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子どもの頃、自分が赤ちゃんになって生まれる前は一体何処に居たんだろうと、何気なく空を見上げては首を傾げていた頃がありました。それにしても赤ちゃん手可愛いものですね。
赤ちゃん生まれた
作:森田牧明


とおい、とおい空の、まだまだ遠い空の向こうに、まだだれひとりとして見た事も訪れたことのない子どもたちだけの星があった。
ほら、君がなにげなく夜空を仰いだとき、キラキラと輝く星座の中に一瞬ピカッと瞬く小さな火影ほかげを見たことや、観えないけれど今なにかが光ったと胸の中で感じたことがあるだろう。もしかしたら、それがその不思議な星、子どもの国かもしれない。
その星の森の木々には美味しい果物が実り、広い野原には色鮮やかな花が咲いていた。花や果物は一年中枯れることはなかった。草原の中央をゆったりと流れる川は深く澄み、川を泳ぐ魚たちの魚影ぎょえいは濃く、時折、川面に跳ねる魚のウロコが日に青く輝いていた。紺碧色こんぺきいろに染まる空には綿飴のような真っ白な雲がふんわりと浮かび、青空を背景に無数の鳥たちが羽を広げ、池のほとりではトンボやチョチョがのんびりと遊んでいた。もちろん、世界中の珍しい昆虫や動物もいた。
 この星には地球のように戦争や争いごとなど何ひとつなく春の日のような温かい光に包まれとても平和だった。
 だけど…ここには大きい子どもたちはひとりもいなかった。この星にいる子どもはみんな小さい子どもたちばかりだった。子どもたちは花を摘んだりトンボやチョウチョの背中に乗ったりして仲良く遊んでいた。子どもたちは花や木々、そして動物や昆虫、そして魚とも話すことができた。空を流れる雲とも話せた。
もちろん、この星には勉強や宿題なんかなかった。子どもたちは、ただ毎日のんびりゆったりと、子どもたちにとってとても大切なその日が来るのを待っていればそれで良かったのだ。毎日、毎日遊んでいて飽きないかって、ふっふっ、子どもたちは、毎日、毎日いくら遊んでいても決して飽きることなどないのさ。
 そお−君たちだけに内緒で教えてあげるけど、ここは…この星は君たちが一番大好きで大切なお母さんのお腹に入って赤ちゃんになるための準備と生まれる日を待っている子どもたちの星なんだ。
大人や大きな子どもはひとりも居ないいけど、この星の国には神様がいた。
どんな顔をした神様だって、ふっふ、ほら、君たちの好きなサンタクロースのおじさんに良く似ていて、顔に立派な髭を生やした神様だった。神様は子どもたちが大好きで、子どもたちひとりひとりが世界中で一番幸せになることいつも思っていた。
神様は地球で暮らす人々の事をすべて映して見ることの出来る不思議な機械を持っていた。 ちょうどテレビなようなものだった。この機械の画面には、この星の子どもたちのお母さんになるひととか、お父さん、それにお姉さんやお兄さん、そして、おばあちゃんやおじいちゃん、家族のことをぜんぶ観ることができた。
神様は今日ものんびりと大きな身体からだを『どっこらしょ』と椅子に埋め、あごの先に伸びた髭を手の先で撫でながらテーブルの上に置いた機械の画面を眺めていた。
「おや?」
髭を指先で摘んでいた神様の手がフッと止まりグビッと首を長く伸ばし画面に目を凝らした。
神様は「はて?」と首を傾げたまま、口の中でボソッと呟いた。
「う〜ん、こんどお母さんになるあの人、いつのまにかあんなにお腹が、あんなに大きくなっている」
神様は、画面を見つめながら指の先でトントンとテーブルの上を叩いていたが、テーブルの端に置かれたベルに手を伸ばし左右に振った。
 チリリィン。チリリィン。
ガラス細工のベルのは椅子に腰を下ろし画面を覗いている神様のいる部屋から、この星にいる戦争を無くすための神様や、病気を治す神様、そしてみんなが楽しく暮らすために知恵をだす神様など色々な役目を担当する神様たちの居る部屋に静かに流れた。
ベルのに気づいたのか、髭の立派な男の神様や長い髪をふんわりと肩まで伸ばした綺麗な女の神様たちが、椅子に腰を下ろし首をかしげた神様の周りに集まった。
