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冬が終わらない王国

作者:時野洋輔
冬の童話祭2017 応募作品です。
 むかしむかし、あるところに、春・夏・秋・冬、それぞれの季節を司る女王様がおりました。
 それぞれの女王様たちは決められた期間、交替で塔に住むことになっていました。
 そうすることで、その国にその女王様の季節が訪れるのです。

 ところがある時、いつまで経っても冬が終わらなくなりました。
 春の女王が塔に訪れなかったのです。
 冬の女王様が塔に入ったままなのです。
 辺り一面雪に覆われ、このままではいずれ食べる物も尽きてしまいます。
 小麦や野菜がとれる畑も雪に覆われていますし、魚がとれる湖は凍っています。狩りをしようにも、あまりの寒さに動物たちは自分たちの巣の中から出てきません。

 そこで、困った王様はお触れを出しました。
 お城の前、多くの人々が集まる広場や大通りに看板を立てました。

【冬の女王を春の女王と交替させた者には好きな褒美を取らせよう。
 ただし、冬の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。
 季節を廻らせることを妨げてはならない】

 好きな褒美が貰える。
 それを聞いて、多くの人は我先にと塔を訪れました。
 それを聞いて、多くの人は春の女王を探すために旅に出ました。

 雪の積もる道に、無数の足あとがあらわれました。

 もちろん、塔の扉には鍵がかかっていて、誰も中に入ることはできません。
 鍵師の男が持ち前の技術で鍵開けに挑戦していましたが、特別な鍵が使われているらしく、開けることはできませんでした。
 そのため、皆はまず、冬の女王様に扉を開けてもらおうと考えます。
 ただし、全員で一度に何かをすれば、誰が褒美をもらったらいいのかわからないので、順番に並びます。国の兵たちが出てきて、皆を一列に並ぶように指示をしました。
 その列の周りでは、親たちと一緒に来た子供たちは雪で遊んでいました。

 そこから、皆の作戦がはじまったのです。

 吟遊詩人の男はその自慢の歌で冬の女王様に扉を開けてもらおうとしました
 ですが、その閉ざされた扉の向こうからは何の音も聞こえてきません。

 力自慢の男は、力づくで扉を開けようと素手で扉をおしました。
 ですが、冷えた扉は男の手を霜焼けにしただけでした。

 料理が得意な女はその自慢の料理の香りで冬の女王に扉を開けてもらおうとしました。
 ですが、その閉ざされた扉の向こうからは誰もやってきません。

 手に霜焼けを作った力自慢の男は、鉄のハンマーで塔を砕いて入ろうとしました。
 ですが、塔が崩れたら大変だと全員に取り押さえられました。

 誰も塔に入れません。誰も中に入れません。

 春の女王を探しにでかけた人たちが帰ってきました。
 ですが、彼らは春の女王をここには連れてきていませんでした。
 どこを探しても、見つからなかったのです。

 冬はさらに続きます。
 雪はさらに積もっていきます。
 湖の氷はさらに厚くなっていきます。
 ついには川まで凍ってしまいました。
 ついには子供も外で遊ばなくなりました。

 このまま冬が続いたら大変だと、国民たちはようやく気付きました。
 この国は森が多いため、燃料にする木は取れるのですが、それでも食料は限界があります。
 自分たちのために頑張りました。
 冬の女王を塔の中から出す方法が思いつかない人は全員、春の女王を探しにいきました。

 吟遊詩人の男は多くののぞ自慢の人たちと一緒に、喉がはちきれんばかりに歌いました。
 歌は様々です。クラシック、オペラ、軍歌、童謡など様々な歌をうたいました。中には騒音で聞くに堪えない歌もありました。その歌を聞いた冬の女王様が我慢できずに塔の中から出てくるのではないかとも思いました。
 ですが、冬の女王様は出てきません。
 そして、最後は全員顔を真っ赤にして酸欠で倒れてしまいました。

