裏派遣。
そう呼ばれる職業がある。
裏派遣、俺のバイト先の事だ。
裏派遣、それはネットで展開される商売。
裏派遣、それは……光を拒んだ者の住みか。
ん?もう夜中の12時を過ぎたか……さて、そろそろだな。
俺はカーテンを閉めきり、電気のついていない真っ暗な部屋でパソコンのスイッチを入れた。
「仕事、いいのあるかな?」
裏派遣?なんだそりゃ。そう思った奴もいるよな。俺も初めて聞いた時はそうだった。
OK、今見せてやるよ。
カチカチ、マウスを操作しクリックしてる音だけが、俺のいる部屋の唯一の音源だ。
さてと……ほら、このサイトだ。このサイトで俺はバイトしてる。
『裏派遣へようこそ(Welcome!)』
トップページは全体的に明るい作りで、可愛いAAとカラフルな文字で飾られている。このサイトは一目みただけでは、“裏”がつく闇の商売とは到底思えないだろ?俺もそうだった。
『依頼する?』(;д;)コマッテルお
『依頼を探す?』(・∀・)任せとけお
さぁてと、こっからが面白いはずだぜ。俺は派遣屋だからな、依頼を探すの方をクリックするよ。
『掲示板へ行く』
『オークに参加する』
ほい、依頼を探すをクリックするとこんなのが出るんだ。掲示板は、まだ落札されていない依頼の一覧がある所。
オークの方は……よし、後で説明する。まずは依頼を見つけてからだ。
『○○区に住んでいる田黒マサシを殺してくれませんか?
依頼理由・OLをやっている妹が悪質なセクハラを受け、心に深い傷を負いました。警察に言うのは妹が嫌がるため、ここに依頼しました。
現在のこの依頼の報酬は40万です』
『喧嘩代理を募集してます。
依頼理由・△△通りの路上で、他校の奴と喧嘩を行う予定なのですが、ソイツはプロボクサーらしいのです。誰か俺の代わりにこの喧嘩をやってくれませんか?
現在のこの依頼の報酬は6万です』
『一日彼氏募集。
依頼理由・友達に見栄をはって彼氏がいるからWデートしない?なんて言ったら、なんと本当にやることに……どうしよう私彼氏なんて今まで生きてて一度も出来た事無いのに……カッコイイ人、じゃんじゃん来て下さい。
現在のこの依頼の報酬は10万です』
ホイホイ〜、まぁざっとこんなもんだね。殺人依頼から一日彼氏まで、幅広く取り扱ってるんだよね。さてと、皆は何か見てみたい依頼ある?なるべくリクエストに答えるよ。
え?殺人系の依頼を見てみたい?これはね〜……俺まだ高校生だしね。なるべくやりたくないのよ、リスクが高すぎ。
え?一人殺して40万貰えたら、かなりいい仕事じゃない、だって?確かに、40万貰えたら殺してるかもね。
だけど、オークがあるから……
また出てきたけどオークて何?
そうだね、そろそろ教えてあげようか。
オークてのはオークションの略の事だよ。よし、説明ついでに裏派遣の仕事の取り方もついでに教えちゃおうか。
裏派遣は依頼をオークションに賭けて、一番安い値段を出した派遣屋がその依頼を落札出来るっていう仕組みな訳。まぁ逆オークションてとこかな。
で、依頼を落札した派遣屋は絶対に依頼を受けないといけないの。キャンセルは不能。もしキャンセルしたら……組織の人間に暗殺されちゃうらしいね。詳しくは知らないけどさ。
ちなみに、依頼は1円が最低金額で、0円は無効なんだとさ。
ん、お前は殺人を行なった事があるかだって?君にはどう見えるんだい?
まぁ本当は自分のこなした依頼を他人に教える事はしたくないんだけど、今日は特別だ。教えちゃうよ!
実は……あります!
人を殺しましたぁ。
どんな内容の依頼だったかな?確か……
『レイプされました。
依頼理由・2ヶ月程前、私と彼女が夜の街を二人で歩いていると、突然数人の男の人が乱暴に私達に襲いかかり車に乗せられ、人気の無い森に連れ去られ、そこで彼女がレイプされてしまいました。そして彼女が妊娠している事が発覚しました。私はレイプした人達を許せません。犯人は手がかりだけしかありませんが、どうか見つけだして私の前で虐殺してくれませんか?
現在のこの依頼の報酬は15万です』
こんなんだったかな?
