25.悪霊襲来
建物がガタガタ揺れはじめた。
おも苦しい空気が、ぼくらを圧迫してくる。
こわい。怖すぎる。
「いっ、いつも――、高遠センセイってこんなの呼ぶんですかぁ」
情けないと思いつつも、声が震えるのは止められない。
「おうよっ。……いんや、今日のは一段とスゴイね。こりゃ少年のせいでもあるなー。心を乱しすぎデスよ、キミは……。――あのお嬢さんと合体してたから、同調しやすくなってんだよ。ほら、お嬢さんもあそこにいるから」
一条さんがしめした中空に、あの幽霊がいた。どんよりした目でこっちを見下ろしている。
「彼女が核になってる。わかるか?」
うなずきながら、悪意をもつ恐ろしいものの気配をさぐる。
ひとつ、ふたつ、みっつ……。
いびつな魂の悪意がこの場所を囲み、ようすを窺っている。
背筋をひやりとする恐怖がなであげる。
(スキをみせたら……)
あの悪意の腕で心をつかまれる。恐怖におとしいれられ、さいなまれ、壊されてしまう。
そして中心となっている彼女の視線の、執着の先には高遠がいる。
「あの人のこと、知ってるんでしょう?」
ぼくの後ろで高遠が、ちっと舌打ちをした。いい加減にしろ、と言いたげに。
「ちょっと、ねぇ、こんなことがあっても信じないとか言ってんですかっ」
高遠に睨まれて、つい喰ってかかったことを後悔した。
こっちも怖い。
「ただの地震だろ」
しれっと彼が言って、そっぽをむく。
なんだかそれが子供っぽくて、言い返す気力が萎えまくる。
「ほーら平常心が大事なんだから。とくに一也みたいなのはさ……」
のん気な声の主のからだが、また、光を出していた。
それがふんわりひろがって、暖かく、ぼくと高遠をつつみこんでいるのが感じられた。
守られている感覚がとても心地よくて、嬉しかった。
と。
目の端に、制服姿の女子がうつった。
「さつきさん……」
なんでいるんだろうと、考えるぼくの前で、彼女にむかって行く力が感じられた。
「さつきさん!!」
ぞっとした。
さつきさんが――。
ぼくは走り出した。
「さつきさん!!」
ぼくには、なにもできなかった。
止められなかった。
あの『彼女』が大気のなかに染みのようにひろがって、さつきさんを取り囲むこと。
彼女を包みこみ、ぴったりとその身体に膜のように張りついてしまうこと。
支配して、しまうこと――――。
さつきさんが、わらった。
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