超心理的青春(32/40)縦書き表示RDF


超心理的青春
作:ryouka



その32 四日目のコンタクト


 色々な出来事があった任務最終日が終わり、次の朝。僕は五時過ぎに起床した。
 何でかと言うと、昨日部屋に戻ってからすぐに布団に潜り、眠りについた為、携帯電話のめざましを前日の、つまり任務の為に早起きする時間帯にセットしたままだったからだ。すっかり忘れていたよ。
 それにしても久しぶりに眠りが浅かった。まさか鳥のさえずりで目が覚めるとは思ってもなかったよ。もちろんそのあとすぐに二度寝体制に入ったけど、思ったように寝付けなかった。
 洗面所の鏡に写った顔の目元にうっすらと黒いふちのような物が付いていた。あと二日も徹夜すればスラッガ−のような目元になるな。
 さて、何をしようかと、延々繰り返される近畿地方の天気予報を見つめながら考えた。
 やっぱ、することといえばあれしかないよな。昨日よりも少し時間が早いけど僕は制服に着替え、カバンを持ち、昨日思い残したことを片付けに向かった。
 昨日と時間が違ったからか、電車の乗り換えや、快速電車などスムーズに乗り換えれて思ったよりも三〇分ほど早く着いた。
 あと三〇分をどうやって時間つぶししようかと考えながら四番ホームに突っ立っていると、予想外の出来事が起きた。
 これは好都合なのだろうけどなぜこの時間に? 七時一九分ではなく。少し戸惑ったけど、僕はあの三日間と同じように彼女を尾行した。ただ一つ違うのは命令ではないということだ。
 彼女が昨日までと違ったところは時間だけではなくその行動もだった。いつもなら売店や自販機にすら寄り道しないのに、今日は駅に隣接されている地下街に向かって歩いていた。
 どういう風の吹き回しだろう。こんな早朝に開いている店なんてあるわけないのに一体何が目的なのだろうか。
 この三日間で身に付けた尾行の技術で少女を追って、少しでも尾行をしなければならなかった理由を見つけようと思っていたけど、こりゃいい感じで事が進みすぎてちょっと怖いくらいだ。
 この調子で少女を追っていくと白い粉やワシントンな取引などに遭遇できるかもしれない。
 上手く行きすぎている出来事に鼻歌でも口ずさみたくなるような上機嫌だった。が、やはり世の中は甘い物ではない。   
 地下街を歩き始めて一五分が過ぎた頃、僕は少女を見失った。
 少女は間違いなくトイレに入った。それは僕の目で確認したのだから間違いのないことだ。しかし、もうそろそろ一〇分経つぞ、女子ってこんなにトイレに時間がかかるのか? 仕方ないあと一〇分待つか。
 待ってども待てども少女はトイレから出てくることはなく、やっと見失ったことに気付いた。