最終的に落札した時の額は2000円くらいだった。2000円で殺人なんて、普段なら俺だって受けたくは無い。
だけど、俺はレイプは許さない、絶対に。
嫌な過去があるから。
今も思い出したく無い。
あの時受けた傷は多分一生俺の心に大きな溝のような傷跡を残すだろう。
あの時、俺は彼女とデートをしていた。そして、暫く歩いて疲れていたので休憩するため、もう使われていない廃工場の中で、ひっそりと身をくっつけていた。そしたら、いきなり数人の野郎が襲いかかって来て、俺を押さえ付け、わざわざ俺に見せつけながら彼女を犯しやがった。
必死に抵抗し、俺に助けを求める彼女の図。
野郎に押さえられ、地面に屈伏したまま、その光景を涙目で見つめる俺の図。
そしてそんな俺と彼女の姿を大笑いしながら見ていた野郎共の図。
どれも一日たりとも俺の脳裏から離れた事は無い。
俺とのデートのためにオシャレして着てきてくれた服は、野郎の薄汚い手で乱暴に引き千切られ、まだ俺ですら見せて貰った事の無い彼女の下着姿に、野郎共は舐め回すように熱い視線を送り、卑猥な野次を浴びせる。
「嫌っ!やめて……助けて、助けて――」
彼女は泣き叫びながら、必死に俺の名前を呼んでいた。
でも俺は何も出来なくて……
野郎共はニヤニヤと笑いながら、床にうつ伏せに押さえ付けられてる俺の前に下着姿の彼女をこれみよがしに見せつけ、彼女の下着に手をかけた。
「やめろ……ヤメロ――」
叫んだ。喉がはち切れそうになるほどに大きな声で。意味はなかったけど……
そして野郎共は、押さえ付けられ、身動きの取れない彼女からゆっくりと下着を脱がしていく。
まずは上……野郎の一人が慣れた手付きで、彼女の女としての部分を隠す物のホックを外した。
その時野郎共が叫びだしたのを覚えてる。
「メッチャ綺麗じゃん」
あの時程この言葉がいやらしく、卑しく聞こえた時は無い。
そして、野郎は彼女の“下”にも手を出した。
「おやぁ〜彼氏に見せるのは初めてかなぁ?」
「ハハッ、おいお前こんなに泣き叫んでる彼女を見て、なに勃起してるんだよ」
その瞬間ハッ、とした。
――あぁ今なら言える。
あの時、泣き叫ぶ彼女の顔が、声が、野郎の手を拒むために、無意識にクネクネと動く彼女の体が……俺を勃たせた。
野郎の手が、ふっくらと膨らんだ彼女の“上”を揉みしだく。
野郎の一人が彼女の“下”に指を忍ばせた。
「ぁっ……い、嫌、嫌よやめて!」
俺の耳は聞き逃さない。
彼女の口から漏れた一瞬の甘い声を……
彼女は両手を前にある机に置いた状態で、尻を後ろに突き出した格好にされ、机から手を離したら俺を殺す。と野郎に脅された。
一人の男が尻を突き出した彼女の背後から、腰の辺りに手をそえた。
それは見たことがある光景だった。
友人と一緒にはしゃいで見たAV。
今の彼女の姿と、嬉しそうに男の“下”を“下”の口で呑み込む女優の姿が重なる。
ふと、彼女の背後にいる野郎を見るとズボンを脱いでいた。
そして……
「い、痛いぃ!もうやめて!許して、お願い……もうやめてぇ!」
男が激しく腰をストロークさせ、彼女の体と離れたりくっついたりした。
パンパンパン、そんな感じの音が彼女の悲鳴、野郎共の野次、に混じって聞こえてた。
少しして白い液体を垂らしながら男が彼女から離れた。そして泣いている彼女に、別の男が近寄り、同じ行為を行なった。
彼女の綺麗な太股から白い液体と血が垂れる。パンパンパン、ピストン運動と共に肌と肌が打ち付け合う音が鳴り響き、彼女の悲鳴と共鳴するかの様なリズムが完成する。
別の男が彼女の顔に太い物を擦り付けた。
野次が邪魔で聞こえなかったが、野郎が彼女に何かを囁いているのは分かった。
彼女は男の棒を……口に入れた。
その後も様々な野郎共の悪戯が彼女を襲った。
最終的に、野郎共は彼女に暴力をふるった。顔を殴り、腹を蹴り、さらには女性の大切な場所に異物を詰め込み――かん高い悲鳴が廃工場に響くが、野郎共は気にせず、面白がってその様子を写真で撮っていた。
最後は俺もボコボコにされ、廃工場には痣だらけの俺と、全裸にされ体中痣だらけで、股間から色々な物が流れ出る彼女の姿だけだった。
長く……なったな。
思い出せばホラ、鬱になる。
胸が苦しくなる。
彼女はあの時、妊娠した。
俺はどうしたかって?
俺は……
殺意を
解き放った。
――裏派遣。
人を殺す方法をインターネットで探していた時、偶然見つけたんだ。
最初は、依頼してみようと思った。だが俺の殺意は他人を通してでは伝わらない。
俺は――その時から裏派遣屋になった。
あの時彼女をレイプした野郎共には、野郎の母を拷問し、兄弟・姉妹を拷問し、精神が壊れた瞬間首を斬り落とした。
全員を……あの時いた野郎共全員を、絶望の淵に叩き落とした後で殺した。
あぁしなければ俺は自分の中で殺意が増大し、自らの心が殺意に食われていた様な気がする。
依頼主の気持ちは痛い程分かった。だから俺はほんの小さな手がかりから、依頼主の彼女をレイプした犯人を見つけだし、虐殺した。
指を一本ずつ斬り、目をえぐり、鼻を裂き、バラバラにしてから殺した。
うわぁ、ちょっと長くなっちゃったかな?あんまり鮮明に覚えてるもんで、語ると長くなっちゃうんだよね。
ま、だから俺はレイプを絶対に許さないよ。
さてと……依頼だった。
あれ、新しい依頼がある。
『警察官を殺して下さい。
依頼理由・私の父が先日無罪なのに、刑務所に入れられました。なにやら警察の上層部の人達が関わっていて、真実を隠蔽されてしまったのです。お願いです、どうか警察上層部、萩原孝一を殺して下さい。
現在のこの依頼の報酬は50万です』
ん?警察を殺す?報酬もいいし……この依頼、乗った!
よ〜し、じゃあオークを見せてあげるよ。
『オークに参加する』
をクリックして〜♪
『何でも屋;48万でどう?』
『灼眼の親父;いや、俺は40万!』
『高校生派遣屋;20万でやるよ』
オークに参加したのは三人。高校生派遣屋は俺だ。
『何でも屋;ちょwwwおまっ、警察の上層部殺すんだぞ。20万て……』
『灼眼の親父;世間知らずキタ----(゜∀゜)----!!!』
『高校生派遣屋;ハイハイ、じゃあ俺が落札しますよっと』
難無く落札成功。
どうだった?俺の手際は?
さぁて、じゃあ次が本番……ミッション・スタート!
あのオークから三日たった日の夜。俺は黒い軍手を装着し、顔の隠れるフードのあるパーカーを着て、近所のユニ○ロで買った安いジーパンという姿で、とある駐車場にいた。
もうターゲットの日程は調べてある。この日この時間この場所に来る事は勿論分かり刻んでやるよ」
俺はジーパンの中に隠した短剣を取り出し、鏡の様に綺麗に後ろの様子が映し出されている刃をペロリと舐めた。
助手席から偉そうな親父が出てきた。コイツはターゲットじゃないが、親父が出てきたのと同時に俺も飛び出し、慌てふためる親父を、異常な切味の短剣で一瞬にして首を斬り落とした。
「そぉらあっ!」
今度は車に飛び乗り軍手をした手で、フロントガラスに拳を叩きつけた。
「ひゃははははははは」
運転席にいる男に砕けたガラスの破片が突き刺さり、悲鳴を上げる。俺は運転席の男の頭を短剣で刺した。
俺の短剣は頭蓋骨を突き破り、運転手の男の頭を完全に貫いた。ズルッ、と激しい血しぶきと共に短剣を引き抜くが、短剣は刃溢れ一つしていない。
バン
「がっあ――」
後ろの席にいた二人のボディーガードの男と、いかにも悪そうな顔をした親父が車から降り、俺に発砲した。 車から落下し、転がる俺。
ぶっちゃけ……
「効かね〜!」
俺は勢い良く跳ね起き、二人いるうちの一人のボディーガードに短剣を投げつけた。短剣は見事にボディーガードの男の心臓に食い込み、奇声をあげながら死んだ。
「うはっ!」
呆気に取られているもう一人のボディーガードと、悪そうな顔をした親父、ターゲットの萩原孝一に突進し、ボディーガードの男に、パーカーの袖を引き裂き現れた鎌で首を斬り、拳の部分の中に小さな鉄の粉が入っている軍手でボディーガードを思い切り殴り付けた。
「ふぅ〜さぁ〜てと」
「ひ、ひぃ待ってくれ!」
萩原は地面に頭を付けて懇願する。
ん?なにやってんのコイツ。
土下座なんかして、イノチゴイてやつ?
ククク、何だよ……
馬鹿な奴だ――
お前、俺の目を見てるか?
あぁフードで隠れていて見えないか。
見せてやろうかなぁ?どうしようかなぁ。
やっぱお前には見せてやんない。
でも、君達には見せてあげようかな?
この、殺意に満ちた目を……
俺は……俺の拳が腫れ上がるまで萩原を殴り続けた。
死んでからも殴り続けた。
なんでそんな事をしたか?
恨みも無いのに……
ククク――
なんとなく―― |