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第2楽章 謝罪の手紙
「今、思い出しても笑えるわ」

「あの生首親子サイコー傑作だったよね!お花で飾ったから、置物みたいだったし」

「ずーっとあのままにしといてくれたらいいのに!面白いから!」

ひどい話をしている。
まぁ、自分が提案したことなんだけど。

キオは、豆のさやを剥きながら、猟奇殺人鬼たちの会話に耳を傾けていた。

あの後、倒れていた人たちの生死を一通り確認し、キオたちはルベルコンティに戻った。

いつ警官隊がジルの屋敷に踏み込んでくるかと、しばらくは緊張続きだったが、そんな気配はいまだない。犯人を捜すなら、まず自分の名前が挙がるだろうとビクビクしていたのだが、カリギュラはなんの行動も起こしていないのだろうか。

あんなに執念深そうな人だったのに、不思議だ。


そういえばと、キオは気になっていたことを尋ねてみた。

「連れて来られたトルネがやけに静かだったんですけど……みなさん、なんかしました?」

「……いやぁ……」

「……別に……ねぇ?」

「なんで、みんな目をそらすんですか!?」

なんかやったんだ、この人たち。

「あんまりうるさいから、ジルが地下室に閉じ込めただけだよ」

リジーが、豆のさやをいじりながら、可愛く首をかしげる。

「ひょっとして、ジルに飼い殺されちゃった女の人たちの成れの果てを見ちゃったのかな」

さらに嬉しそうに続ける。

「壁に、剥がれた爪とかくっついてるし、血で『だれかたすけて』って書いてあったりするけど……でも、それだけであんなに静かになるわけないか」

「怖ぁあああッ!間違いなくそれが原因ですよ!どうりでトルネが、死んだ目をしてると思ったよ!ひどいじゃないですか、そんなとこに閉じ込めるなんて!」

冗談冗談と笑いながら、せっかく剥いた豆を、リジーは生で齧った。
まずかったのか、すぐに吐き出す。

「大丈夫だよ。キオになりかわってお詫びのお手紙出しといたから」

「……え」

「トラウマになるような親切なやつを、みんなで送っといたから」

「郵便屋さぁぁああああん!!」



キオの知らぬ間に、一通の手紙がカリギュラ邸に届いていた。
その手紙のせいで、息子が怯え、犯人捜しだけはしないでくれと領主に頼み込んでいたのである。

手紙の内容は、いたってシンプルなもの。

『トルネ・カリギュラ君へ

この前はごめんね

次は殺す

キオのオトモダチ一同より』


その年のカリギュラ誕生祭は、後々まで語り継がれることになる。

フランチャコルタの街に人心を惑わす2匹の悪魔が現れたとか、貴婦人の好んで読む恋愛物語から抜け出たような美男美女がやってきたとか、不死身の化け物がクマの仮装をして襲撃してきたとか、伝説の赤ずきんに鎌で全裸に剥かれた衛兵がいるらしいとか、カリギュラ領主の異名が「残酷領主」から「生首領主」に変わったとか。

だが、それはまた別のお話。


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