10.極悪教師、確保
まだまだ陽射しがつよい夕方。
駐車場脇の公園の入り口から入ると、のびすぎた雑草と木の枝のあいだから、小学生がウロウロしてるグランドが見える。
グランドの手前に歩行者道があり、左へいくとバス道路。グランドを抜けると駅方面の出口に行ける。
左に曲がって歩行者道に入ると、駆けてる黒い背中が見えた。
「足はやーっ」
ヘタレ気味のヤナギがあごをつたった汗をぬぐう。
一条が右の方、噴水のある広場に入っていった。
私たちが追いついたのは、その噴水の前だった。
「うわぁ――」
ヤナギが絶句した。
噴水の前で一条と高遠がにらみあっていた。いや、睨んでるのは高遠のほうだけだけど。
見た目チャラい兄ちゃんと堅気のサラリーマン。
一見して高遠がカラまれてる感じだけど、すごい迫力のある目つきのせいで、逆に悪人の雰囲気。ヘンに目鼻立ちが整ってるせいで、なんというか、迫力倍増。目が離せない。
「あんなニラむことないじゃん」
そりゃ私だって、ロープで縛っただのって話は寒かったが。……やっぱ当然かな。
「もう憑かれてる……」
「へぇそう。どこいらヘンに?」
一度実物を見てみたいと、思わないでもないんだけど。
「あっ、さつきさん、あんまり近づかないほうがいいよぅっ」
止めつつもヤナギがついてくる。やっぱヤナギは子犬系だ。うん。
「ね、どこ?」
「うしろから、肩から首絞めるみたいに腕が回ってる。顔はない」
「ない??」
「んー見えないって感じかな」
近づくと予想どおり、高遠に睨まれてしまった。
「なんでお前らまでいるんだ。さっさと帰んなさい」
「そんな言い方すんなよー。可愛い生徒が心配してくれてんだろぉ、センセー」
一条には緊迫感のかけらもない。
「夜梛君は」 と高遠はヤナギに言う。「この変態とツルんでたのかい? 悪霊がどうしたとか、こいつとおんなじこと言ってたけど」
この人はたぶん、弱いものイジメを平気でする。ぜったいそうだ。
「きょっ、今日はじめて逢ったんです。――い、いま、のっかってますよっ」
案の定ヤナギはびびりまくる。
北極からの風が吹いてきた、気がした。高遠は笑顔なのに、最高に怖い。
「信じないって言っただろう――?」
「はい、ロープロープ」
一条がのん気に割ってはいった。
「いちおー臨時でも教師なんだから、生徒をいじめちゃいけませーん」
ものすごく高遠がイヤな顔をする。
「人の楽しみの邪魔するな」
「うーん蓮ってば、あいかわらず性格ねじ曲がってるねぃっ」
一条の目が優しく、極悪教師にそそがれた。人としての器が大きい、と言うべきか。やっぱただの変態?
「よけいなお世話だ」
「よけいなお世話ついでに」
と、ピキーン、と二人の間の空気が張り詰めた。
「やめろって」
強気の高遠がはじめて、うろたえたような気弱な表情をした。
キュン。
(いいかもぉ)
可愛いもの好きの私のハートがうずいたことに、気づいたようにヤナギがこっちを見た。
「恒例のヤツ、やるからねぇ。大人しくしてたら、すぐすむよん」
一条が嬉しそうに宣言した。
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