魔法を使った、トゥーバン王国初代国王が取った行動は、

「助けてエルえもん」

 エルに泣きつくという事だった。

「こちらもろーてーしょん制にすればいいのでは?」

 エルは「今までよくもったな」と思いながら言い放つ。
 マリウスが女性陣に提案した時、アウラニースしか反対しなかったあたり、誰もが似たような感想を抱いていたのだろう。
 神の力を得たとはいえ、必要以上の負担を強いるのは、妻として不本意ではあったらしい。
 かと言って自分達で言い出さなかったあたり、女心は複雑だと評しておこう。

「ぬう」

 一番の難題は不満そうに唸るアウラニースだった。
 髪を優しく撫でてもキスをしても、ベッドの中で説得してもやめようとしない。

「じゃあお前はなしで」

 仕方がないのでマリウスは、アウラニースをハブる事にした。

「な、何だと?」

 アウラニースは目を剥き、ついで怒ったが、マリウスも引き下がらない。
 「ごねたら許される」という風潮を作る訳にはいかなかったのだ。

「あんまりわがまま言うとお前、瓶にでも封印して海に捨てるぞ」

 アウラニースは沈黙してしまう。
 脅しを実行すると人魔共存の難易度が跳ね上がってしまうのだが、幸いな事にアウラニースはそこまで気が回らず、気づいていたソフィアは沈黙を守ってくれた。
 結局、ロヴィーサ、エマ、アイナで一組。
 アウラニース、ゾフィ、アルで一組。
 バーラ、レミカ、エルで一組となった。


 ここで終わればハッピーエンドとはいかなくても、グッドエンドと言えただろう。
 されど今度はチーム対抗戦のような形になってしまう。

(元の世界で戦争がなくならない理由、分かってしまった気がする)

 マリウスは黄昏たくなった。
 もっとも、いかにマリウスに喜んでもらうか、が主眼なのであまり強くは言えない。
 マリウスだって男だから、美女や美少女に尽くされまくるのは嬉しいのである。
 ある日、マリウスが気が付くとそこは夢の世界だった。

「ご主人様」

「エルか?」

「はい」

 花畑のような世界にエルだけがいて微笑みかけている。

「リラックスしていただければと思い、こんな趣向を考えてみました」

「ありがたい!」

 マリウスは喜び、花畑の中を転がる。
 エルはいつも頼りになり、ありがたさと申し訳さなさでいっぱいであった。
 欲を言えば根本から正せるような案を出してもらいたいのだが、さすがにそれは望みすぎであろう。
 原因は間違いなくマリウスにある。
 それを棚上げするほど恥知らずではなかった。
 夢の世界とは言え、花々の芳香が荒んだ気持ちを癒してくれる。

「ご主人様、よければどうぞ」

 エルは正座し、己の太ももを叩く。
 マリウスは吸い寄せられるように頭を乗せた。
 大きさで言えば一番だし、膝枕してもらった状態で眺めるとなると特に素晴らしく見える。
 寛いでいるのであればなおさら。

「子供が産まれたら落ち着くでしょう。それまでの間、大目に見てもよろしいかと」

 優しく諭され、マリウスはそういうものかと思った。
 自分の気苦労を察して癒しに徹してくれるエルには感動を覚える。
 そんなマリウスの髪を撫でながらエルは、

(思い通り!)

 黒い笑みを浮かべた。
 マリウスを最終的に独り占めし、好感度も一気に稼ぐ。
 彼女の計算通りだった。
 どこからが、という事はマリウスは知らない方がよいだろう。
(怪情報)
レミカ>アイナ=バーラ>エマ>ロヴィーサ>>>キャサリン(将来に期待)
エル>ゾフィ>レミカ>アウラニース=アル>アイナ=バーラ>エマ>ロヴィーサ
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