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ヴァルキュリアの恋人たち 作者:栗栖紗那
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10/10

[酒場]

「そういえば」
 思い出したように一条が声をあげた。
「なんだ?」
「なんだじゃないですよ、水鏡さん。せっかく初戦に勝ったんですから、お祝いやらないっすか?」
 何を言い出すかと思えば。だが、
「まあ、悪くないな。あんな結果だが、勝ちは勝ちだ」
「あんな結果って。一体どんな結果だったら満足するんです? 前々から噂に聞いてましたけど。どんな仕事にも満足してなさそうって」
 満足、か。
「とりあえず飲もうぜ」
 オーナーはロランドを勧誘しに、先ほど出て行ったばかりだ。戻ってくるのを待つのも面倒だし、戻ってきてからもう一度飲むのもありだろう。
 まあ、果たしてロランドが勧誘に応じるかはまったくもって不明なのだが。なにやら、オーナーは自身あり気だった。
「わかったっす」
 一条はタブレットを小脇に抱えてついてくる。
「そういえば、ここにきて外に出歩いた記憶がない。飲み屋なんかあるのか?」
「問題ないっすよ。飲み屋から賭場まで一通りの娯楽は揃ってるみたいっす。ま、さすがにおれたちがもともと居た場所にあったような、『裏通り』みたいな店はないっすけどね」
「『裏通り』、ね。皮肉な呼び名だよ」
 後ろ暗い過去ばかり持つような連中が集う暗黒街においてすら、『裏』と忌避されるような場所がある。ドラッグが日常と言わんばかりのジャンキーでさえ手を出さないようなモノが横行し、モラルやプライドなど存在しない、ただのごみ溜め。
 だが、そこで一番の被害にあうのは非力な無辜の民だ。ギャングやマフィアは無法者であると同時に秩序だ。だが、裏通りに巣食うのは欲望の為にすべてを壊しつくし、二度と這い上がれぬ汚泥に引きずり込む悪魔のような者たちだ。
 穹に限らず、ロランドたちが何度も根絶を目指すが、結局相手に出来るのはその場にいる人間のその場の欲望だ。

 ――欲望には限りがない。

 ――欲望は伝染する。

 ――欲望は被害者すら加害者にさせる。

「ホント、世界はクソったれだな」
「いきなりなんすか? そんな当たり前のことを」
「当たり前か。お前もたいがいだな」
「それこそ当たり前っす。まともなら、暗黒街にかかわろうとしない。それは水鏡さんの方がよくわかってんじゃないすか?」
「…………」
 穹は答えることが出来なかった。答えがわからないのではなく、言葉に出来ないのでもなく、言葉にすれば真実になってしまうとかそんなことでもなく、ただ単純に、言葉が出なかった。それだけのこと。
「そこ、左っす」
 ここまでの間、誰一人としてすれ違うこともなかったが、一条の言う通り、左へ曲がったとたん、急に人の気配が押し寄せてきた。
「…………」
「どうやら、一種の結界になってるらしくて、おれたちのチームの区画がそこまであって、他のチームは出入り出来ないらしいっす」
「大したカラクリだ」
 実際、ここの技術レベルは元いた場所をはるかに凌駕している。なぜそうなのか、などと考えても仕方がない。必要なのは理由ではない。使えるものは使う、それがポリシーだ。
 それにしても、雑多だ。
 受付に行くときにも目にしたが、ここにいる人間は割と自己主張が激しい。服装や髪型が個性的なのが多いせいで、逆に目立たないように思えるレベルだ。だが、そんな中にも、さらに“壊れた”恰好の連中がちらほらいる。
「案外浮かない、というか、馴染むもんだな」
 穹の視線の先を追った一条は苦笑いし、
「非日常が日常。常にお祭り騒ぎなんでしょうね」
「そんなものか」
 彼の先導で歩くが、意外と気分が高揚していることに気が付いた。血の気の多い話だが、血が騒ぐ以外でこうも気分が高まるのは久しぶりな気がする。
「ふふっ」
「なんすか? 突然笑って……」
「楽しいと、そう思ったからな」
「楽しいっすか? まあ、知的好奇心が騒がないわけじゃないっすから、気持ちはわかりますけど」
 あそこっす、と指さした先にはネオンのように見える立体的な投影画像があり、酒場であることを雄弁に語っていた。
「へいらっしゃい!」
 中へ入ると、威勢のいい声が出迎える。なんだか、商店街の八百屋とかが懐かしい感じだ。
 ちょっとした郷愁にかられていると、見覚えのある顔を見つけた。
「おい、あれって」
「ん? あ……」
 指さす先に気づいた一条もあっけにとられた顔になっていた。
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