7.心霊少年と心霊青年
「あっ……」
先客がいた。
一言で言って、ハデ。
ややロン毛の金髪に上下とも黒服で、シルバーのアクセサリーがわんさか。
彼はぼくを見るなり言った。
「おまえ、祓えるの?」
いろいろあって、ぼくは授業に出席できないことがよくある。
一年のときにはゴタゴタがあったけど、ヤナギ特別コースと内々に呼ばれるマンツーマンの補習が定着していた。
熱心な生徒指導主任のおかげだけど、部活でもないのに帰りが遅くなるのはありがたくない。
やっと補習を終えて、靴にはきかえながら考える。
あの高遠についていた幽霊に、満ち満ちていた悪意。
どこかに消えてしまったのならそれでいいけれど。
かなり自分のいやがる気持ちを抑えて、高遠を家まで……、ほんとうにイヤだけど『見守る』ことにしようと決心した。
せめて今日だけでもいい。なにもしないで見殺しにするのは後味が悪すぎる。絶対に後悔する。
あとを尾けて、まだ憑いているのかどうかだけでもわかったらいい。
またあの悪霊の影響を受けて具合が悪くなるのはご免だから、なるべく遠くから。
プラットホームで電車に引きずりこまれるのを目撃することになるかもしれないけど、ひょっとしたらぼくにも何かできるかもしれない。
いろいろ考えながら、ぼくは高遠をまちぶせるために、正門脇の電柱の影に隠れようとした。
「あっ……」
そこでハデなお兄さんと出逢ったのだった。
ぷかぷかとタバコをふかしながら、彼は聞いた。
「おまえ、祓えるの?」
七歳上のうちの兄も職業柄、――ヘアスタイリストなのでハデなほうだけど、彼は発しているオーラまでハデだと思った。
「えーと……」
唐突だったので、ちょっと考えた。『ハラウ』って『祓う』? 『払う』?
「祓えません」
とりあえず答えてみた。よくわからないけど、どっちもできないし。
「じゃあいいや。行ってよし」
「……はあ」
堂々と命令されて、ぼくはついそこを去るところだった。
我に帰って立ち止まる。
「あのう」
「ん?」
彼は指輪だらけの指に挟んだタバコを口にしかけて、止めた。灰が風に舞う。
「えーと」 どう言えばいいのだろう。「ここでなにしてるんですか」
アホなことを聞いてしまった。知りたいことは違うのに。
「ここの教師の張り込みだよ、少年」
くふ、と彼は笑った。からかってるらしい。
「あのー、ハラえるかって……、借金の取立ての人ですか」
こんなことを聞けたのは、ぜんぜんそんなふうには見えないからだ。格好はハデでも、人の良さげなあったかい雰囲気が心地良い。
「ばぁか」
笑った顔が優しくて、好きだなと思った。なんだろうか、この感じ。懐かしいような暖かさ。
「霊が祓えるかって聞いたんだよ。ここのセンセイで悪いのに憑かれたのがいんだろ?」
試すような口ぶりだった。
「……………」
答えあぐねた。
この人はぼくのことを知っていて、なにか利用したいのだろうか。じつのところ、そういう怪しい人に声をかけられたことがある。何度も。
「ああ」 彼は肩をすくめて困った顔をする。「おまえ、可愛い顔してんのにスレてんなー。――オレも霊能者ってやつだよ。同類はわかんのよ。――あれ?」
「――えっ?」
彼は手を伸ばして、ぼくの肩に手を置いた。
ぼくは身をかたくする。
「ここ、蓮がさわっただろ?」
なぜだか怖い顔で、ハデなお兄さんが聞いた。
たしかに高遠が、朝さわった場所だった。
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