 「ベルを鳴らし、どうしました?」
神様たちは腰をかがめ椅子に座った神様の顔を覗き込こんだ。神様たちは何でベルが鳴ったのか、その訳を知っていたが、みんな素知らぬ顔をしていた。神様たちは知っていた。神様たちにはそれぞれに役割があった。子供の生まれる大切な責任を担当している神様の楽しげな表情が自分のことのように嬉しかった。
 「なにかありましたか?」
 神様たちは満面に笑みを浮かべ椅子に座った神様の顔を覗いた。
「う〜ん、この見てごらん」
 神様は太い指先を画面に伸ばした。
「あれ!−」
「あら−!あのお母さん」
神様たちは驚いた。少し前、画面に映るお母さんを神様から教えられたときには、まだお腹が小さかったが、今はとても大きくて今にも元気な赤ちゃんが生まれてもいいほどだった。
 「これは急いで赤ちゃんになる子どもを、お母さんの元に送り届けなければいけませんね」
女の神様は心配そうに画面に顔を寄せた。
 画面を見つめる神様たちの口元目元が固く結ばれていた。
「うん」
椅子に腰を下ろしたまま、子供の誕生を見守る大切な役目を担当する神様は、あごの先の髭を忙しく指先で摘んだ。
「よし。それではさっそく、会議を始めるとしよう」
と、テーブルを囲む神様たちの顔を見渡し椅子に腰を深く下ろした。
 「ゴホン」
 神様は、ひとつ咳払いをして画面に目を移し、ゆっくりと口を開いた。
「あのとても優しそうなお母さん、あのお母さんには…どの子どもが一番良いかな?皆さんの意見を聞かせて下さい」
と、神様たちひとりひとりに首を振った。子どもの誕生を担当する神様。どの子どもが、こんど赤ちゃんになるのか最終決定は神様がするのですが、神様は色々な神様の意見を聞き子供のために最善を尽くしたかった。
「そうね−あのお母さんには…あの…あの目のパッチリした女の子、あの女の子が」
「いやいや、あのお母さんには…、あの元気な男の子の方が、顔も良く似ているし…」
「そうかな−?あの子のほうがとてもよく似ているとおもうけどな−」
神様たちは子供たちをひとりひとり目の中に思い浮かべた。
神様たちは、これから赤ちゃんになって生まれる子どもたちに世界中でいちばん幸せになってほしいのでみんな真剣だった。
神様たちは一生懸命に考えていたが、この星に居る子どもは誰も可愛くて良い子ばかりなので、なかなか決めることが出来なかった。 
神様たちが「うーん。うーん」と首を捻っている間にお母さんのお腹はだんだん大きくなって、今にも赤ちゃんの産声うぶごえが聞こえそうだった。 神様たちは困ってしまった。一体どの子が良いのか、神様たちは髭を撫でたり宙を見上げたりして困った。
「そうだ!子どもたちを呼んで、だれがあのお母さんの赤ちゃんなりたいのか自分で決めてもらうことにしょう」
背の高い神様がポンッと手を叩いた。
「うん、それがいい。さんせい賛成」
 なかなか赤ちゃんを決めることが出来ない神様たちは、背の高い神様の意見にほっと胸を撫で下ろし大きく頷いた。
「それはいい考えだ」
「さーあ、みんなおいで」
髪の長い女の神様は部屋の窓辺に寄り、外で遊ぶ子どもたちに手を振って部屋の中に入るように手招いた。
子どもたちは木に登ったり川で遊んだり、花や木々と話をしていましたが、神様の声気づき一斉に顔を上げた。部屋から身を乗り出し手を振る神様の顔を遠く見る子どもたちの顔がニコニコと笑んでいた。

 椅子に座った神様は、テーブルの周囲に集まった子供たちの顔を一人ひとり見渡しましホホッと頬を綻ばせた。
「さあー子どもたち、よく見てごらん」
神様はテーブルの上に乗る機械の画面に指を伸ばした。
とたん、子どもたちは歓声を挙げた。
「あ!」
「わ−きれい!」
はじけるような声だった。明るい声が部屋の中を転げ響いた。
子どもたちは毎日毎日元気に遊んでいましたが、ほんとうは少しだけ寂しかったのです。この 星には地球で暮らす子供たちのように優しいお母さんやお父さん、そして仲の良い家族が居なかったからだった。
