P22 帝国の憂鬱
日本政府による融和作戦が行われたイージニア帝国の帝都王宮では、皇帝のフィトュナス・ペルクナテスは苛立ちを覚えた。
唐突に、フィトュナスは会議室の名が机をドンと叩く。それにビクつくのは周りの官僚である。
「貴様ら、我が神聖なる帝都に蛮族を侵入させ、何の反撃も出来ぬままのこのこと帰らせた責任はどう取る?」
「陛下、彼の国ニホンは他の異世界の国と違い、侵略を目的としていません。彼らは紛争の原因となった当事者の捕縛を目的としています。これがニホンからの要求です」
帝国の重鎮、元老院のティラムがフィトュナスに紙を差し出す。
・帝国は日本に宣戦布告なしの奇襲攻撃した事実を認め、その賠償を負うこと
・帝国は国の最高位を召還し、日本政府と対等な交渉をするべし
・帝国は一連の日本に対する行動に公式に謝罪すること
・虐殺の当事者は日本によって正当に処罰されること
「ふむ……確かにニホンは侵略を目的としていない、しかしだな……」
フィトュナスは立ち上がり、紙をバラバラに破り去った。その顔には青筋が浮かび、怒りに狂っていた。しかし、議員たちは浮かない顔をしている。一部、主戦派はフィトュナスの声に同調しているが、講和派の議員たちは気まずそうな顔をする。彼らは日本の力を知っているからだ。
「奴らはこの儂を処罰するつもりらしい、ふざけるな!徹底抗戦だ!交渉の余地はない!」
フィトュナスは声を荒げ、高らかに宣言する。そして、「アリファを呼べ」と言うと、何処から現れたのか黒いフードを被った人物がフィトュナスの横に現れた。
「魔法院、一等魔法技師アリファ、陛下の御ん前に」
「アリファ、貴様にニホン軍基地の攻撃を命令する」
「了解いたしました」
アリファはそう言うと、ローブを広げて消え去った。アリファの退場で会議は終了し、議員たちは会議室を退出する。
「アーリア!」
皇位継承第二位のカラトナス・ペルクナテスが、実の妹で皇位継承第三位のアーリア・デベラ・ペルクナテスを呼び止める。
「どうしたのお兄さん?」
「お前は父上のことをどう思う?」
「どうって、全く事態を理解していないとしか言いようがありませんが」
「なら俺と手を組まないか?」
金髪青目のアーリアは、長い髪をサラッとたなびかせると、「良いですよお兄さん」と言って引き受けてくれた。
「なら、バレない様にここを出よう。そして、帝国とニホンの交渉を俺たちでやるんだ」
「分かりました。では行きましょう」
2人は帝都を離れ、行商馬車に乗せてもらい、ニホン軍が陣地を構築している東の村ラクトへと向かった。
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