キツネさんのたんじょう会
あるところに、のんびりのんびりくらしているクマの子がいました。
「クマさん、クマさん。今日の夜、キツネさんちでたんじょう会をやることになってるんだって。森のみんながあつまることになっているから、クマさんもきてね」
その日の朝、小鳥がクマの子の家までやってきて、そういいました。
「うん。わかったよ」
クマの子は、のんびりそういいました。
そして、こう思いました。
(夜ならまだまだじかんがあるな。それまでゆっくりのんびりねていよう)
クマの子は、それからほんとうにねむってしまいました。
そうしてけっきょく、クマの子は夕方までねむったままだったのです。
「ふあーあ。よくねた」
クマの子は西の空があかくそまったころに、ようやくおきました。そしてのんびり顔を洗ったりはみがきをしたりをしながら、こう思いました。
(そういえば、今日の夜、キツネさんのたんじょう会があると小鳥さんがいっていたっけ。そろそろ行ってみようかな)
そうしてクマの子は、のんきな足どりでキツネの家に向かいました。
キツネの家に向かうとちゅう、クマの子はあることを思い出しました。
「たんじょう会には、プレゼントがひつようだぞ!」
しかし、クマの子は手になにも持ってきていません。家にもなにかあげられるようなものもなかったように思いました。
そこで、クマの子はキツネさんちに行く前に、森でプレゼントをさがすことにしました。
クマの子がプレゼントをさがして森の中を歩いていると、そこにウサギがあらわれていいました。
「クマさん、クマさん。そこでなにをしているの?」
「キツネさんにあげるプレゼントをさがしているんだ」
「そう。わたしはこの野イチゴをあげるのよ」
ウサギのいうとおり、その手にはおいしそうな野イチゴがありました。
「それはいいプレゼントだ。きっとキツネさんもよろこぶよ」
「ありがとう。クマさんもいいプレゼントが見つかるといいね」
そういって、ウサギは去っていきました。
クマの子がまたプレゼントをさがして森の中を歩いていると、今度は向こうからタヌキがやってきていいました。
「クマさん、クマさん。そこでなにをしているんだい?」
「キツネさんにあげるプレゼントをさがしているんだ」
「そう。ぼくはこの葉っぱの王かんをあげるんだ」
タヌキのいうとおり、その手にはりっぱな葉っぱの王かんがありました。
「それはいいプレゼントだ。きっとキツネさんもよろこぶよ」
「ありがとう。クマさんもいいプレゼントが見つかるといいね」
そういって、タヌキは去っていきました。
そうしているうちに、夜はどんどんふけていきます。
「どうしよう。のんびりしていたせいで、キツネさんにあげるプレゼントが見つけられない。きっとたんじょう会もはじまってしまったぞ」
クマの子はどうしたらいいかわからず、泣き出しました。
そんなところに小鳥がやってきていいました。
「あっ。クマさんこんなところにいたんだね。もうみんなキツネさんの家にあつまっているよ。早くクマさんもおいでよ」
そういわれ、けっきょくキツネにあげるプレゼントが見つからないまま、クマの子は小鳥と一緒にキツネの家に行くことになりました。
キツネの家には、さきほど森で会った、ウサギやタヌキのすがたもありました。その手にはそれぞれすてきなプレゼントが用意されています。
「キツネさん。たんじょうびおめでとう。これ、わたしからのプレゼントよ」
ウサギがいいました。
「ありがとう。とってもすてきなプレゼントだね」
キツネはとてもよろこびました。
「キツネさん。たんじょうびおめでとう。これ、ぼくからのプレゼントだよ」
タヌキがいいました。
「ありがとう。とってもすてきなプレゼントだね」
キツネはとてもよろこびました。
「キツネさん。たんじょうびおめでとう。これはあたしからのプレゼント」
小鳥がいいました。そして、小鳥はすばらしい歌を歌ってきかせました。
「わあ。ありがとう。とってもすてきなプレゼントだね」
キツネはとてもよろこびました。
とうとう次はクマの子のばんです。みんながクマの子がなんのプレゼントをあげるのか注目しています。
しかし、クマの子には、なにもあげられるプレゼントがありませんでした。
クマの子は泣きながらいいました。
「ごめんね。キツネさん。ぼくがのんびりしていたせいで、キツネさんにあげられるプレゼントを見つけることができなかったんだ。おいわいしてあげたかったのに、本当にごめんね」
クマの子はこうかいしました。のんびりしていないで、もっと早くプレゼントをさがしておけばよかった。もっと早くそのことをかんがえていればよかった。
クマの子が泣いていると、キツネはその手をにぎっていいました。
「ありがとう。クマさん。そのきもちがぼくにとってはじゅうぶんすてきなプレゼントだよ」
キツネがそういうのをきいて、クマの子はうれしくなってわらいました。
「さあ、みんなでおいわいのパーティーをしよう」
キツネがいうと、みんな手をつないでおどりだしました。
そうして、その日のたんじょう会は、とてもすてきなものとなったのでした。
(おしまい)