第四章
店の雰囲気は静かなものである。客が多いがそれでも静かだ。クリスマスツリーはかなり大きく当然ながら装飾もあるが何故かそれも大人しい。見ればツリーは本物のモミの木であるが別にそれが違和感があるわけではなかった。何故かそれもこの店の中に合っていた。
店の中も落ち着いている。モノトーンの様に落ち着いた色の中にあり椅子もテーブルも床もしっかりとした樫の木であった。それもまた実にドイツらしいものであった。流れて来る曲もよく聴けばドイツ語である。かなり本格的な店であると言えた。
「いいでしょ、このお店」
未来は光男の向かい側の席に座っている。そこから笑顔で彼に問うのだった。
「本格的で」
「そうだね。本当にドイツに来てるみたい」
「当然よ。だってここのオーナー本当にドイツ人なんだから」
「へえ」
光男はそれを聞いて意外といった声を出すのであった。
「そうだったんだ、本当に」
「そうよ。料理もそう」
今度は料理を指摘してきた。
「例えばね。これ」
ここでソーセージとジャーマンポテトが出て来た。同時にワインも。ワインは白であった。
「ワインだけれどね」
「ドイツのだよね」
「そうよ。確かこれは」
未来はボトルのラベルを見る。ドイツ語であるが何とか読みきったのであった。
「グラーハ=ヒンメルライヒ=シュペートレーゼ」
「長い名前だね」
「そうなの。とりあえず事前にネットで調べてこのお店のお勧めのワインを頼んだのだけれど」
「それがこれなんだ」
光男もそのグラーハ=ヒンメルライヒ=シュペートレーゼを見て言う。
「こくのある料理向きだから肉料理にもいけるわね」
「ビールだともっとよさそうだけれど今はね」
「そう、クリスマスだから」
そういうことであった。ドイツ料理でありしかも出て来ているのがソーセージにジャーマンポテトであるからここはビールといきたいがあえてワインとしたのはやはりクリスマスだからであった。二人も今日ばかりはかなりこだわっていた。
「折角だけれど」
「赤だともっとよかったかな」
「どういうわけか白が多いのよ」
未来は首を傾げさせて光男に答えるのだった。
「ドイツのワインって。何故かしらね」
「そうなんだ」
「それに甘口」
これについても首を傾げさせる。
「産地の関係だと思うけれどどうやらそうみたいなのよ」
「ふうん」
光男はそれを聞いて頷くだけだった。その間に二人のグラスにそれぞれワインが注がれる。注いでいるのは未来であった。
「まあ飲んでみましょう」
最初に光男のものに入れて次に自分のものに入れてから言うのだった。
「飲んでみないと」
「うん、それじゃあ」
「メリークリスマス」
二人はグラスを合わせた。そうしてまずは一杯飲む。飲んだワインは。思ったよりも美味かった。
「いいじゃない、これ」
「ええ」
二人は笑顔で頷き合う。
「甘くて飲みやすいし」
「そうよね、それに」
未来も言う。
「お料理にも合うし。何かどんどんいける感じ」
「本当にね」
二人はそれぞれソーセージとジャーマンポテトを食べながら言い合う。七面鳥も赤ワインもなかったがこれはこれでかなり満足のいくものであった。
そのままハンバーグが来てこれも食べて。その頃にはもう二人共一本奇麗に空けていた。かなり飲むのが早いと言えた。
「いいんじゃない、これって」
「そうだよね。次は何を頼んでいたっけ」
「アイスバインだけれど」
豚の足を煮たものである。今二人はザワークラフトを食べている。これもまた実に美味いものだ。
「それでいいわよね」
「いいよ。何かそれを食べてワインをもう一本ずつ飲んだら」
「もう満腹ね」
未来はワインで赤らんだ顔で笑った。
「でしょ、光男君も」
「未来ちゃんもだよね」
「後でケーキを食べたらね」
しかし未来はそれを忘れてはいなかった。クリスマスといえばワインにプレゼントにこれは欠かせない。七面鳥は他のもので代えられてもこの三つは駄目である。
「それで満腹よ」
「ケーキもあったんだ」
「それもいけるわよね」
未来はそう光男に尋ねるのだった。
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