P31 全面衝突〜前編〜
設定ぐちゃぐちゃで何だよ500mm榴弾砲ってとか思うかも知れませんが、お許しください。
陸上自衛隊CH-50オオトリの機内、エルフの村から前線へと送り込まれることになった陸自隊員、立川圭一2等陸尉は機内の中で愛銃の整備をしていた。後ろの窓から外を覗く、同じく編隊を組んだオオトリが3機ほど飛んでいる。
一通りの整備を終えた立川は席を立ち上がると、後部ハッチに向けて歩き出す。眼下の荒野では、すでに陸自機甲部隊と旧帝国軍と間で戦闘が勃発している。帝国軍はオーガーやトロールなどの巨大生物を投入してくるが、10式戦車中隊の連携攻撃の前には手も足も出ない。
「みな知ってると思うが、これから俺たちが降りるのは戦場だ。死と死が常に隣り合わせの場所だ。戦場では、今隣にいる仲間が死ぬかもしれない、しかし我々は立ち止まることはできない、各自、目標の達成を最優先に考えてくれ。そして自分の命を大切に」
「オウ!!」
立川の言葉に、隊員たちは気合の入った返事で返す。すると、今回の目標である港町ハイゼンが見えてくる。オオトリは町のほぼ中心の位置にホバリングする。ハッチからロープが垂らされ、隊員たちはロープを用いて懸垂降下する。
「周囲を警戒しろ!」
「敵11時方向!航空支援きます!」
地上管制官の隊員が指差すと、その方角から陸自の戦闘ヘリであるAH-64Dロングボウアパッチの編隊が飛来し、町から攻めてきた地竜の群れを迎撃する。
「隊長、赤妖犬が接近中の様です。迎撃準備を」
赤妖犬、全長二メートルはある巨大な赤い多頭犬である。性格は凶暴で、頭の数が多いほど凶暴という帝国軍きっての最強戦力である。驚異的な身体能力を有しているため、通常兵士の武器では威力不足になってしまう。
「機関銃陣地を構築する、障害物を集めて陣地を構築、爆薬をありったけもってこい!上のアパッチに支援を要請しろ」
立川の指示でテキパキと動き出した隊員たち。あっという間に十字形の機関銃陣地が出来上がった。
「くるぞぉ!」
「小銃擲弾は距離300!手榴弾は100mに接近してからだ!」
道端が赤く染まる、赤妖犬の群れだ。4匹という少ない数だが、それでもこの世界では400人の軍隊が必要になる。
「400!撃ち方始め!」
小隊20名の銃撃が群れに吸い込まれる様に撃ち込まれる。距離が近づくと、擲弾や手榴弾で応戦する。
「こちらグラディエーター1-1、支援を開始する」
30mm機関砲が唸る。小銃などの攻撃ではびくともしなかった赤妖犬だが。戦闘ヘリでは世界最強と呼ばれているアパッチの前にはただ突撃してミンチ肉にされるしかなかった。
『帝国新政府より通信があった。どうやら、旧帝国軍は市民を中央広場に集めて処刑するようだ、現状を維持し持って君の小隊は広場に向かってくれ。グラディエーター隊が先行する』
「了解」
立川の小隊は装備を再確認すると、町の中心部にある広場へと向かう。すると、町の中心部から高速飛翔体が発射された。飛翔体は編隊飛行していたグラディエーター隊に向かって行く。
「こちらグラディエーター!撃たれてる!退避だ!退避しろ!」
3機のアパッチはフレアを撒き散らし、空域から離脱する。どうやら、帝国軍は誘導式の魔法兵器を持っているらしく、航空戦力は迂闊に近づくことができない。
『こちらグラディエーター1-1、一旦退いて再度攻撃体制に入る、第一小隊、すまないが5分間自力で行動してくれ』
「こちら先行中の第一小隊、了解した」
『こちら司令部、対空魔法兵器のせいで航空部隊が近づけない、高空からの攻撃もシールドで受け付けない。地上部隊である第一小隊は魔法兵器の破壊、及び人質の解放を行え』
「こちら第一小隊、了解した」
場所は変わって上空2000m。AC-5と呼ばれる対地攻撃機はハイゼン上空を旋回していた。
「機長、下の部隊がシールドの破壊を行っています」
航空自衛隊、ワルキューレ射撃管制官の国吉一等空尉はモニターを操作して地上の様子を観察していた。
「撃つ上での問題点は?」
「問題は砲台と人質の近さですね、距離にして200m、120mm迫撃砲、300mm榴弾砲は論外ですね」
「ったく、あんな馬鹿でかいデカブツ作ったのだれだよ?イカレてるだろ」
「一発で半径200m更地にするんだぞ?フレシェットなら大損害だ」
「アメさんには914mm迫撃砲があったそうですよ?」
「ひぇー、背筋がゾクってするぜ……おっ?そろそろかな?」
『こちら地上部隊、シールドを発生させていた魔法使いを排除、人質を安全地帯まで移動させる。援護を』
「こちらワルキューレ、了解した。対地攻撃を行う。国吉、出番だ。味方に当てなければ自由に撃ってよし、自由射撃許可」
「了解です」
国吉の右手人差し指がトリガーを引き絞る。胴体左側に設置されていたGAU-8アヴェンジャーの銃身が回転し、30mm弾を地上に向けて撃ち始める。地上掃射の目的は、人質を追撃する旧帝国軍騎兵隊だ。
騎兵隊は突然の攻撃にも気づかず、自分がどうして死んだのかも理解できないほどの肉片と化した。それでも、空から攻撃を続けるAC-5ワルキューレは、例えるなら怒りの鉄槌を下す女神である。騎士たちは、その女神の怒りを買ってしまった愚民であろう。
『こちら地上部隊、支援に感謝する。人質の避難が完了した、緑のスモークで最重要攻撃ポイントを指定する』
「了解、スモーク展開後は速やかに退避せよ」
モニターを確認すると地上部隊の隊員が魔法砲にスモークを投げつけている。国吉は攻撃目標を暫定すると、火器管制ユニットを操作し、バルカン砲から300mm榴弾砲を選択する。
「給弾室!装填完了したか!?」
『もうすぐだ、よし。装填完了!』
「搭乗員は衝撃に備えろ、300mm榴弾砲発射用意……てぇ!」
尋常じゃないほど大きな爆発音、機体が左右に揺れ、搭乗員たちは体を支える。
砲弾は魔法砲に命中して破壊するどころか、魔法砲から半径200mの物体を消し去ってしまった。
「………………」
「……み、ミッションコンプリート、帰投する」
「もう使わん……」
『こ、こちら地上部隊……俺たちを殺す気か、寿命が縮まったよ』
「帰ったら一杯おごります、勘弁してください」
『小隊全員分な』
そうしてワルキューレは誰にも邪魔されないまま戦闘空域を離脱した。
まったく筆が進まん…




