P24 遊撃部隊
記者「榊原2等陸尉、あなたは捕虜にした帝国兵に拷問をしたとの情報が入ってますが、それは定かですか⁉︎」
榊原「いえ、我々はしかるべき処置を施し情報を聞き出したまでです」
記者「それを拷問というのでは⁉︎」
榊原「我が国の法律では捕虜に対する明確な規定はありません。ゆえに、彼は我が国内で大量虐殺を起こした殺人犯でありますので、ハーグ条約での捕虜取り扱いには抵触しません」
こんな感じになるかな笑
情報部の榊原に呼ばれ、イージニア基地へ帰還して来た立川たち第一偵察隊は、森の奥に存在すると言われているエルフの村へ潜入するため、エルフの死体から拝借した衣装を着込み、森の中をひたすら歩いていた。なお、原とサーシャは基地に居残りだ。
「はは、こんなに歩いたのは候補生時代以来ですよ……」
そう言って自衛隊員らしくない弱音を吐くのは、キツネの煌こと、榊原煌本人である。
「煌、お前ジャカルタで何やってたんだ?」
「ジャカルタじゃなくてアフガンね。過激派の訓練でもこんな歩かなかったのに……」
「それより、なんで俺たちなんだ?潜入工作ならSに任せときゃいいだろ?」
「君たちが一番戦闘経験豊富だからね」
榊原が身を置く統幕2部と呼ばれる組織は、アメリカ人では入れない敵対勢力に潜入したり、工作員になったり、いわゆるスパイ的な役所である。諜報に向いてない国と言われて来た日本は、戦後より力を入れて組織を成長させ、今やアメリカのCIAやイギリスのM16、イスラエルのモサドや果てはロシアのFSBとも肩を並べるほどの実力がある。
2011年からすでに、世界各国に隊員を潜入させている。その働きは目を見張るもので、日本に対するテロなどを幾度となく阻止して来たりした。
「リィールさん、あとどのくらいですか?」
「もうすぐ見えてくる。あれだ」
リィールの視線の先には、丸太でできた外壁に囲まれた村落であった。外壁の高さは20mほどだ。
「頼もう‼︎」
「何者だ⁉︎」
見張り台の上からオトコエルフが問いかけてくる。警備は厳重で、辺りは弓を構えるエルフたちが現れ、物々しい雰囲気になった。
「リィールだ!役目を終えて帰って来た!」
「合言葉は⁉︎」
「○△%☆□◎!」
人間には聞き取れない様な声を出し、門番たちもそれを聞いて安心したかの様に頷く。すると、重厚なドアが開かれ、村へと入ることに成功する。
「リンゼンブルグのリィール・アゲファ・テラッセウです」
「良くぞ戻って来てくれたな、これで村も少しは帝国からの要求を縮小できる。大義じゃった、すぐに休みたまえ」
「長老、ありがとうございます」
長老と呼ばれた老人に言われたとおり、リンゼンブルグと呼ばれた襲撃グループに扮した1偵の隊員たちは、村の奥にある二階建ての建物へ向かう。
部屋に入った立川たちは、エルフ用の服を脱ぎ、自分達の戦闘服である迷彩に着替える。そして、持ち込んだ無線機を設置し、本部と連絡を取る。
「こちら1偵、本部応答願います」
『1偵、こちら本部。現在第1ヘリコプター団の航空隊が接近中、コールサインはメタルだ』
『こちらメタル1、そちらから航空誘導を頼みたい』
それを聞いた立川は、近くにあった二つの机をくっつけて、自衛隊で採用されているM24を伏せた状態で構える。その横には、観測用望遠鏡を覗いた榊原がいる。
「市川、どこにいる?」
『大きな納屋の横です』
スコープを覗いて2階から市川の率いる強襲班のいる場所を探す。立川は、帝国軍の兵舎へと続く一本道の脇にある納屋の横に隠れている強襲班を発見する。
「見つけた、そのまま進め」
『了解……隊長、前方に敵2名』
「分かった排除する」
サプレッサーを付けたM24から、7.62mm弾が音もなく発射される。弾は正確に通りを歩いていた帝国兵の頭を貫通する。頭を撃ち抜かれた帝国兵は後ろへと倒れるが、横に隠れていた市川と栗原が横道へと引きずる。
「進め」
『兵舎から1人、2階部分から外を見ています』
「下へ進め、ちゃんと受け止めろよ」
 
2人が真下へ移動したのを確認すると、躊躇なくトリガーを引く、撃たれた帝国兵は窓から落ちるが、下で2人がしっかりと受け止める。
『ポイントαに到着、航空誘導を開始します』
「よくやった」
遠くからプロペラ音が聞こえてくる。
疲れました、さようなら
 




