第玖拾伍話 太陽が黄色い
お待たせしました。
色々ありましたが、なんとか3月中に一話UP出来ました。
4月からはもう少し早く出したいです。
永禄元(1558)年閏六月十四日
■相模国西郡小田原 小田原城 甲賀の美鈴
長四郎様のはしゃぎっぷりを見ると、どれほど家族が恋しかったのかが判るけど、あの様はなんかムカつくのよね。横で見ている千代様もイラッとしている様ですから、ここはやっぱり後でギャフンと言わせてやらなきゃだね。
まあ、私も十歳の時にお嬢様が生まれてから十四年に亘りお守りをしてきて、もう二十四、そろそろ行き遅れと言われる最中だしね。甲賀の里じゃ、阿修羅だ、鬼などと恐れられる日々、仕方が無いじゃ無いか、お転婆のお嬢様をお守りするには、それはそれは苦労したんだから。
お嬢様は望月の惣領姫、それならばと攫って傀儡にしようとする輩も出るわけで、其奴らを幾人潰したか判らないからね。中には私を懐柔してお嬢様をという輩も数限りなくいたから、自然と男に対する警戒心が研ぎ澄まされたからね。
そんな最中に、長四郎様の都での噂を聞いたお嬢様が面白がって考え無しに試合を仕掛けてあんな事で撃退されるとは傑作だったね。あれでお嬢様の鼻っ柱が折れてくれて、無謀な事をしなくなったから御屋形様も御喜びだったんだけど、まさかそのまま坂東へ来るとは思ってもみなかったよ。
役目はお嬢様が嫁いだ際の侍女頭だけれど、実際は御屋形様より与えられた甲賀衆の取り纏めだからね。出世も出世さ、何と言っても御屋形様が都の片隅で捨てられていた私を拾ってくれたんだからね。親は誰だか判らないし、唯一の手がかりは産着に飾られていた藤をあしらった鈿だけど、今更知ってもしょうが無いからね。
まあ、親も知らない捨て子だった私だから、御屋形様への恩だけで甲賀にもしがらみが無いし、お嬢様をからかうのが面白いから良いんだけどね、けれどもこうして命を張る仕事から解放されたからには人並みに子供ぐらいは欲しいからね。色々見てきたが、良い男には大概女がいるからね、私だって二十四だが鍛えているから並みの女に負けない体をしているつもりだけど、偉い方は厳格だったし、長四郎様のお付きは、あの馬鹿以外は靡いてこなかったからね。本当に男運がないというか、何とも言えないね。
御屋形様からは、あわよくば、お嬢様を長四郎様の側に押し込めと命じられたから、色々してきたが、なかなか上手く行かないし、まあ、あの姿を見れば、奥方二人にぞっこんなのが判るからね。
けれど、幾度と無く誘惑や夜這いをして撃退されはしたけど、別にお嬢様や私を嫌っている訳じゃない事は態度で判った。あれは、奥方に操を立てていたんだよね。
恐らくあの様子だと、今夜や明日は、それはもうお盛んになるだろうから、そこへお嬢様と二人で、忍び込んで参加するのも良いだろうね。
何と言っても、お嬢様も月のものは始まっているし、悪戯じゃ無く、男女の事に興味を持ち始めているからね。
うふふふ、なにはともあれ、夜が楽しみだね。
永禄元(1558)年閏六月十四日
■相模国西郡小田原 小田原城 望月千代女
なんとも、長四郎はだらしない感じじゃの、女子二人に会っただけであのはしゃぎようじゃ、しかし、一年以上も離れていたのであれば仕方が無いことかの。
しかし、長四郎は美鈴と妾の誘惑にも乗ってこなかった故に一刻は不能か、菫(同性愛者)かと思ったが、我慢していただけとは、妾の魅力が無いと心配したではないか。美鈴から昨夜聞いた父上からの話は驚いたが、長四郎ならば妾を大事にしてくれるで有ろうから嫁ぐのも吝かでは無いぞ。
無論、あの時のお返しはするが、先ずはあの怖そうな嫁に挨拶しておかねば成るまい。妾には判るのじゃ、あの大女が相当な猛者だと。下手をすれば大変な事に成るからの。
ん? 美鈴は何やら考え込んでいるようじゃな、今宵のことか、まあ美鈴は最早行き遅れじゃが、妾と一緒であれば長四郎も喰らうであろうから、心配は無用なのじゃ。それに父上が言うには美鈴はさる高貴なお方が双子で忌み子だからと加茂の河原に捨てられて危うく野犬に喰われるところを拾ってきたと聞いたが、何処まで本当か判らぬがな。
まあ、何処の生まれでも美鈴は美鈴じゃ、妾とズッと一緒にいるのじゃからな。
さて、長四郎の抱擁も終わったようじゃな、今のところは大人しく挨拶しておくかの。
まあ今宵が楽しみじゃ。
永禄元(1558)年閏六月十四日
■相模国西郡小田原 小田原城 野口金次郎
一年以上振りに奥方様と井伊の姫さま、そして初めてお会いになるお嬢様に舞い上がった殿は、御客人がいるにも関わらずそれはもう恥ずかしい事をしまくりまして、あれほど舞い上がった姿は見たことがありませんでした。
まあ、仕方が無いですけどね。井伊の姫様との事以来、殿は禁欲に努められてきましたから、一時は尼寺で公家の出家を薦められたりもしたのですが、頑として断りましたからね。まあ驚いたのは、尼寺で出家しながら糊口を凌ぐために公家の娘が春を売っていた事ですかね。まあ征東大将軍様に付いてきている女官の中にもチラホラあの時の公家尼が還俗して下向してきていますけど、それは言わぬが花ですよね。
それはさておき、凜殿との祝言も今月中には行われるからな、新居の準備をしなければ成らないな。んーどの様にするか、悪いが殿に相談させて貰うか、何と言っても殿は家の差配も旨いからな。
永禄元(1558)年閏六月十四日
■相模国西郡小田原 三田康秀屋敷 三田康秀
帰って来て、恥ずかしい事をしたけれども後悔はしていないぞ。仕方が無いじゃないか、一年以上も禁欲生活なんだぞ、普通の連中なら遊び女やらなんやらで、発散出来るが、病気も怖いし、第一妙や直虎さんへの操もあるからな。
それにしても、千代女と美鈴の誘惑に何度動きそうになった事か悪魔め!
しかし、誘惑には負けなかったからこそ、今日がある。
宮様一行やらの歓迎の宴は明日以降だから今日は自由時間だぞ。
速攻で家に来た人々の宿舎は刑部が差配してくれていたし、人数とか家族構成も伝えておいたから今日から生活出来るように諸道具も完備だからな。
千代女と舜ちゃんは、今日は客間で過ごして、明日以降に住む場所を決めるんだけどな。まあ、別宅だから今日は妙ちゃん、直虎さんと色々するんだい!
まあ、それより前に、妙ちゃん、直虎さんが作った夕食を千代女、舜ちゃんたちと囲んでご挨拶なんだが、千代女が姫さま姿で現れて普段と全く違う丁寧な挨拶をしたので唖然。
「望月千代女と申します。この度は父の命により三田様のお供をすることになりました。ふつつか者でございますが奥様方には宜しく御願い致します」
何やらやばい言い回しだが、二人ともニコニコしているだけで怒っていないから大丈夫だよな。
「千代女さん、私は三田康秀が妻の妙と申します」
「同じく、祐子だ宜しく、まあ堅いことは言わないで軽くいこうや」
直虎さんは相変わらずだな、まあこれで帰って来たって感覚が益々強くなったけど。
「ありがとうございます」
「本願寺顕如の妹、舜と申します。長四郎様には義理の兄上と成って頂き、有りがたく存じます」
舜ちゃんは、確りと挨拶してくれるし、ほのぼのするな。
「舜さん、妙です宜しくね。顕如様の妹君なら父上の義理の娘ですし、私の妹にもなりますので、我が家と思って過ごして下さいね」
「ありがとうございます」
「俺は、長四郎の側室の祐子だ、舜殿も宜しくな」
「はい、よろしくお願いいたします」
まあ、安心したわ、舜ちゃんはいざ知らず、千代女がなんかするんじゃないかと心配したが流石にそこまでしないか、まあいいや。
永禄元(1558)年閏六月十四日
■相模国西郡小田原 三田康秀屋敷 三田康秀
風呂だ、風呂だ、混浴だ!
ムサイ男たちとの混浴じゃ無く、妙と祐子さんとの混浴だぞ、刑部をはじめとするみんなが久々ですからと薦めてくれて、妙も祐子さんもOKしてくれたからこその混浴だ。嬉しいな、ルンルン言っちゃうよ。
風呂自体は、俺が散々考えた末に建築させた日本旅館式の畳敷きの風呂で夏の庭を見ながら入れるんだ。そこで脱衣所は一応男女別だが中で繋がっているという方式になっている。
早速、風呂へ入ると、湯気の中に二人の影があるわけだ。
「妙、祐子さん、お待たせ!」
「貴方」
「おう」
二人とも立ち上がって迎えてくれたので、全部丸見えです。いやー絶景かな絶景かな。鼻血が出そうだ。
「二人とも、良く家を守ってくれたね。ありがとう」
「いえいえ、刑部殿や皆のお蔭です」
「そうさ、俺じゃ壊すぐらいしか出来ないからな」
二人ともいじらしいな、益々好きになるよ。
「それでもありがとう」
「貴方ったら」
「暑い暑い」
それから一頻り洗いっこやいちゃこらしていたら、突然侵入者が。
「おー、凄い風呂だな」
「お嬢様、流石でございます」
聞き覚えのある声に入り口を見ると、何故か風が吹いて湯気が散ると、スッポンポンの千代女と美鈴が仁王立ちしていた。んー、凄いです。千代女はぺったんこだけど、美鈴さん、貴方はロケットですか・・・・・・
それは良いんだが、何故に入って来た。これじゃ奥さんたちに誤解されるんじゃ。
そう思っていたら俺らの痴態を見た千代女がいきなり言いやがった!
「長四郎様、酷いです。私をのけ者にするなんて、私は信濃への嫁入りを長四郎様のせいで破談になったので、父上から私は長四郎様に託すと言われたのに・・・・・・」
えっ、何も約束なんかしてないし婚約なんか知らなかったじゃ無いか、それに嫌がっていたのは千代女自身だろうが。
「ほう、それは初耳だな旦那、説明して貰おうかな」
隣りの直虎さんが虎狼の様な笑顔で俺を見ている。
「えーと、旦那様、側室を増やしていけなくは無いんですけど、御自分がお約束した事を破ってはいけませんから」
「そうだな、側室なら俺もいるし、増えても構わんが、放置は駄目だからな」
妙、直虎さん、誤解です。このままでは何もしてないのに側室になっちゃうよ。
「妙、祐子さん、誤解だから、何もしていないし」
俺の言葉を聞いた千代女がいきなり顔を手で覆って泣き始めた。
「長四郎様は酷いです、あの時私にあんな事をしたのに・・・・・・」
「お可愛そうな、お嬢様、お顔にあんな物やこんな物をかけられて穢れてしまったのに」
待てや! なに卑猥な言い方してるんじゃ!
ぞわっとする覇気に横を見ると、妙と直虎さんが凄い笑顔で見ているんだけど、怖い。
「長四郎様、一年以上も離れていたのですから仕方がありませんけど、幼き方に無体な行為はお止めに成った方が宜しいですわよ」
「んー、好き者だろうとしても、顔にかけるのは問題だな」
「違うから、千代女とは何もしてないから、信じて」
「酷い、お忘れですか、始めてお会いした時に顔に散々おかけになって、その後ぬるぬるした物まで顔を拭わせたくせに」
初めて会ったときに顔にかけたって唐辛子や胡椒じゃないか。それにぬるぬるって油だろうが!
「康秀様」
「旦那よ」
うわー、絶対零度のブリザードが吹きそうな精神状態。
「プップププ、やーい引っかかった」
「アハハハ」
「ゲラゲラ」
「フッ」
えーと何故にみんなが笑い出したのかな?
「何が?」
「いやー、傑作だわ」
「ですね」
「だから何?」
「長四郎様が、勝負とは言え、千代女さんのお顔に唐辛子や胡椒をかけるなど、女の顔に何をするのかと酷い事をしたので、話を聞いた私たちが、仕組んだんですよ」
「そう言う事。いやー見事に引っかかってくれて面白かったぜ」
「何だよ、酷いな」
アー驚いた、まあやったことはやったことだから仕方が無いが、怖い奥さんたちだよ。
「まあ、それで、千代女さんの御父上からの文があるんですが」
「なんて書いてあったんだい?」
「千代女をお願い致しますって有りましたよ」
「そこで、迎え入れることにしましたから」
「何でよ?」
側室増えたらまずいんじゃないか?
「しいて言えば、貴方の重要性ですね、その旨を父上、幻庵老が考慮して望月出雲守殿と話し合いの末に、嫁に貰うことにしたのです」
「まあ、嫁が手練れなら安心だからな」
また、押しかけ女房が増える訳かよ。なんか女難の相があるのかな?
「と言う訳で、望月千代女、三田康秀様の側としてお仕え致します」
「甲賀の美鈴、お嬢様のお付きとして、お仕え致します」
「じゃあ、上がって久々にやるかね」
「そうですね、みんなでやりましょう」
「いいね」
「ご相伴させて頂きます」
ちとまて、四人とも何言ってんじゃ! 5Pかよ、それにさらっと美鈴まで入ろうとしてるんじゃない!
「みんな、落ち着け、先ず話し合いをだな・・・・・・」
抗議も虚しく、直虎さんと美鈴に担がれて寝所へ連れ込まれた。
「今夜は眠れませんよ」
「さあ、バンバンやるぞ」
「初めてなので、よしなに」
「胸は自慢ですので」
「助けてくれー!」
永禄元(1558)年閏六月十五日
■相模国西郡小田原 三田康秀
あー太陽が黄色いが、空気は旨い。昨夜襲われて、朝まで散々絞られた。
そして寝所全体に色んな液体がチラホラと飛び散って独特の匂いが充満している。
あれから、大乱交状態で、妙、直虎さん、千代女、美鈴と5Pだよ、死ぬかと思った。
畜生、俺のプライドはズタボロじゃ、完全に尻に敷かれているぞ。
結果、みんなは艶々でなまめかしいったらありゃしない状態なのに対して、俺は痩せまくりじゃ、図らずもダイエット成功、まあ気持ちよかったから良いんだが・・・・・・
はぁ。これから四人を相手にしなきゃならない訳か、気が滅入ると言うか、責任重大と言うか、確りしないと駄目だな。
結局、美鈴も側室にしちゃえと、女連の満場一致で可決、俺の意見など通りませんでした。
まあ、くノ一だけあって、美鈴のテクニックも凄かったんで嬉しくないと言え無いけどね。
んーしかし、今の俺って、ギャルゲーの主人公みたいなハーレム体質なのかね。
嫌な予感しかしないよ、下手すりゃこれ以上増えるかも知れないし不安だ。
今後は行動に気を付けよう。
書籍版第三巻第二行終了しました。あとは第三行で見直すだけです。
今回は、とらのあな、メロンブックスさんでオマケです。
恐らく、馬揃え時の小平太の話と、馬揃えで活躍したエンターテナーの話になると思います。ウエーブは岩鶴丸の話になるかとおもいます。