「ねえ〜ねえ、かみさま。あの、お母さんとてもきれいね。いいな−」
「ほんと、やさしそうでいいな−」
「ほんとよね」
子どもたちの目は画面に釘付けだった。
子どもの一人が神様に顔を振った。
「ねえねえ―かみさま。あのお母の子どもにね。だれがなるの?」
画面に夢中だった子どもたちの顔が一斉に神様に向けられた。
「うん、それを今、ほかの神様たちと考えていたのだけれど…」
神様は少し困ったような顔をして子どもたちを見渡したが、頬をプルンと震わせ子供たちに訊いた。
「この星の子どもたちは誰も良い子だし…だれか−あのお母さんと、お父さんの赤ちゃんになりたい子。いないかな−」
 本当は子どもたちの顔を眺めた瞬間、赤ちゃんに成る子ども、だれが赤ちゃんになるのか、神様は、ちゃーんと分かっていたのですが、知らんぷりをしていました。
「やさしそうで…とてもきれいで…いいなーと、おもうけど、あまり…わたしににていないな〜」
 「僕にも、すこしだけにていないとおもう〜」
「わたし…もう少しいろいろなお母さんをみてみたいな〜それに…わたしを大切に、優しく育てくれるお母さんが、地球のどこかで、まっていてくれるようなきがする」
 子どもたちの表情はとても真剣です。いつもの、幼顔とは少しだけ違っていた。集まった子どもたちの目元口元が緊張しているのか少し強張っていた。
そうです。ここでは子どもたちが自分でお母さんを選んで、そしてお母さんのお腹かに入って赤ちゃんになることができるのでとても真剣だった。
 お母さんがなかなかみつからない子どもは、お母さんがみつかるまで、なん年もなん年も、ここ、子どもの星で待っていたが、心配はなかった。時が来れば、この星の子どもたちは全て赤ちゃんになって、お母さんから生まれることになっていた。ただ、少しだけ赤ちゃんになるのが遅いか早いだけだった。順番が遅くても慌てることはなかった。生まれるあかちゃんを一番大事に大切に、そして誰よりも可愛がってくれるお母さんとお父さん、家族が現れるまでジッとこの星で待っていればいつの日か、きっと赤ちゃんになって産声うぶごえを挙げることができることを子どもたちは知っていた。
子どもたちは何時の日か、お母さんにめぐり合える事を分かっていましたが、それでも、なるべく早くお母さんがみつかるように神様にお願いしていた。
みんなで画面を囲み見つめていると、
「あの〜」
と、画面を見つめ声を挙げる子どもたちの話しの輪の後ろから、両頬がサクラの花びらのように色づき目元を赤くした小柄な女の子が、子供たちを潜り抜け少し恥ずかしげな表情で俯き神様の正面しょうめんに立った。女の子は唇をかみ締め、顔を上げると神様の眼をジッと覗き込んだ。そのクリクリとした瞳が宝石のようにキラキラと煌いていた。
「うん?なんだい」
神様は女の子を前にしてニコッと笑んだ。
「あの〜あのね。わたちね、あの人のあかちゃんになりたいの」
と、消え入るような声でしたが、神様の心にははっきりと聞こえた。神様は胸の中で呟きました。
(そーおー自分で決めたの)
神様は心の中で驚きましたが、そんなことなど決して表面に出さなかった。
 いつもおとなしくて、こどもたちの後に隠れはにかんだような笑みを浮かべている小さな女の子でした。そんな女の子でしたが、いま、子どもたちの輪を潜り抜け一歩前に出てきっぱりと言ったのでした。サクラの花びらのように頬を染め目元はいつもの甘えたような幼い瞳ではなかった。口元をぎゅっと結び真っ直ぐに神様の目を覗いていた。その目がキラキラときらめいていた。
 「そお−きみ、あのお母さんの赤ちゃんになって生まれたいの…」
 神様の目元が笑み口元が綻んでいた。神様は大きく頷いた。
「…」
小さな女の子は顔を真っ赤に色づかせたまま、力強く首を折りました。
「うん…」
神様は女の子を見つめ頷いた。神様の思っていた通りだった。こんどあかちゃんになる子どものことを神様は全て知っていたのだったが、赤ちゃんになる子どもから自分の意思で手を上げて欲しかったのだった。お母さんとその家族を自分で選んで欲しかった。それが子どもにとって一番幸せなことだと知っていた。
