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8 デートに邪魔者はつきものなのか…

今日の放課後、ビッチに出会う事は分かっていた。

だが、場所が違う。ゲームでは執務室前の廊下で会った筈だ。その事が分かっていたので、躱す目的もあって昨日の内に執務を終わらせ、あの場所から1番離れたこの中庭でデートを楽しんでいたというのに!

なんでここまで追いかけてくるんだよ! しかも、ゾロゾロと大人数で!!


俺は思わず、空気を読まずにやって来た4人ーーロバート、ダグラス、ヒューイ、ビッチーーを無表情で見やる。


俺のオアシスタイムを邪魔したんだ。潰してくれって事だよな?


自分でも、無表情の中に殺気が籠っていくのが解る。今の俺は、怒りのオーラを全身に纏っている事だろう。

ダグラスなんかはそれなりに付き合いが長いので、俺の不機嫌が分かり、かなり狼狽えているのだが、後の3人はなんとも思っていない様子。その事が、さらに俺の苛立ちを募らせる!


どうしてくれようか!?

今から、気合を入れてアンジェリカを口説くつもりだったというのに、ムードぶち壊しじゃねぇか!


やつらへの報復方法を、瞬時に何パターンも考え、頭の中で実行して行く。どの方法が一番効果があるのかを、吟味しているのだ。


自分でも凶悪な表情になってくるのが解る。

そんな俺の肩にそっと手が置かれた。ダニエルだ。

チラリと目線を遣ると、小さく首を振られる。……落ち着けって事、だな。


俺は一つ息をついて気持ちを落ち着かせると、何時もの笑顔を貼り付けて奴らに向けた。


「やあ。……珍しい組み合わせだね? ジェシカやエイプリルは一緒じゃないのかい?」


婚約者がいる奴らが、他の女に集ってんじゃねぇよ。

という嫌みを含ませた言葉にも、ロバートは全く動じない。「ああ、別行動だぜ」なんて爽やかに笑って答えている。

ヒューイは気まずそうにオレンジの瞳を伏せ顔を反らし、婚約者のいないダグラスはーー去年、病気で死んでしまったーー現状に改めて気づいた様子で目元を片手で覆い緑の髪をクシャリと掻いた。


「で、何か用があるのかな?」


内容は知っているが、あえて水を向けてやる。こんな茶番はサッサと終わらせて、俺はアンジェリカとイチャイチャしたい。


「ああ! ミシェルがお前達に礼を言いたいって言うから、皆で探してたんだ! さ、ミシェル!」


嬉々としてロバートが説明し、ビッチの背中を押して俺たちに近づけてくる。

背を押されて前に出たビッチは、両手を胸の前で組み顔を俯かせて上目遣いでこちらに視線を向け、「あ、あの……」何て言いながらモジモジと手を動かしている。

その仕草が、堪らなくウザイ。

用があるなら、さっさと喋ってくれないだろうか? そして、早く俺の視界から消えてくれ!


「……お礼?」

「はい! 昨日は、木から落ちたところを受け止めて頂いて、有難うございました!! お陰で怪我もせずに済みました! それから、突然降ってきたりなんかして、驚かせてすみませんでした!」


貼り付けたままの笑顔でビッチに聞いてやると、やたらとでかい声でそう言って俺に頭を下げた。俺、だけに!!

眉が寄りそうになる。それをグッと堪えると、ドンドン笑顔が黒くなってくる。


ゲームのカイルはこの謝罪で「面白い子だね」なんて言って好感度をあげてたけど、俺にとったら喧嘩を売ってるにも等しいぞ?

どうしてこの謝罪で好感度が上がるんだよ!? 物好きにも程があるだろう!


「…私への礼も謝罪も別にいらないよ。でも……、アンジェリカにはちゃんと謝罪して欲しい、かな?」


限界に近い精神力を振り絞って、優しい声と笑顔で言ってやる。


「あ!すみません!ーーーアンジェリカさん、昨日は大変失礼しました!お怪我とかされませんでしたか?」


今気付きましたってな感じで両手を口に当て、その後慌ててアンジェリカに謝罪する。

全ての動作がわざとらしく見える。

これは、俺が悪感情しか持ってないからなのか?


