30.サツキ、飛び込む
すこし気を失っていたらしい。
気がつくと、一条さんと高遠にのぞきこまれていた。
「やるじゃないか少年」
一条さんが笑いかける。
「どうなったんですか」
がばっと起き上がり、ぼくは一条さんの肩のあたりが血まみれなのに気づいた。
「さつきちゃんと悪霊さんがタッグを組んで、あの、かまいたち?、そーゆー攻撃をしてきてさ。――ヤバかった。見えればよける自信あんだけどねー。でもお前が他のを消してくれたから……助かったよ」
さつきさんは、まださっきのところに立っていた。二十メートルほど離れた場所だ。
「残りはアレだけだよ。なんかちょっと、しつこいお嬢さんみたいだねー」
はふーと、一条さんがいつものように能天気に息をつくが、顔色が悪い。
ぼくもヘロヘロだった。
「――ストーキングまがいのこともやってくれてたから。筋金入りだよ」
高遠が言った。
ぼくと一条さんは顔を見合わせる。
「へー、十二年めにして進歩したじゃん。あれが幽霊さんだって認めるわけね」
「……本当は」
高遠はさつきさんを見ながら、かすかに笑う。
「わかってたよ。ずっと。――お前が一緒にいて助けてくれてたこと」
「………………」
「お前に逢ってから死にかけることはなかったしね。二階から落ちたり、車がつっこんできたり。―― 子供のときはよくあった」
「………………」
一条さんは黙ってしまった。
「なに?」
高遠はやや鋭いまなざしを無言に返す。
「……蓮が素直になるとちょっと……しっくりこないっつーか。気持ちわりー。いてっ」
ゴンと高遠のこぶしが彼の頭にヒットした。
「気持ち悪いとはなんだ。感謝してやろうと言ってるのに」
「急になんでさ。なんでなんで? 理由が知りたい」
頭を押さえつつも、一条さんは嬉しそうな顔。
高遠がちらりとぼくを見た。
「しかたないだろ。こんな乙女系に泣きながら助けられて。――こんなのに助けられるくらいなら、お前にひと晩付き合うほうががまだマシだ」
「お、乙女系ってなんですかっ」
むうぅとぼくはふくれた。助けたのに、ありがとうくらい言えっ。
「おおっ、可愛いぞ少年。その顔。――って、お嬢さんがどっか行くぞ。蓮っ、捕まえてくれっ。オレもう、あんま動けねー」
さつきさんがフラフラした足どりで、歩きだしたところだった。
言われた高遠がすばやく、その前に立ちふさがる。
「おや?」
「えっ?」
驚くものを見て、ぼくと一条さんが同時に発する。
さつきさんが――。
さつきさんが、高遠の胸に飛び込んだのだ。
「うそ――」
ぼくは目を疑った。
|