神様は、画面に映るお母さんを覗き、そして女の子に首を回し、ふーっと顔を綻ばせた。女の子もお母さんも、見れば見るほど瓜二うりふたつ、きっとこの女の子も大きくなって大人になる頃には、このお母さんのように優しくて綺麗な人になることだろうと神様は思った。自然神様の顔に笑みが零れていた。
テーブルを囲み女の子の顔を見つめていた神様たちも互いの顔を見合わせニコニコと唇を綻ばせた。この星から赤ちゃんが育っていくことは神様たちにとって何よりの喜びだった。
椅子に座った神様は女の子の目を覗き込み、もう一度訊ました。
「ほんとうにあのお母さんがいいの」
「うん」
女の子はコクリと頷き大きな声で言った。
神様は「うん、うん」と何度もあごの先を上下した。
「わかりました。それでは、あのお母さんは女の子の赤ちゃんがいいのか、男の子のあかちゃんがいいのか、どちらが良いのか調べてみましょう。神様は、ベッドで横になるお母さんの姿を画面一杯に映しだした。ベッドの上でお母さんは、直ぐにも生まれそうな大きくなったお腹に両手をあてがい、ふうふうと荒い息遣いを繰り返していた。
ベットの傍らでは、お父さんと男の子がなにか話しをしていた。
「ねえ〜お父さん、こんどうまれてくるあかちゃん、ぼく女の子がいいな〜」 
「そうだね、健太は女のあかちゃんがいいか。そうだね、そうすれば…」
お父さんはベッドの端で心配そうな表情でお母さんを覗いている男の子の肩を抱き寄せた。
「健太。おまえにも妹ができて嬉しいよな〜」
男の子の名前は健太というようです。
頭をクリクリに短く切揃えた健太君は、今年で5歳になりました。
友達の家に遊びに行くと兄弟や姉妹が仲良く遊んでいるのを見て、とてもうらやましかったのです。
自分も一緒に遊べる妹や弟がとても欲しかったのです。
「うん、女の子、妹がいいな〜」
「だけど、なー健太。生まれてくる赤ちゃんが男の子でも女の子でも元気に生まれてくれば、どちらの赤ちゃんでも喜んで家族の一員として迎え、仲良く暮らせればそれで嬉しいよな」
健太は両頬を少し赤らめ大きく頷きました。そして、健太はベッドの上のお母さんの手に、そーおっと自分の手を重ねた。
べッドの周りには色とりどりの花が花瓶に飾られていました。お母さんはお腹を撫でとても息苦しそうだったが、その表情はとても幸せに満ちていた。白いレースのカーテン越しに射す柔らかい日差しに部屋の中は春のような甘い香りに包まれていた。
画面に首を伸ばし神様は満足そうな面持おももちで『うんうん』と何度も首を上下した。
「このお母さんとお父さんなら、そしてこの男の子、健太君なら。この家族ならきっと赤ちゃんを大切に、そして思いやりのある優しい女の子に育ててくれること間違いなし。決定、決定」
『うん』と大きく頷いた神様の鼻の頭が真っ赤に染まった。
その鼻を見た神様たちは、ほーっと胸を撫で下ろした。神様の鼻が赤くなったのは、今度生まれる赤ちゃんが決定したからだった。早く決めてあげないとベットの上でフウフウと荒い息を吐くお母さんのお腹が直ぐにもはち切れそうだった。
本当は、神様たちは子どもが無事に生まれることはすべて知っていましたが、いつも赤ちゃんが生まれるまで瞬間までハラハラドキドキでした。
と、いうのは、生まれる赤ちゃんが世界中で一番幸せになって欲しいので、生まれるギリギリまでお母さんとその家族のこと観察していたのだ。お母さんの身体のことや家族のことなどだった。生まれてから、赤ちゃんが少しでも不幸になるなんて神様にはとても我慢できなかった。
神様は世界中の子どもたちをいつも空の彼方から見守っていたのだった。

椅子に座った神様はニコニコと頬を綻ばせ周りに集まった神様たちを見渡した。
他の神様も頷いた。神様たちはとても嬉しかったのです。良い子をひとりでも多く、そしてなるべく早くお母さん、そして家族の元に届けることは、なによりもまして神様たちの嬉しい願いだった。
「わー!よかった」
「バンザイ!よかったわね」