 そして昼休み。僕は那実と崎野さんを連れて中庭に来ていた。
 「一体何の用やねん、昼休みは貴重やろ」
 どうせお前の昼休みは寝て過ごすと七割方決まっているくせに。
 「薙くん返事はもうちょっと待ってて昨日言ったやろ」
 その話しはしないでください、もう思い返させないでください。
 「訊きたいことがあるんや」この二人ならきっと知っているだろう。
 「僕の尾行相手は一体何者やねん、教えてくれ」
 崎野さんはあからさまに困った顔をして、ごまかすように僕からの視線を外し、那実は腕を組んでから少し考え、まぁいいか、と適当な物言いで話し始めた。
 「俺らもよくわからんけどあの子は一年の普通科三組の眞瀬明菜ませあきなっていう奴で、数学が学年トップっていうことしか知らんわ」
 学年トップ!? この学校でトップってことは日本でもトップクラスってことになるぞ。あのちんちくりんがそんな数学力を持っていたとはかなり意外だ。
 「それによく学校を遅刻したり早退したりするな」
 「僕が尾行してたときはきっちりと時間通り現れたで」
 どういうことだ? あの子は確か、尾行一日目は日直の仕事をするためにすごい急いで学校に行ってたじゃないか。そんな子が遅刻や早退ってなんかすごく矛盾してないか?
 「その顔は信じられへんって感じやな」
 那実は少し驚いた顔をして、正門の方を指差した。
 「ナイスタイミングやん、ほら眞瀬が遅刻してきたで」
 那実の指差す方向には、この四日間の登校中に追い続けた少女の姿があった。地下街で見失ってからあの子学校に行ってなかったんだ。だとするとあの子は何をしていたんだ? 朝から昼まで。
 「ホンマにあいつ何者か知らん? めっちゃ怪しくない?」
 「そうか? ただのサボり魔としか思われへんけどな」
 しばらく僕ら兄弟は少女を見つめていた。確かに見た目はただのチビなんだけど、何かすごく禍々まがまがしい出来事を持ちかけてきそうな雰囲気がするのだけど。
 「しゃあないな、俺がちょっと話しかけてくるわ」
 ちょっと待て、そんな大胆発言を僕は望んでいないぞ。と止めるまもなく、那実はなんの躊躇ちゅうちょもなく少女に近づいた。そしてその第一声が最悪だった。
 「こんなところに小学生が入ってきてはダメでしょう? お嬢ちゃんは年いくつなの、どう考えても一一歳か一二歳にしか見えないよ」
 おい、背の小さい奴に向かってそれは言っちゃダメだろ! 小学生はいいすぎだ、せめて中学生にしろ。
 「あんた誰? アホ? 制服見てわからんの? そんな観察力で今までよく生きれたな」
 そう言って立ち去るのかと思ったのだが、少女は那実の顔をじっと見つめ、「あんたどっかで見た気がするんやけど気のせい?」
 やばい、やっぱりこの四日間で顔くらいは覚えられていたか。どうするんだ那実? こんな危機を迎えたのはお前の好奇心という名の自業自得からだぞ。
 「いや、自分かわいいなと思って。電車っておっさんばっかりやろ? だから目の保養に」
させてもらったねん」 
 あいつアホか! そんなこと言って話しを聞いてくれる奴がどこにいる、ほら眞瀬さんも顔を赤くして伏目がちに歩いていくじゃないか、しかもすごい不機嫌そうだし。それに一番重要なのは眞瀬さんが那実を僕と勘違いしていることだ。
 本当に那実はアホですよね、なぁ崎野さん。と言おうと崎野さんの方へ振り向くと、彼女はうずくまり、両手で顔を覆って小さなうめき声を上げていた。もしかして那実の行動が笑いのツボに入ったのか? 僕はどこにも面白さを感じなかったんだけど。と思いたいところだけど実際は違うよな。
 「どうしたん? 崎野さん」訊かなくてもわかってるだろ? 例の発作だよアホ。
 崎野さんは酸素を多量に求めるように深く短い呼吸をしながら、「目を見せて」と言った。
 僕は少し戸惑いながらもうずくまる彼女に視線を合わせるために屈み見つめた。
 すると次第に呼吸の荒さがなくなっていき、崎野さんに付きまとっていた沈鬱感も消えていった。もう大丈夫かな? 
 僕は確認するためにあえてあの言葉を口にし、崎野さんがあの言葉を発することを願った。
 「崎野さんジュースいる?」
 「う、うん。ほなグレープフルーツお願い」
 よかった、もう大丈夫そうだ。そんな笑顔を向けられると果汁三〇%を一〇〇%にしたくなってくるじゃないか、って意味不明だよな。でもそれくらいうれしいんだよ、僕は。
 自販機に行くためにその場から離れた僕に、那実はついてきて、戸惑いながらでもうれしそうに言った。
 「まさか薬なしで発作を治すとは、お前もなかなか役に立つやないか、やっぱり気持ちが大事やろ」
 確かにそうだけど、あれも大事なんじゃないか? 那実、僕らに持っていない能力。奇跡の産物とでも言おうか?
 「そうやな。でも、まさか死にかけるとは思ってなかったよ」と今更のことだけど思い出してしまい、噴出して笑ってしまった。
 それにしてもさっきの場面のどこにトラウマが潜んでいたのだろう? まさか那実の発言や行動に何か問題でもあったのだろうか、やっぱりこいつは要注意人物だ。
 
 そして放課後、僕は正門をじっと見つめ、中庭の木陰で息を潜ませていた。
 そんな面倒なことをする理由は一つしかないだろう? 眞瀬明菜の尾行だ。やっぱりどう考えてもあの子は怪しい。それは昼休みで確信が持てた。明らかに崎野さんと那実は隠し事をしているようだった。先見である僕の感が外れることはずがないだろうと、こういうときだけは自分の超能力を信じてみた。
 その木陰にたたずみ三〇分が経過し、もしかして部活動しているのかもしれないと可能性を思いつき、僕は校内を周ろうとひとまずその場を離れようと体を校舎のほうに向けた。
 すると尾行初日と同じように颯爽と校舎から歩いてくる少女が見えた。あの身長、短い足をせわしなく動かす姿。眞瀬明菜しかいない。
 僕は待ってましたといわんばかりの気持ちを抑え、ばれないようにそっと陽の射すほうへ歩き出した。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう