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attacklast
 携帯電話を片手に、パソコンを操作する真冬の姿が見える。
 その様子を空から眺めていた僕は、真冬の傍らへと舞い降りた。
「うーん、一品ずつ料理載せろっていっても、あんまり画像あると重くなるんじゃないの?」
 そう言った真冬は相手の言葉に「うん、うん」と何度も頷いている。
「じゃ、それでやってみる。うん、ありがとうね郁ちゃん、忙しいのにー。…………え?小父様と叔母様?ああ、うん、今週末来てくれるって。うちのペンションの初のゲストだよー。どうせなら郁ちゃんも一緒にくればいいのに…………ああ、はいはい大宮さんと久しぶりに出かけるのね。じゃあ仕方がないなぁ。あ、もしかして二人でどっか旅行行くのー?…………………あははは、そうなんだ。だから尚更小父様達こっちに来させようとしたなー」
 真冬は僕の姿に気づくことなく、電話をしながら片手で器用にパソコンのマウスを移動させている。
「おー、椎名さんも?そっかそっかー、じゃあみんなで来るの楽しみにしてるから。ああ、小父様達のことなら心配ないからー。ちゃんともてなしさていただきますよー。…………うん、じゃあまたね。週末は楽しんで来てね。うん、うん、大丈夫だからー。うん、なんとかやってるしー。うん、じゃーね」
 話は終ったようだ。真冬は慣れた手つきで携帯電話を閉じた。
「あれ?クピド君いらっしゃい」
『やあ、真冬。なかなか忙しいそうだね』
「ううん、そうでもないよ。いつもの様にのんびりゆっくり人生楽しんでいるよ」
『そうだね、人生はのんびりゆっくり楽しむのが一番だよ。限りある生だからといって急いで生きたらなんにも記憶に残らなくなっちゃうものね』
「ふふ、そうだねー。今日はどうしたの?ここに来てからは恋愛相談の人なんていないんだけどー」
『まあね、ここはあまり人が来ないからね。今のところは。でも段々にまた人が寄ってくる場所になるよ、君のいる場所は』
 恋愛だけじゃなく、真冬には何か話を聞いてもらいたくなる人がいっぱいいるよ。そう僕は心の中で付けくわえた。
「そうかなー。まあ、そうなってもらわないと困るかー。一応仕事始めるんだしねー」
 僕の心の中で付け加えた内容を知る由もない真冬はのんびりと笑った。
『真冬、君のお陰で色んな人が幸せを見つけた様だよ。今日はそれを知らせに来たんだ』
「そうなのー?どうも大方失敗したような記憶があるんだけどー。むしろ怒らせた人が大半というかー」
 真冬は顎に手を当て顔をしかめた。
『その時は気付かなくてもね、人間はちゃんと後で気づいてやり直せる。だから大丈夫』
「そっかぁ、なら良かったー。クピド君から折角運命の赤い糸見えるようにして貰ったのに、何の役にも立てなくて悪いなぁと思っていたんだー」
 そうして真冬はしおれた花の様に項垂れた。暢気そうにしていても実は真冬は繊細だ。誰よりも人の顔色をうかがっているといっていいだろう。
『そんなことないよ。君にはいっぱい力を貰えた。だからそろそろ僕も帰るよ、かの国へ』
「え、クピド君帰っちゃうの?」
 驚いた真冬に僕はゆっくり頷いた。
『悪戯ばっかりして天界を追い出された僕だけど、そろそろ母上のお怒りがとけそうなんだ。それもこれも真冬、君のお陰だよ』
 微笑みながら背中の翼を広げる。僕の体がふわりと浮いた。
 見上げるような格好になりながら真冬は必死に僕に声をかける。
「また、また会えるよねー?」
『どうだろうか。赤い糸の縁はなくても僕と君とは何かでつながっているからね。うん、会えるかもしれないね』
 自分自身が大気に溶けて行くのがわかる。
「クピド君?消えちゃうの?」
 真冬からすれば僕の姿はどんどん見えなくなっているだろう。
『僕自身は消えない。君の前にいた僕の姿が消えるだけ…………』
 大気に溶けた僕は一気に天界を目指すのだから。目を閉じて大気の流れに身を任す。
 ふと、あることを思い出した。
『真冬、真冬、聞こえる?』
「え、うん。聞こえる。クピド君どこにいるの?もう見えないよ…………」
 僕の姿が見えないせいか、真冬の視線は虚空を彷徨っている。
『君に一つ言い忘れていたことがあったよ』
「何?」
『最後に世話になった君へのプレゼントがあったんだ』
「へ?プレゼント?」
『うん、君の赤い糸の相手。すっかり忘れてたよ。ごめんごめん』
「え?忘れるも何も私に赤い糸なんてないよー」
『ふふふ、当たり前だよ、自分自身の運命が見えたらつまらないでしょう。君のだけ見えないようにしていたんだ。さぁ、もうすぐ彼がくる………じゃあ、元気で真冬。いつかまた会おう』
「え?ええっ?なにそれークピド君それって誰ー?」
 慌てる真冬がとても面白い。どうしても気になったので僕は大気に溶けたまましばらく真冬の様子をもう少し見守ることにしよう。
 来客を知らせるチャイムが鳴る。真冬は慌てふためいている。
「だ、だっだっだっ、誰だろう。何だろう。実は押し売りとかってオチなのー?」
 まるで真冬を急かすかの様にもう一度チャイムが鳴り響く。
 真冬は大きく深呼吸をし、玄関へと向かう。
 

 そして、未来への扉を開けた――――――――




                                                  end
えーと、最終的にはファンタジーな終わり方になってしまいました。
1年ちょっとと時間はかかってしまいましたが、完結することが出来て本当に良かった。身の程知らずに恋愛ものなんて書くものじゃないですな。

今後しばらくは「セイレーンシリーズ」の方をメインに書いていく予定です。これについての番外編とかは特に予定してません。ま、要望もないか。ははははは。

誤字脱字多数でご迷惑をおかけしてますので、徐々に時間をみて訂正いれていきます。大変申し訳ございません。

最後までお付き合いいただきまして本当にありがとうございました。
別の作品で今後ともお付き合い頂ければ幸いです。


梨雪

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