19.ヤナギ、初体験…?
「あーいてぇ。急に痛くなってきた」
一条さんの腕の包帯が真っ赤に染まっていた。
「どーなったんだよっ。――ハツがぽわーって光ってた気がすんだけど」
零が床に転がっているお茶缶をひろって、近づいてきた。
「そーなのか? すげぇエネルギー持ってかれた気がするからなー。――なんとか弟クンからは抜けたから、大丈夫かなぁ。……どっか行ったし。……あーつかれた」
言いながら、ぼくの腕のビニールひもをはさみで切る。
ぼくは痺れた腕をこすった。
からだが重くて、眠たい。
「ヘイキ?」
零がおっかなびっくり覗きこんでくる。
「うん……眠い。ぼくも疲れたのかな。――あのさ、そんな怖かった?」
「そりゃもー、怖い怖い。怖いしエロいし。……喰われるかと思った。いろんな意味で」
「え、えろ……?」
意味がわからず目をしばたく。
と、自分のやってしまったことの記憶がよみがえった。
思い出したくない、感触まで、ありありと。
……顔から火が出る。穴があったら入りたい。
って、まさにいまの自分……、などと逃避気味に考える。
「大丈夫だって、エロさなら蓮が勝ってるから」
一条さんが意味不明の励ましを口にして、うなだれるぼくの頭をポンと叩く。
「……蓮……高遠、蓮……」
頭の中で、なにかもやもやするものが生じた。
それは、とても、とても大事なことで……。
「高遠がどうかした?」
零がきょとんとする。
目が覚めて、さっき見た夢の記憶を追いかけるような感じだった。
どんどん薄れていく気もするけれど、間違いなくそこにある夢。その記憶。
「あ……っ」
やっと、思い出すことができた。
「―― 一条さん、あの幽霊、またあの人のところに行きます」
「うん? まーそうかもね。蓮は悪霊吸引機だからねー」
「そーじゃなくて……」
うっ。
思わず顔をあげて、一条さんと目が合い、――石化した。
心臓がばくばく、踊りだした。
「―― 一也……イケナイ道に走んないでね……にーさん悲しいよ?」
零の白い目がいたたまれず、ぼくはまた顔を伏せる。
「だ、だって、あんなこと……」
恥ずかしくて死にそうだ。
「ほらーっ。ハツも赤くならないことーっ」
「あはは。そんなに恥ずかしがられるとねー。初ちゅーだったらわりぃなーっと。――ついね、エロさに負けてさー」
悪びれなく言う彼。
ぼくと零は、あ然とする。
「…………わざと?」 とぼく。
「…………わざと?」 と零。
わざと逃げなかったんだろうか。
「おっ、お前ら似てねぇって思ってたけど、やっぱ兄弟だねー」
けらけらと笑う一条さん。
零に首を絞められる彼を見て、死んじゃえ、と真剣に思った。
はじめて、だったのに……。
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