アンジェリカに目をやると、彼女もかなりの不快感を感じているのだろう。兄によく似た、真っ黒な笑顔を浮かべていた。


うん、そんな君も可愛いね。


一瞬で俺の苛立ちが解けた。

ホント、アンジェリカマジックだよな。


「私も、気にしていませんわ。怪我もありませんでしたし」

「よかった〜。ずっときにしてたんです!!」


ぱぁーって音が聞こえるような感じの笑顔全開で、ビッチが笑う。そしてその視線が、テーブルの上にある物に目を留めたのが解った。


「そのお花、とっても綺麗ですね……。良いなぁ」


”欲しい”という感情だだ漏れの物欲しそうな表情で、ビッチがアンジェリカに声をかける。


「ええ、綺麗でしょ? カイル様に頂いたのよ」


ビッチの感情には気づいていませんというふりで、アンジェリカは答えているが、よっぽど不快なんだろう。眉がほんの少しピクついている。

そして、こんな時に空気を読まないのは、やっぱりロバートだ。


「何本かあるんだから、1本分けてやってくれよ、アンジェリカ。な、良いだろう? カイル?」


良い訳がないだろう!

ある意味、ほんっとに外さない奴だな!?


アンジェリカも我慢が限界のようで、眉のピクつきが大きくなってきている。

俺も今の自分の笑顔は、見たくないな。すごい事になってそうだ。

でも、ここは俺が上手く納めないと、アンジェリカの嫌味が炸裂してしまう……。

俺は何度か呼吸を繰り返して、気持ちを落ち着けると、奴らに笑顔を向けたまま(引きつっていたかもしれんが)話かけた。


「それはできないよ。その花は私の彼女への気持ちだから、一本でも数が減ってしまえば意味が無いんだ……」

「そうなのか?」

「そうなんだよ。それに花なっていうのは、好きな人から贈られる方が、喜びも大きいんだぞ? だから、お前らが送ってやる方が喜ぶんじゃないか?」

「そうなのか!!」


ロバートは、やっぱり馬鹿だ……。

ミシェルに、「後で俺が同じ花を贈るよ」なんて言ってる。婚約者のいる男が、こんな意味深な花を、他の女に贈るなよ……。

しかも、婚約者の友人の前で……。

どれだけ馬鹿なんだよ!?


そっとアンジェリカの様子を伺うと、彼女は顔を真っ赤にして俯いていた。この様子だと、ロバートの馬鹿発言は聞こえてなさそうだな。

どうやら、苛立ちも収まった様で、眉のピクつきも消えているし。

花の持つ意味を理解してくれているから、さっきの俺の言葉で恥ずかしくなったのかな?

今日のアンジェリカと一緒にいる時の遭遇。ゲームでは最後にアンジェリカが嫌みを言うのだが……、この感じじゃ何も言えないだろう。

……ふむ。なら、俺が言っておくかな?


「ねえ、君たち。この学園の講義には礼儀作法があるだろう? あれは希望すれば時間外でも特別に受けられるんだぞ?」


礼儀知らずなお前らは、補講でも受けてマナーを叩き込んでもらえ!


俺の嫌味たっぷりな言葉に、ヒューイとダグラスは顔を真っ赤にした。

しかし、ロバートとビッチにはヤッパリ通じなかった様で、「だから? え、何急に?」って顔をされた。

……馬鹿って最強だよな。



4人が立ち去ってから、俺たちは気分直しも兼ねて中庭の散歩をしたんだが、俺は自分の精神修行が足りていない事を痛感し、滝に打たれたくなった。

それ位アンジェリカが可愛かったんだが……。

その様子は、俺だけの宝物なので教えない。

花の意味は

ピンクの薔薇…「可愛い人」「恋の誓い」

1本…「一目惚れ」

6本…「あなたに夢中」


ピンクのチューリップ…「誠実な愛」

かすみ草…「純潔」

の意味で使っています。

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