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三田一族の意地を見よ  作者: 三田弾正
第伍章 坂東怒濤編
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第百十六話 家の妹はちょっとおかしい

済みません、完全に閑話になってます。


正式な続きは現在書いています。


暫しお待ち下さい。


後半に少々加筆しました。


永禄元(1558)年九月三日


■出羽国最上郡山形城 最上白寿(最上義光)


「若、今日はこの辺で宜しいでしょう」

「左様か、それにしても六韜、三略は為になる」

「面白くなってきましたかな?」


「うむ、和尚のお蔭で日に日に身になっている気がする」

「それはようございましたな」

「うむ」


和尚が寺に帰ると復習をしようと孫子を捲りはじめたが”ドタドタ“と騒がしい足音が聞こえると挨拶も無しに障子が開け放たれた。


「兄上、なにをしておるのじゃ?」

「お義か、何と言っても勉学が終わって休んでいた所だ」

現れたのは我が妹のお義だが、この妹がちょっとおかしい。


「兄上、何を惚けておる。直ぐに支度せねばならんぞ」

「はぁ? 支度とは何の支度だ?」

「とろいの、戦の支度に決まっておる」


はぁ? この妹は何を言っている?

「戦? 戦など何処とする気だ?」

「なんじゃ、兄上は遅いの」

妹は無い胸をめいっぱい張っている。


「遅いとはなんだ?」

「知らせを受けるが遅いのじゃ」

「知らせとは?」


「千載一遇の好機ぞ」

「好機とは?」

「全く、それでも最上の次期当主かの?」


この妹は・・・・・・

「エッヘン、妾は賢いから兄上に教えてやろうぞ、ちょっと前に伊達が負けて当主が死んだそうじゃ」

「それは知っている」

「何じゃ、それならば判るであろうに、当主が死んで跡継ぎが何処にいるか判らないから、爺(稙宗)と喧嘩が始まったそうじゃ」


お義の言う様に、先日常陸で伊達晴宗が敗死したうえに嫡男輝宗も行方が判らない状態だ。それにより、米沢では中野常陸介が晴宗三男を擁立し専横している。それに対して先々代稙宗は息子の実元を擁立して両者で睨み合いが続いている。


「それが何故戦に?」

「何とも情けないの。伊達が別れて喧嘩しているのだから、ここで米沢を取ることが出来るであろう」

妹の自慢げな顔が何とも・・・・・

「そう簡単に取れる訳がなかろうに」


「取れると思うぞよ。この負けが無ければ我が伊達の跡継ぎに嫁いで尻に敷いてやったものを、今なら爺に米沢を取ると言えば文句も来ぬわ」

確かに、そうだろうが、それを僅か十一の娘が言うことか?


「それでも、お義の言う様に成らないと思うぞ」

「助けがあればなんとかなろう、それに旨く行けば、どっかの家から兄上の嫁が来るだろうから、山分けすればいいのじゃ」


お義よ、十一の小娘が言うことか?

「それにじゃ、伊達の親父を倒したのは佐竹ではなく北條だと言うではないか、それに雷様の様な摩訶不思議な術を使う者がいるとか、彼の者を味方に付ければ父上も苦労せずに羽州探題としての力をえられるであろう」


「お義よ、その話は聞いたが、雷神の力を持つ者などこの世にいるわけが無いぞ、大方、佐竹や北條が大げさに宣伝でもしているのだろう」


「然に非ずじゃ、父上が調べさせたのじゃが、彼の者は実在するそうじゃ、それに神輿から雷神の槌とか言うものを発したそうじゃ、恐らくは仙術の類であろうと羽黒の山伏は言っておったぞ」

「父上から聞いたのか?」

「ではない、たまたま床下で猫を探している最中に聞こえたのじゃ」


この妹は、父上と宿老との話を盗み聞きしていたのか、お転婆にも程があるぞ。

「その様な事したら、スッパかと思われてしまうでは無いか」

「大丈夫なのだ。父上も山伏も猫の鳴き声をしたら『猫がいるの』と言っていたのじゃ」

それは父上が知ってて放置しているだけでは無いか、少しは父上に甘やかさないように意見しないと駄目かも知れぬな。


「下手をすれば胡乱な輩として床の上から刺されるから止めよ」

注意に対して妹は”ぶうぶう”と口を尖らせた。

「で、兄上、伊達の跡継ぎがいなくなったので、我は北條の雷神の使いを我が家に迎え入れるべきだと思うのじゃ」


「お義、その様な者がいたとして、北條が手放す筈が無かろう」

「それは、我の色気でイチコロじゃ」

妹よ何を言っているんだ!


「お義、お前言っている事が判っているのか?」

「無論じゃ、母上の侍女共が読んでおる源氏物語でも紫の上は十で世でも幼き妻を求める者が多いでは無いか、我など十一で丁度良いのじゃ」


いかん、幼い妹に悪影響与えている侍女共を折檻せねばならん。

「それは物語で、実際にはそれほど幼き嫁を求めはせぬぞ」

「大丈夫、我に任せるのじゃ」


このまま行ったら何をしでかすか判らない妹を取りあえず帰してから父上に相談だ。


永禄元(1558)年十月二日


■出羽国最上郡山形城 最上白寿(最上義光)


結局の所、伊達の内乱に関して当家は当面様子見となった。確かにあの時点で動けばどうにか出来たかも知れないが、羽州探題である最上家が火事場泥棒をしては羽州の国人衆に舐められかねないと言う事で、今は両派からの話を聞きつつ伊達家の影響力から脱した本家である大崎家などと連携し対処している最中だ。


まあ、自分は未だ十三であるから勉学の毎日だ。今日も和尚が寺に帰り復習をしようと孫子を捲りはじめた途端”ドタドタ“と騒がしい足音が聞こえると挨拶も無しに障子が開け放たれた。


「兄上、征東大将軍様より使者が来て、東国の安寧に協力して欲しいと言っていたぞ」

「お義、お前はまた盗み聞きしたのか?」


「そうでは無いぞ、使者殿が休んでいる所へ茶を運んで挨拶して話してきたのじゃ」

妹よ、無茶にも程があるぞ。

「なんと、馬鹿なことを、御使者に無礼を働いてはいないだろうな?」


「大丈夫じゃ。使者殿は六十越えのお爺様じゃ、我の質問に、にこやかに笑われて色々教えてくれたぞ」

「全く」

「なんの、使者殿は最上家の志をえらく賞めてくれて父上に出羽守の官位をくれるという話ぞ」


なんと、羽州探題だけでは無く出羽守があれば、寒河江は元より庄内など各地掌握の手立てとなるではないか、しかし解せぬ、何故縁もゆかりも無い我らに征東大将軍様がいきなり官位をくださるのか?

うむー、征東大将軍様と関東公方様は北條殿が後見なさっていると聞く、そうなると、佐竹との関係を考えれば、奥州平定の布石として尤も抵抗しそうな伊達家を当家に牽制させる気かも知れん。


うむー、ここは父上に話してみるか。それに然るべき者を鎌倉へ送り真意を問わねばならない。今の状態は兵法三十六計で言う遠交近攻であろう。さて、父上はどの程度判っておられるであろうか。


「兄上、父上が遠交近攻であろうと言っておったぞ」

なんと、父上も感づいておったか。

「そこで、伊豆守(志村光清)が御礼に鎌倉まで行くそうじゃ」


「なるほど、伊豆守であれば心配なかろう」

「で、父上と伊予守(氏家定直)伊豆守に頼んで我が一緒に行くことなったのじゃ!」

「なっ、お義、何を言った?!」


「兄上も耳が遠くなったのか? 我が伊豆守と一緒に鎌倉へ行って将軍様へご挨拶してくるのじゃ」

エッヘンと胸を張る妹だが、それで良いのかと思う。

「お義、遊びに行くのでは無いのだぞ」


「兄上も判らぬか、父上は当主、兄上は跡継ぎ、万寿は五つ(長瀞義保)、伊達は喧嘩中、将軍様は偉い。ならば伊豆守だけでは失礼であろうに、だからこそ我が行くのじゃ」

「お義、その事がどういう事か判っているのか?」


「判っているぞ、人質と言う事であろうに、けど心配無用じゃ、我の色気で北條の雷神の使いをイチコロにするのじゃ。そうすれば、万事旨く行くのじゃ!」

「お義・・・・・・」


「さてさて、準備をしないとじゃ、鎌倉や小田原は唐天竺から物が集まるそうじゃから、楽しみじゃ」



この話から数日後、征東大将軍様の御使者である唐橋有通殿と共に、伊豆守、お義が護衛の者たちと鎌倉へ旅立った。どうかお義が無事で帰ってきますように、羽黒三山の神々様、お義を御護り下され。



永禄元(1558)年十月十日


■出羽国置賜郡成島村 成島八幡宮 飯母呂小四郎(いぼろ こしろう)


御本城様、小太郎様、典厩様のご命令で、最上をはじめとする出羽各地の大名小名、国人衆に征東大将軍様の書状を届ける役を賜った唐橋の爺様と一緒に進んできたが、思うに奥羽では朝廷と幕府の権威は未だに慇懃と保たれているようだ。


爺さんが、征東大将軍様の書状を見せるだけで、皆が皆、土下座して敬うのだから、俺も形式上爺さんの下司として仕えているからそれはもう至れり尽くせりの接待攻めだ。こんなの初めてだが、我ら風魔は籠絡などはされないのだよ。まあ小太郎様、典厩様も仕事と思って楽しんでこいと言われたから楽しんでいるがね。


そんな中、最上家では当主に出羽守を与えたら家臣一同が感激したらしく三日三晩の宴が行われ、最後には将軍様への挨拶として、当主の娘が一緒に小田原まで来ると言うんだから驚いたね。

ただな、これを見ていると、この姫様、相当なじゃじゃ馬だぞ。とても十一には見えない鋭さだわ。



「義様、宜しいのですか?」

「うむ、丁度侍女が欲しかったし、文武両道の家臣としても期待できるのだからの」

「それはそうですが」


「片倉喜多と申したな」

「はい」

「つかぬ事を聞くが、その方、二十一になるのに嫁がぬのか?」


「そ、それは、私の母は私しか産めずに離縁されました。その為に父と義弟に負けぬように、文武を鍛えてきました。それ故に私の様な可愛げの無い者には近寄る者がおりませんし、元々連れ子にございます故、色々とございまして」

「なるほどの、ならば、一緒に坂東へ行ってみようぞ」


「宜しいのでしょうか?」

「良いのじゃ。大船に乗った気でいると良いぞ、何でも雷神の申し子殿は幼い子から年増まで来る者は拒まぬそうじゃから、喜多も頑張れば嫁げるぞ」


あーあ、俺らが面白可笑しく流した噂で典厩様も何でも喰い扱いか、まあ確かに、舜様は十二歳ぐらいだっけ? それに井伊の姫様は二十八ぐらいだよな。まあそれなら十一の姫に二十一の年増も充分な許容範囲だよね。


見た限り、二人ともいい女だし、まあ俺は興味ないけどね、俺は歩き巫女として拾ってきた幼女を育てて愛でると言う崇高な使命があるんだから。マジ誰からも後ろ指さされずに幼女を愛でる事が出来るようになったんだから、典厩様に感謝感激雨あられだよね。


しかっし不思議だね、典厩様に置賜へ行ったら成島村の八幡へ行って喜多と言う娘がいたら連れて来いって行っていたけど、本当にいるとはね。やっぱ典厩様は何か持っているかもね。


そうかも知れないな、何たって舜様と一緒に姪の笛様を囲っている訳だし、けど最高に羨ましいのは、数多ちゃんまで唾付けている事だよな。三歳児最高じゃん! 俺にくれないかな~♪


しかっし、そろそろ雪がちらつく季節だから、早めに小田原へ帰らないと爺さんと姫様じゃあ遭難するんじゃないかな?


中々感想を返せなくて済みません。


小四郎の言葉ですが、願望がダダ漏れです。

十歳過ぎは興味が無いので、二十三歳の直虎さんの年齢など完全に忘れて適当なのです。

舜、笛、数多は同居しているだけお手つきにしていると小四郎が妄想しているだけですので康秀は無実です。

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