子どもたちの顔が明るく輝いていた。何時いつの日か、自分たちも素敵なお母さんの赤ちゃんになれることを知っていたからだった。
神様は女の子の両頬を手のひらで優しく包んだ。暖かい神様の掌に女の子の心が深い湖の底にゆっくりと沈んでいくようだった。心がどんどんと落ち着き一片の不安もなかった。
「これから…君を、お母さんのお腹の内に送り届けるけどね。君が自分で決めて、自分で選んだお母さんとお父さん。それにその家族だから、何時までも仲良く暮らすのだよ。嬉しいときも、悲しいときもきっとあるはず。だけどね。そんな時には、家族でよく話し合い解決するようにね。きっとあの家族なら君を大切に育ててくれる。たくさん君の事を可愛がってくれる。そして」
神様はひとつ大きく息を吐き出すと女の子の目を真っ直ぐに見つめた。
「そして、何時の日にか、今度は君がお母さんになるときがくるだろう。その時まで、わし達、神様が君の赤ちゃんを、この子供の星で無事に育てて見守っていてあげるからね」
「うん、フッフ」
女の子はニコニコと頬を震わせました。
「いいな〜わたしもはやくやさしいお母さんがほしいな〜」
「僕も…」
「…わたしも」
今回、お母さんを決められなかった子どもたちは少しだけ寂しそうだったが、あと少しだけ、ここ子どもの星で待っていれば直ぐにお母さんが決まることを知っているので我慢できたのだった。
「そうだね、はやく君たちの家族がみつかるといいね、みんな、いい子なのですぐにみつかるからね」
と、神様は子どもたちの顔を見渡した。神様は子供たちが大好きなのです。早く子どもたちを優しい家族の元に届けて上げたかったが、子どもたちが本当に幸せになるための家族を見つけるのはとても難しかった。誰でも良いと言う訳にはいかない。
神様は責任重大なのです。
「うん」
「うん」
子どもたちたちは神様の眼を見つめコクリと頷いた。
「そうそう、こうしてはいられない、ほらもうすぐあかちゃんが生まれてしまう。早くこの子をお母さんのお腹に送ってあげなければ」
椅子に腰を下ろした神様の周りで画面を覗いていた神様が女の子の肩を抱き寄せた。
ベッドの上ではお母さんが大きなお腹を撫で、フウフウと粗い息遣いを繰り返していた。その 脇で家族が心配げな様子でお母さんの顔を覗いていた。
神様は少しだけ慌てたように女の子を胸の中に抱えた。
そして、
「それでは幸せになるのだよ」
と、空に向かいパチンと指の先を弾いた。すると、どこからか、真っ白く綿飴のような雲がふんわりと目の前に現れた。
 神様は女の子をヒョイと抱え雲に乗せました。すると雲は女の子を包んだままクルクルと回転し見る見る小さくなり、林檎りんごの実のほどになった。小さくなった雲は神様の掌でふわふわと浮いたまま神様の命令を待っていた。
「それじゃ−雲さんたのんだよ」
「まかせてください」
雲はにこっと微笑み、ポンッと一回神様の掌の上で跳ねた。跳ねた雲の端から煙のような細い雲が渦を巻いた。その雲の煙が暖かい日に包まれ虹色に染まった。
神様は思い切ったように唇の先を丸めると、その唇の先からふーっと長い息を吐き出した。すると雲は神様の掌からすーっと離れピーュと一目散、青空に飛んだ。
「さようなら−」 
「げんきでね」
「さようなら−、げんきなあかちゃんになってね」
雲を見送る子供たちは女の子に手を振り続けた。
雲に包まれた女の子も『さようなら−さようなら−』雲の間から大きく声をあげました。
神様は「しあわせになるのだよ」と呟いた。
 女の子を乗せた雲は一目散、お母さんに向かって跳ねるように青空の中を飛んだ。雲は、みるみる小さくなって煙のようにフッ−と青い空の中に溶けて消えた。
ちょうど、女の子を包んだ雲が神様たちや、子供たちの目の前から見えなくなったときだった。
ベッドの上で、
「オギャ−オギャ−」
女の子のあかちゃんが元気な産声を挙げました。
        おわり


人間に限らず生き物たちがノン気に暮らせる世界が有ればとても幸せですね。













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