P10 掃討作戦 壊滅
あるゲームの呼び名借りてます
一方その頃日本、夕方になった渋谷駅には第1戦闘団の増援である第2戦闘団が到着していた。中には110mm個人携帯対戦車弾を持った隊員たちもちらほらいる。しかし、一番の注目の的は、やはり顔をバラクラバで覆った隊員たちであった。
「す、すげぇ……あれがSか?」
「Sって初めてみたぜ……噂じゃ世界中の紛争地帯に派遣されたんだろ?」
自衛隊員たちが口々にそういうのも無理はない。S、正式名称は特殊作戦群である。情報は巧妙に隠蔽されており、同じ陸自隊員たちの前にも滅多に姿を現さない陸上自衛隊初の特殊部隊である。
そのため、部隊内外での憶測も激しい。噂ではイラク戦争の前線に派遣されただの、メキシコの麻薬カルテル排除に派遣されただの。全くもってそんな事実は存在しないのだが。
「S指揮官の橋本2佐です」
「第1戦闘団、団長の須藤1佐だ。橋本さんのSには、渋谷署の制圧を頼みたい」
須藤が改札の窓から渋谷署を指差す。渋谷署の周りには先ほど到着した第6戦車大隊の機動戦闘車や96式装輪装甲車が展開していた。
「敵はおよそ50名ほどで、その中で人外の怪異は10、強力な魔法を使う魔法使いが少なくとも1人いる。投降を促してるが『蛮族に降伏するほど落ちぶれてないわ!』だと。その後の攻撃で1名負傷」
「突入は試みましたか?」
「偵察部隊を編成して突入させたのだが、10名中5名が行方不明、3名が死体で、2名が狂って帰ってきた」
「狂って?」
「おそらく幻覚か幻聴の類だろう。そんな術を使って来るのは魔法使いしかいない」
「分かりました。では、我々はすぐに突入させていただきます」
橋本は部下である10人の隊員を連れて渋谷署に向かう。彼らの装備は主にM4カービンライフルであり、狙撃手はH&K PSG-1を担いでいた。
「スナイパーは駅屋上から援護、他は俺に着いて中に突入するぞ。全員耳栓とナイトビジョンを付けろ」
特戦群の隊員たちはヘルメットに付いている暗視装置を目元に降ろし、渋谷署の正面玄関に集結する。
「GO」
渋谷署の中では、帝国軍異世界派遣軍の総司令官であるハッサムは大いに焦っていた。顔からは見るからに追い込まれている汗をダラダラとかき。息は荒れている。それもそのはずだ、自軍はほぼ壊滅、残ったのは署内にいる近衛兵20人だけであるからだ。
「サーシャ!奴らをどうにかしろ!」
「指揮官どの、それは私でも難しいです」
サーシャと呼ばれた金髪の魔女は部下に窓の外を見るように指示する。すると、発砲音が響き、部下の頭がカボチャのように吹き飛ぶ。
「なっ!?」
首が吹き飛んだ死体が窓から落ち、全員が離れる。
『こちらアーチャー、敵一名射殺』
「セイバーだ、中の状況はどうか?」
『1人射殺したことで相当動揺している。捕縛対象は……そうだな、金と赤の装飾の士官服を着たおっさんと、金髪美女のみ。それ以外のゴミはお掃除して構わないだろう』
「セイバー了解。これより赤金のおじさまを最重要目標である聖杯、金髪のお姉さんを器と呼称する。照明を落とせ」
セイバー、もとい橋本1佐が手信号で合図すると、反対側で壁に張り付いていた隊員がマスターキーと呼ばれるソードオフ・ショットガンを持ち出すと錠前を射撃する。
錠前を破壊した後、署内の電気が消えたのを合図に、もう1人が扉を蹴破り中にスタングレネードを投げ込む。爆発後、橋本を先頭に突入する。
「ぎゃあ!?」
隊員たちは近衛兵たちを正確にヘッドショットで倒していく。そして、床にのたうち回る聖杯と器を確保する。
「クリア!」
「こちらランサー、聖杯を確保」
「何なのあんた達!離しなさい!」
「大人しくしろ!我々は陸上自衛隊だ!」
「器は……バーサーカーに任せればいいか」
聖杯と呼ばれた派遣軍司令官は長身の隊員に捕縛され、魔女はレスラーのような体格をした隊員に取り押さえられた。
この作戦で、渋谷区に出現した異世界派遣軍は壊滅。渋谷区外周には高さ40mの壁が設置され、陸上自衛隊によって封鎖された。
課題が終わらない……作者ピンチ!




