奏でる音の色〜詞に載せた想い〜(4/7)PDFで表示縦書き表示RDF


奏でる音の色〜詞に載せた想い〜
作:藤原陵平



第3小節 Aメロ 3句


 第3小節 Aメロ 3句

 さて、メンバー探しといっても簡単に集める事ができる術を残念ながら持ち合わせていない。何から当たっていけばいいのやら……

 だが、その時は突然来た。
「うるせぇ! そんな音楽やっても全然カッコよくねぇんだよ!」
「お前達はカッコつける為に音楽やってるのかよ! そんなバンド俺から辞めてやる!」
 なんだ? 軽音楽部の部屋から喧嘩の掛け合いが聞こえる。と思ったら1人出てきた。
「おい、どうしたんだ?」
「先輩の方ですか? 何でもないから平気です。じゃあ……失礼します」
「何か、楽器出来るのか?」
「はい……一応ギターが」
「バンド、やりたいか?」
「今はいいです……今あんな事があったばかりですから……」
 このチャンスを逃してたまるか。せっかく見つけたんだ。こいつの目は確かに音楽家の目だ。逃さない。逃したくない。
「さっき、何があったんだ? 良かったら教えてくれよ。あぁ、俺は藤森優斗」
隅原貴明すみはらたかあきです。実は3年に兄がいまして、その兄の友達が亡くなってしまったんです。だから、元気を出して欲しいから曲で届けられたら、と思ったんですけどバンドのメンバーが『俺達はバリバリのパンクしか興味がないんだよ! そんなメッセージソング、カッコよくないんだよ!』と言われてしまいまして……」
 酷いな……バリバリのパンクね。技術がない奴等がやっても、ただうるさいだけの雑音バンドだな。しかもメッセージソングは嫌だと? パンクにメッセージが無いとでも思ってるのか? それは大いなる勘違いだ。
 メッセージのない音楽など存在しない。何かしらあるんだよ。全く、格好をつけたいだけの高校生バンドには分からないか。音楽の深さを知ってから語りやがれ。パンクを嘗めた
口で語るな。この野郎。
「隅原だっけ? 隅原……隅原幸助の弟か?」
「はい。そうです。なんで知っているんですか?」
「バイト先が同じでな。じゃあ悲劇の主人公は……」
「悲劇ではありません。その本人、古河正晴さんとお亡くなりになられた凪愛子さんの間には可愛い女の子が誕生したんです。愛ちゃんという女の子です。確かに正晴さんは落ち込んではいます。愛ちゃんも凪さんの両親に預けたまま。だからこそ、元気を出して欲しくて……」
「俺とバンドやらないか? いやっ、すぐに返事をくれとは言わない。でも考え
てくれるか?」
「藤森さんとバンドを組めばメッセージを兄達に届けられますか?」
「少なくともあんなパンク気取りより真面目だな」
「他のメンバーは?」
「生意気なボーカルが1人いる。ちょっと訳ありではあるが……その他はまだだ。でも、貴明が本当に届けたいなら、もうすぐある学園祭でやらないか? 俺と音楽を」
「じゃあ、そのボーカルの人に会わせてください」
「……分かった」
 という事で由架と対面させる事にした。
 貴明が事情を説明していると、ん? 由架が涙目? 意外とこいつは涙脆いのか?
「おい、由架。泣くなよ……」
「ん? あぁゴメン。ちょっとアクビがね」
 今こいつなんて言った? アクビ? あぁね。やっぱりこいつはこういう奴なんだよな……分かっていたとはいえ、相手に失礼だし俺も懲り懲りだ。
「事情は分かったけど、それと私になんの関係があるの?」
「じゃあ聞こう。由架さんよ、どうすれば学園祭で一緒にやってくれますか? 貴明だって悪い奴じゃないぜ?」
「それは分かっているわ。少なくとも貴方よりは良い子ね」
 はいはい。どうせ俺は悪者扱いだよ。
「事情が事情だから。そうね……1曲。学園祭までに出来たらやってあげてもいいわ。その代わり私が歌って恥ずかしくない曲にしなさいよ」
 何だよ。案外素直じゃないか。いつもそうしてれば可愛いのにな。もったいない。あぁもったいない。もったいない。
「じゃあ、私は用があるから帰るわ。まぁ頑張って」
 お嬢様気取りだな。
「綺麗な声ですね」
「やっぱり貴明もそう思うか?」
「はい。恐らく彼女は音楽経験がありますよ。本当に音楽好きなら、あの声の良さが分かります」
「それはそうとして、曲はどうする? 残念だが俺は楽器が全くもって駄目でな。作曲は無理だ」
「じゃあ演奏の方はどうするんですか? それと何故バンドをやろうと思ったんですか?」
「貴明の弾き語りだな。俺の夢は詩人になる事だ。そしてあの声と出会った。これは本気でやるしかないだろ?」
「ごもっともです。じゃあやった事ないから分からないですけど、僕が曲を作ってきます。詞は藤森さんに任せます」
「分かった。頼むぞ」
「はい」
 こうしてなんとかチャンスを得た。バンドというか……だけど、明らかに一歩を踏み出しただろう。それは確かな一歩だ。続くベース、ドラムを待つ。