 料理が得意な女性たちは国中の食材を集め、いい香りの様々な料理を作りました。
 東の料理。西の料理。辛い料理から甘い料理、中には本当に食べられるのかという臭い料理まで様々です。そのあまりの臭さに冬の女王様が我慢できずに塔の中から出てくるのではないかとも思いました。
 ですが、冬の女王様は出てきません。
 そして、最後は国中の食料がなくなってしまいました。

 力自慢の男たちが集まって、やっぱり、扉をぶち壊そうとハンマーを振り上げました。
 それを止める人は、もう誰もいません。もう誰もなりふり構っていられません。
 万が一、塔が崩れたら冬の女王様も無事では済みません。最後通告を行いました。
 ですが、冬の女王様は出てきません。
 そして、男たちはハンマーを振り上げます。
 同時に空腹のあまりその場に倒れてしまいました。

 空腹で人々が倒れるのを見た王様は、このままでは国が滅びてしまうと思い、他国に救援を求めることにしました。
 王様が訪れることにしたのは隣の国です。
 実は、この隣の国とは、前の春から秋の間にかけて戦争をしていたのです。ですが、冬になると移動のための馬は痩せてしまい、道は雪で覆われてしまうため、冬の間だけは休戦することになりました。春になればもう一度戦争がはじまります。
 そんな状態の国に救援を求めるなんて、本来はあるはずのないことです。ですが、王様はなりふり構っていられませんでした。

 王様はお供の人と一緒に、自分が殺されるのも覚悟して隣の国に行きました。
 すると、国境の橋の上で、王様は思いもよらない人に出会ったのです。
 それは、隣の国の王様でした。隣の国の王様も、お供の兵たちをつれて、橋を渡ろうとしていたのです。
 王様は隣の王様を見て驚きました。寒いせいか、その顔はとても青白かったからです。
 ですが、隣の国の王様も、王様を見て驚いていました。なぜなら、ふくよかだったはずのその身体はすっかり痩せてしまっていて、骨と皮だけの状態だったからです。

 隣の国の王様は、長い間続く冬のせいで、薪にするための木がなくなってしまい困っていると言うのです。
 薪がなければ、火を使うことができず、国民の全員が凍えて死んでしまう。もう木でできていた王城も壊して薪にした。このままでは、国民は己の家をも壊して薪を作るかもしれないと言っていました。
 それを聞いた王様は、自分達の国には薪になる木はあるが、食料がなくて困っていると言いました。


 最初、お互いの王様は、戦争をしかけ、自分の国にないものを奪い取ろうかとも思いましたが、もう戦争をするだけの力が国にありません。
 そして、何より、目の前に自分と同じように困っている人がいるのに、その人と争おうという気持ちは湧きませんでした。
 二人の王様はそれぞれ話し合い、食べ物と薪にするための木材を交換することにして、握手をしました。

 その二人の手は、それぞれ冷たかったけれど、でも、何よりも温かいものでした。

 その時です。

 突如、いままでの凍てつくような冷たい風ではなく、暖かい風が吹いてきました。 
 どうしたことかと二人で顔を合わせていると、王様の部下の兵隊さんがやって言いました。

 二人の王様は、そこで春の女王が塔に訪れて冬の女王と交代したことを聞きました。

 そうです、春が訪れたのです。
 国が救われたのです。

 それはつまり、休戦の終了を意味します。
 戦争の休戦協定は、冬の間だけだと決めていたからです。
 春が来れば戦争がはじまります。

 二人の王様はお互いに握り合う手を見ました。

 そして、二人の王様は冬の女王と春の女王が交代しなかった理由を知りました。
 そして、二人の王様は冬の女王が春の女王と交代した理由を知りました。

 二人の王様は再び握手をしました。

 道の雪が少し溶けていました。
 とても暖かい春でした。
冬といえば、雪⇒雪どけ⇒冷戦終結
からのイメージです。

春といえば、ハルという愛称のヒロインが登場する、
他の人の400倍のスピードで成長する主人公の物語、
成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです
(モーニングスターブックスより刊行)
も連載していますので、ぜひそちらもご覧ください。

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