偶然
「すみません、これ落しましたよ」
「あっ・・ありがとうございます」
「いえ」
「あの御礼したいんですけど」
「いや、お礼なんて。」
「させてください、お願いします」
私はそこで成田英理という女性と出逢った。
俺は中学校教師の26歳の佐片直哉。
英理と出逢ったのは俺が初めて教師として学校に行く日であった。
俺は余裕を持って行こうとしていたのに色々と支度をしていたらいつの間にか時間が迫って行った。
急いで支度をして自転車をとばした。
信号で待っているときだった。
目の前を歩いていく小柄で綺麗な女性がいた。
そしてその女性は横断歩道のところで薄ピンク色のハンカチを落とした。
俺は急いで自転車を降りて、その女性に話しかけた。
「すみません、これ落しましたよ」
「あっ・・・ありがとうございます」
「いえ」
「あの御礼したいんですけど」
「いや、お礼なんて。」
「させてください、お願いします」
「あっ、本当に御礼とかいいんで」
「でも・・・」
「すみません、今、急ぎの用で・・・また」
「あっ・・」
俺は時計を見て、自転車に乗りとばした。
学校に着いたのは着任式の1時間前だった。