 学園祭まで、あと2週間。

 翌日。なんと貴明は曲を持ってきた。1日で作れたのか? すごいな。
 早速、家に帰りデモテープを聴く。
 アコギでアルペジオが始まり、綺麗なメロディーを奏でていく。前奏とAメロ、その区別がはっきりと見える素晴らしい出だし。そしてサビのコード進行。Cメロでの思いきったピッキング。素直な感想をいうと天才を見つけたという結果に繋がる。
 こんな身近に天才、才能を持った奴がいたとはな。鳥肌が立つ。寂しいメロディーにも関わらず温かさを感じさせる。『愛』その名に捧げるメロディーとしてはこれ程温かいものはないだろう。凄いな……これは自然と詞が出てくる。
 だが、あと2週間で詞を完成させろなど俺にはきつい話だ。いくら詞の構成やらが決まったとしても、まだ微調整や言葉の意味合いの考えをまとめたりしなければならない。これは大変だな。
 しかも、あと2週間で学園祭という事はそれより前に由架に曲を渡さなければならない事になる。頼むぞ俺。

 授業中も浮かんでくる詞をメモをしては全体的なまとまりに合うか何度も見直しをした。
 あくまで今回は古河正晴さん、凪愛子さんの為のものだ。書き下ろしでその助けになる詞を書かなければな。
 さぁ、もう1週間をきった。
「藤森さん、出来ましたか?」
「ほとんどのテーマ、流れ、メッセージはな。少し手直せば完成だ。俺の感想ではあるが、これは素晴らしい曲だぞ」
「そうですか。楽しみです」
「明日には渡すよ。そうしないと由架の事もあるからな」
「そうですね。頼みます」

 翌日。
 由架に曲を渡すなんて、度胸がないと出来ない事だな。
 放課後、俺達は誰も使っていない資料室に行き曲を確かめていた。
 歌詞が書いてある紙を渡し、デモテープを流す。
「頼むぞ、由架…」
 俺は目を閉じ曲が終わるのを待った。
 そして……
「アンタ」
「なんだ? 何か言いたい事があるのなら言ってくれ」
「学園祭でやるのにはエントリーしなくちゃならないわ。早く行くわよ」
「……おぅ!」
「藤森さん、これって……」
「あぁ、良かったな」
「はい」

 エントリーも無事済み、いよいよ練習。とりあえず、楽器はギターだけ。歌は由架。実に簡単だ。俺は舞台袖で見守る。ちゃんと作詞は俺だという事を言おう。そうしなければ俺の名が全くの皆無状態で無視される。
 それは嫌だからな。

 練習3日目。
 やはり由架は才能がある人間だったようだ。音程を外す事はまずない。声もしっかり地についている。バンドのバラードって感じだな。歌い方もしっかりしている。これなら問題がないようだ。
 さぁ、本番はすぐそこ。


書き下ろし〈別れはしないよ 会いたいよ だから また明日空の下で〉












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