P26 舞台裏の攻防
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帝都ラッセルの南門、そこは帝都の秩序が届ききっていないスラム街が乱立する無法地帯である。昼間には多種多様な人種が行き来する。
道端では奴隷がセリにかけられ、ハッパを咥えた売春婦たちが路地から手招きする。肉屋で売られている肉は何の肉か分からない上、挙げ句の果てに、床には切り落とされた人間の手が落ちている。
そんな無法地帯を歩く緑色の戦闘員たちがいた。彼らは陸上自衛隊、特殊作戦群チーム8、主に敵地に潜入し、情報収集や工作、暗殺なども引き受けるプロフェッショナルなチームだ。
「本当に大丈夫なんでしょうか隊長?」
「心配ない、すでに門番や駐屯兵は買収した。後は拠点を見つけるだけだ」
ブッシュハットを被った彼らは、緑の迷彩服を着ていて周りから目立つが、そんな事をもし軍などに報告してしまうと、どんな仕打ちを彼らから受けるか分からない。だから、ここでは見猿聞か猿言わ猿が暗黙の了解になっている。
「一丁目の角を左……か」
チーム8の隊長、新橋恭平1等陸尉が地図を見て首を傾げる。そこは古びた少し大きな酒場だった。
「いや、まさかな……」
そのまさか、自衛隊が拠点としている所はなぜが酒場だった。
「らっしゃい」
新橋以下5名が中に入る。すると、奥からチーム1の橋下2佐が手招きする。
「チーム8、新橋以下5名、15:00、本部からの命名によりチーム1に合流しました」
「ご苦労、早速報告を聞こうか」
「はい、帝都の南門から20km離れた地点に、強固な壁が存在します。気になったので調べたところ、その壁の内側には、多数のアンチ帝国派の人々が囚われており、強制収容所のように機能しています」
「なるほどな、中は見たか?」
「囚われている半数がアンチ議員、そしてもう半数が活動家です。そして、帝国軍が数え切れないほど駐屯してます」
「情報ありがとう、本部に通達する」
一方、イージニア駐屯地では潜入中のSからの報告を聞き、対策会議を行っていた。各戦闘団長、及び先日より赴任して来た最高責任者の伊藤英作陸将が長テーブルを囲んで座っていた。
「永田町は何と?」
「あらゆる手段を使って講和派を救出せよと」
「なるほど、現状の戦力で救出は可能か?」
「不可能はありません」
第一戦闘団及び、各戦闘団最高責任者の須藤1佐が胸を張って答える。
「作戦はどうする?」
「まずは帝都上空に無人偵察機QR-1Jクオックスを向かわせます。そして、空自の対艦武装のF-2による長距離ミサイル攻撃、もろくなった城壁を機甲科中心の第二戦闘団が戦車で突撃、第一戦闘団及び第四支援団が講和派を救出」
「時間を合わせて、空中機動部隊である第三戦闘団は帝都の要所を攻撃と言うところです」
その時、テーブル上の電話が鳴る。電話を受けた伊藤は神妙な顔つきになる。
「うん……あぁそうか…………みんな聞いてくれ、先ほど帝都侵入中のSチーム8から連絡が入った。講和派の皇太子様と皇女様が国家反逆罪で投獄された」
「では、第一空挺団に支援を要請し、お二人を救出しましょう」
作戦は着実に組み上げられ。結構は翌日の正午となった。
「総員起こし!総員起こし!」
各戦闘団陣地は慌ただしくなる。
「第一から第四戦闘団に出撃命令!各員、フル装備にて各自の持ち場につけ!」
空自基地では、先ほど無人偵察機クオックスが飛び立ち。2機のF-2支援戦闘機が、対艦ミサイルを吊り下げながら滑走路待機となる。一方、陸自基地では基地に駐屯する車両がほとんど出撃し、また陸自異世界派遣部隊で唯一の航空部隊は、空自と同じく全機滑走路待機となる。
作戦結構の日は近い。
 




