心霊少年 ヤナギ(16/37)PDFで表示縦書き表示RDF


心霊少年 ヤナギ
作:オトハソラ



15.ホラー少年 ヤナギ     


 チョコの唸り声がした。
 ほとんど吠えない、のんびり屋の犬のなのに、どうしたんだろう。
 ぼくは庭の方、玄関脇にある赤い屋根の犬小屋に近づいた。
 兄さんたちは話しがはずんでしまってて、気にも止めてない。
「チョコ……」
 鼻の上にシワをよせて、聞いたこともないような低い声を発している。
 ぼくが近づくと、さらに奥にあとじさる。
(なんだ、ぼくのせいか)
 ぼくが怖いんだ。
 ぼくが悪いんだ。
 なんだかおかしかった。
 庭の花壇の脇に、母の趣味のガーデニンググッズがまとめて置いてあった。
 バケツの中に、枝を切るハサミ、手袋、ジョウロに雑草を刈るための小さなカマ……。
 ぼくはその小さなカマを手にとった。
(コワインダネ。ラクニシテアゲル)
 チョコが唸り、ハァハァと息をする。
 ぐるぐると小屋の中で逃げ場を捜して回りはじめた。
「コワクナイヨ…」
 終わったらぼくも一緒に行くからね。
 こんなに痛くて苦しいのは、もうごめんだ――。

「一也っっ!!」
 なつかしい声がした。
(ダレダッケ)
「ヤナギ少年っ! おいやめろよ!」
 ぼくの手をつかむ誰かがいた。
 ジャマしないで、可哀相なチョコをラクにしてあげられない。
 かわいそうなぼくを殺してあげられない。
「一也! しっかりしろっ!」
 横から誰かが抱きついてきた。腕をまわして、ぼくの動きを封じようとする。
 腹がたった。
「あぶないからっ! ふりまわすなっ!」
(ジャマシナイデっ)
 短い叫び声。
「ハツ!」
 ぼくの顔になにかが跳んできた。
 思わず目を閉じると、金臭い、いやな臭いが鼻を刺した。
 ガラン。
 金属音がして、自分がそれをとり落としたことに気づいた。
 玄関灯のもとに照らされたそれは、赤く色づいていた。
 濡れた不快感に、手の甲で口から頬をぬぐう。
 べっとりと、そこが血に汚れた。
「一也……」
 呼ばれてぼくは顔をあげた。
 ぼくを抱きすくめるようにしてるのは、零、だった。
 そして。
 ポタポタと、腕から血を流して目の前に立っているのは、一条さん……。
「――ぼく……、ぼく、なにを……」
 腕が震えた。
 からだが震えた。
「―― 一也のせいじゃない」
 かすれた声で、零が囁くように言った。
 







作者小説一覧





ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう