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異世界に響け!私とあなたの二重奏-分かたれし魂の共鳴- 作者:夜野うさぎ

第三章 ランクCへの道のり

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【書き直し】フルール村の採取依頼

2015.10.14 書き直しに差し替え
「二人とも気をつけてな」
 ジュンの見送りに、私たちは、
「行ってくるわね」「行ってきます」
と返事をして、冒険者の憩い亭から出発した。

 私はいつものとおりワンピースにスパッツ姿。別に魔法の発動体がなくとも魔法が使えるけれど、いつもは発動体兼武器として白銀のハルバードを用いている。今はアイテムボックスの中だけれどね。
 となりを歩く竜人族のシエラは、いつもの鎧姿では無く籠手と脚絆グリーブのみ武装し、あとは革の服を着ている。いつも着ている家伝のエイシェントドラゴンメイルは私のアイテムボックスの中。
 隣をあるくシエラが、
「あともう少しでランクDですね」
と言ってきたので、「そうね。ようやくこれで追いつくわ」と言った。
 この街に来てからシエラと二人で、ジュンたちのランクに追いつこうと頑張っている。基本的にジュンたちはついてこないけどそれは私たちの実力を知っているからだ。
 今日は大蟹の月――七番目の月――の一二日。段々、夏が近づき朝から気温が上がっている。あまりにも暑いので、私とシエラのまわりだけ風魔法で温度調整をしている。
 今回の依頼はフルール村での討伐依頼だ。フルール村はアルの街の東にある村で依頼主は村長さんとなっている。
 昨年、このアルの街とフルール村との間の森に巨大な魔妖樹(エビルトレント)が現れ、無事に退治はできたんだけれど森は焼き払われてしまった。現在はエルフの力を借りながら植樹を行い森の復活を目指している。
 フルール村へと向かう定期馬車に乗ってアルの街の東門を出る。馬車から左側を見ると、焼き払われた森から1メートル半ぐらいに延びた小木がぴょこぴょこと生えている。それを横に見ながらのんびりと馬車に揺られること半日。夕方になる頃にようやくフルール村が見えてきた。
 これで何度目になるかな、この村に来たのは。穏やかな夕日に照らされたのどかな村の風景を見ながら、私たちはひとまず宿へと向かった。

 フルール村に宿は一軒しかない。必然と村に滞在している旅人や商人、冒険者が集まる。夜になると地方の話を聞きたがる村の人々も集まり、すごく賑やかになる。
 しかも、この宿には大きな露天風呂があるのだ。初めて入ったときはその気持ちよさと独特の雰囲気にすっかり魅了されてしまった。今はシエラと二人で行動しているけど、いつかみんなで入りたいわ。

「いらっしゃい! ノルンさん」
 宿に入ると、元気な女の子が出迎えてくれた。赤いエプロンをした一〇歳くらいのお下げの女の子で、宿の娘さんのアイリちゃんだ。もう何度かここに来ているから顔を覚えてくれたみたい。
「こんばんは。またお世話になるわ」
「はい! ありがとうございます」
 とりあえず三泊ほどお願いして、さっそく食堂のテーブルにシエラと二人で座る。
 夕食の定食をお願いして、追加でエールと豆料理をお願いしておく。そろそろお客さんが増える時間帯のようで、ちらほらと農作業帰りの人や冒険者が入ってきた。
「ノルンさん。今回の依頼ってサルサケの採取だったですよね」
 シエラが確認してくるとおり、今回の依頼は、この時期フルール村から南側の森の奥でとれる「サルサケ」という木の実の採取だ。直径三センチくらいの小さい赤い木の実で、その汁は甘く、アルコール分を若干含んでおり、猿のお酒という意味の名前がついている。
 森の奥まで行くということでギルドが認定したランクはE。それなりの危険はあると見て良いだろうが、まあ、私とシエラの実力ならばお散歩同然でしょう。……フェリシアもいるしね。
「そうよ。シエラ。詳しくは明日、ギルドで確認してから出発ね」
 ちょうどその時、アイリちゃんがエールと豆料理を持ってきた。
「は~い。お姉ちゃんたち、前にエールとお豆さん持ってきたよ」
 明るいアイリちゃんの声にきっと妹がいたらこんな感じなのかなって思う。んふふふ。可愛いよね。
 アイリちゃんにお礼を言ってシエラと乾杯する。
「じゃ、依頼の達成を祈って!」「がんばりましょう!」
 コツンとコップをあわせてエールをあおる。独特の酸味のある微発砲のエールを飲んで、「ぷは~」っとお決まりの息を吐く。シエラを見ると口元にエールの泡が(ひげ)のようにくっついていた。
 シエラが私を見てにっこり笑う。きっと私の口元にも泡がついているのだろう。
「あはは」「ははは」
 二人して笑い、アイリちゃんの持ってきてくれた枝豆をつまむ。
 テーブルの上に下りているフェリシアに手のひらに載せた豆を近づけて食べさせてやる。……こうしてみるとフェリシアも可愛いよね。
 シエラと、ジュンや仲間達のことを話しながら飲んでいると二人の男性が宿に入ってきた。
 二人とも金髪に身なりの良さそうな服装に装飾のある剣を腰に下げている。年は二十歳ぐらいかな? 顔は整っているけど私の好みじゃない。二人は宿泊の手続きを済ませて部屋のある二階へと上がっていった。
 どこぞの貴族? でもお伴らしきのはいない。こんな田舎の村にはちょっと珍しいというか、浮いているわね。
 そう思ったけど、すぐに二人のことは忘れて夕食のスープをすすった。
 窓から見える外はすでに暗くなっており、周りのテーブルも混んできて賑やかになってきた。
 急に食堂の一角から拍手が上がり、皆がそちらを注目するとフードをかぶった二十代半ばの女性が手にした竪琴(ハープ)をかき鳴らした。
「じゃ、一曲お聞き下さい」
と鈴の鳴るような綺麗な声でそういうと、再び拍手が起こる。
 リズミカルな旋律が流れたと思うと、急に緩やかなテンポとなり、

「北の国にコランダという流離(さすら)い人がいた。
 コランダはいくつもの山を越えた。
 コランダはいくつもの川を渡った。
 コランダはいくつもの村を通り過ぎた。
 コランダはいくつもの人と出会った。

 やがて南に行ったコランダは、一人の娘と出会った。
 娘はコランダにいった。
 ここから前の杉の森には、恐ろしい化け物がいる。その名はフンバ。
 一つ目のみにくく大きな巨体に、その叫び声は死をもたらし
 ふるう拳は大木をへし折り、叩きつける足に大地は割れる。
 コランダは言う。
 われ流離さすらい人。風のように吹き流れるのみ。
 娘の制止を振り切り、コランダはゆく。風のごとく杉の間を抜けていく。

 やがてフンバが現れた。
 コランダはフンバに言う。われ流離さすらい人。風のように吹き流れるのみ。
 フンバはコランダに言う。われは化け物。嵐のように吹きすさぶのみ。
 コランダは剣を抜き、フンバと戦う。
 フンバの死の息をくぐり抜け、とどろく拳をすり抜けて、
 見事、フンバの一つ目を、コランダは剣で突き刺した。
 フンバは叫び、暴れ出す。しかし、コランダの姿は見えず。
 木々はフンバの上に倒れ、やがてフンバは動きを止めた。
 動かぬフンバのその首を、コランダ、はねて持ち去った。
 残りしフンバの肉体は、森の肥料となったとさ。

 フンバを退治したコランダは、再び一人の娘に会う。
 フンバの首を見た娘。コランダを連れ城に行く。
 風のごとき流離さすらい人は、かくして騎士とかかえられ、
 娘を嫁に向かい入れ、土のごとく国を守ったとさ」

 美しい旋律が、一転して荒々しくかき鳴らされ、美しい声と共に最後は静かに余韻を残す。
 歌い終わると、僅かな静けさの後、酒場のみんなが拍手をする。
 きっとあの女性は吟遊詩人なのだろう。とすると、どこかの英雄の叙事詩なのだろうか。
 フェリシアが、
(すばらしい歌声ですね。セレンさんを思い出します)
と言うので、
(ふふふ。でも歌自体はセレンの方が上ね)
と笑いかけた。
 シエラの二人で感心していると、突然、男の人に話しかけられた。
「そこの美しいお二人さん。どうですか? 私どもと食事でもご一緒に」
その男の顔を見上げると、さっきチェックインした若い男性だった。もう一人の男が、
「あなた方のような美しい方には、我らのような高貴な者がふさわしい。さあ、一緒に食事をしましょう」
などと言い出した。自らの身分を鼻に掛けて何だか嫌な男達ね。さっとナビゲーションで見ると、

――ゴル・ゴーダ――
 種族:人族(男) 年齢:22歳
 職業:冒険者(C)
 称号:エストリア王国ゴーダ伯爵の4男、女たらし
 契約:エイミ(奴隷)、リタ(奴隷)、ケリー(奴隷)
 スキル:剣術3、交渉3、計算3、詐術4

――フーバ・ゴーダ――
 種族:人族(男) 年齢:20歳
 職業:冒険者(C)
 称号:エストリア王国ゴーダ伯爵の5男、女たらし
 契約:ナタリー(奴隷)、ホリー(奴隷)
 スキル:剣術3、交渉3、計算3、詐術4

 女性の奴隷ばかり契約しているじゃない! まさか気に入った女性を隷属化してるんじゃ……。
 確かなことは分からないけど、この人たちは危険だ。
 シエラは状況がよくわからないようでぽかんとしている。私は冷たく、
「残念ですが、私たちは二人ともすでに相手がおりますの。他を当たってください」
と言うと、一瞬、二人の眉がゆがんだがすぐに嫌らしいニヤニヤ顔となり、フーバが、
「それは残念ですが、ここではお二人だけの様子。無聊ぶりょうなぐさめにご一緒しましょう」
と言って、近くのテーブルを寄せてこようとした。
 私はすぐさま席を立ち、シエラの手を取ると、
「結構ですわ。もう戻るところでしたから。……では、ご機嫌よう」
といってその場から逃げるように離れた。後ろから絡みつくような嫌な視線を感じたが、一切振り返らずに部屋に向かった。
 途中で、アイリちゃんに、
「あの二人組に注意しなさいね。それと私たちの部屋は絶対に教えないで」
と告げ、階段をのぼって部屋に戻った。
 部屋に戻ってすぐに鍵を掛け、さらに侵入防止の結界を張る。シエラが、
「あの二人。危険なんですか?」
ときいてきた。ジュンと私の持つユニークスキル:ナビゲーションについて、みんなには「鑑定」スキルだと説明してある。だから私は具体的に、
「危険よ。伯爵家の4男、5男で女たらし。気に入った女性を奴隷化している可能性があるわ」
と言うと、シエラは「えっ」と驚き、
「最悪な男ですね」
と言って、ぶるっと身を震わせた。まったく、せっかくのフルール村の依頼だというのに嫌な奴らに目をつけられたものね。これでは安心して露天風呂にも入れないじゃないの!
 ちょっといらつくが仕方ない。シエラと二人で話し合って、その日はいつもどおり体を拭いて就寝した。
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