ひよたま
カズヨの部屋はお姉ちゃんのユカリと同じ部屋です。
カズヨは自分の机とユカリの机の間にあるカラーボックスの上に、もって帰った卵を置きました。
カラーボックスの上に置かれた卵は、プルプルと小さく揺れました。
カズヨは、このままではタマゴが落ちてしまいそうで心配になりました。
カズヨはキッチンに行って、こっそりと一番小さいざるを取ってきました。
小さいざるにテイッシュを敷いて卵をのせました。
テイッシュの上にのせられた卵は、前より大きくプルプルと動きました。
カズヨは卵が喜んでいるのだと、嬉しくなりました。
ユカリが学校から帰ってくると、卵をみつけてカズヨにいいました。
「カズちゃん、卵を勝手にもってきたの?」
「だって、寒そうだったのよ。」
「もしかしたら、親鳥が捜しているかもしれないよ。」
そう言われるとカズヨは心配になってきました。
「どうしよう、お姉ちゃん。」「一緒に返しに行きましょう。」お姉ちゃんのユカリはいいました。
「うん」カズヨは小さくうなずきました。
カズヨとユカリは、ざるにのせた卵をもって公園に行きました。
公園には、小さな子供たちとお母さんが遊んでいました。
このまま、卵を置いてきたら小さい子供たちにこわされてしまいそうです。
しかたなく、カズヨとユカリは卵をそのまま、もって帰り明日の朝に返すことにしました。
その夜、カズヨとユカリが寝ていると、カタカタ、カタカタと卵が音をたて始めました。
ユカリは、ビックリして目がさめました。
そして寝ているカズヨをおこしました。
「カズちゃん、おきて。」
何度おこしてもカズヨは、なかなかおきません。
しかたなく、ユカリは一人でベッドから起きだして、卵を見にいきました。
すると、卵から白い羽のようなものが右と左にひとつづつはえてきました。
ユカリは、カズヨゆすっておこしました。
「カズちゃん、卵から白い羽がはえてきたよ」
カズヨは寝ぼけながらユカリに聞きました。
「卵から羽?」
ユカリは、卵を指差して言いました。
「ほら、見てみてよ。」
そして、ふたりは、卵をのぞきこみました。
ふたりが見ている間に卵の白い羽は少しづつ大きくなりました。
そして、卵には小さくて青いふたつの目がうかんできました。それから、しばらくすると小さくて赤い口がうかんできました。
卵はパタパタと白い羽を動かし部屋の中を飛び回りました。
ふたりが卵だと思っていたものは、実は見たこともない生きものだったのです。
カズヨは卵をおいかけながら言いました。
「ひよこみたいな卵!〈ひよたま〉だ!」 |