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異世界に響け!私とあなたの二重奏-分かたれし魂の共鳴- 作者:夜野うさぎ

間章 秘密結社

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疑惑

間章です。全4回の連作です。お楽しみいただけると幸いです。
 ――夜。
 人々が寝静まり街の通りが閑散とするころ、薄暗い路地から一人の男性が現れた。
 月の光に照らされたその顔には真っ白い仮面がつけられている。
 風もなく静寂のとばりがおりている通りを男は進み、また一つの路地へと入っていく。

 すると別の路地から今度は女性が現れた。その顔にはやはり白い仮面がつけられている。
 ほぼ同時に別の路地からは白髪の男性が、また別の路地からは腰の曲がった老婆が現れ同じ路地へと入っていく。
 彼らのつけた白い仮面が月の光を反射して、夜の闇に白く浮かび上がっていた。

――――。
 エストリア王国商業都市アル。
 早朝の冒険者ギルドは、多くの冒険者が押しかけて依頼を吟味していた。
 一日でもっとも忙しい時間帯で、受付嬢の二人も次々にやってくる冒険者の応対をてきぱきとこなしていた。
 もう何年も同じ時間帯に同じようなことをしている。二人にとっては意識せずとも半ば自動的に依頼の受注処理をこなしている。

 2時間ほどして、寝坊してきた冒険者たちも出払ってしまえば、一気にギルド内は閑散とする。
 受付嬢のエミリーは一仕事を終えたとばかりに背伸びをして、同僚の後輩マリナを労おうと振り向いた。
「ふわああぁぁぁ」
 ちょうどその時、マリナが大きな口を開けてあくびをした。
 それを見てエミリーは、
「ふふふ。お疲れ。ちょっと休憩したらお掃除しよっか」
と声をかけた。マリナは「はい」と返事をしながらも、またあくびをする。
 受付カウンターのイスに並んで座り、
「今日はやけに眠そうね。昨夜は遅かったの?」
とエミリーは聞くと、
「ちょっと考え事をしていたら寝付けなくなってしまったんですよ」
とマリナが言う。
「そう。掃除が終わったら奥の休憩室で少し仮眠とってきなさいよ」と言うと、マリナは微笑んで、
「悪いけど、そうさせて貰おうかな」
と言った。

 お昼ごろになると数日かけて依頼に行っていた連中がぼちぼちと帰ってくる。
「エミリーさん。無事に終わったぜ」
 その中でも最近腕を上げてきたチームが充実感を漂わせてやってきた。トーマスという剣士がリーダーの「草原を渡る風」だ。彼らは剣士2名、レンジャー1名、魔法使い2名というバランスの取れたチームで、今でこそランクDだがそろそろランクCの昇級試験を受けて良さそうだ。

 冒険者となっても大成する者は少ない。ある程度は昇級したりしても、魔獣や盗賊と戦った怪我で引退したり、旅先の農村で農家の跡取りにおさまったりして引退していく者も多い。腕を見込まれて貴族の警備員や騎士団に入れるなんて幸運の者もいる。
 そうしたなかで「草原を渡る風」は、とても冒険者になって一年ほどとは思えないスピードで依頼を達成し続けている。……そういえば去年、彼らと一緒に初心者の合宿を受けた三人の男女は、しばらく顔を見せなかったけれど、最近、また冒険者として活動を再開したようだわ。

「お帰り。トーマス。今回も無事に達成できたのね」
と声をかけると、「ああ!」といって元気な返事が返ってきた。
 今回は、西側の森に出没したオーク退治だ。目撃情報では4体ということでランクCの依頼かランクDの依頼か微妙なところだったが、チームでの討伐という条件でランクD依頼となった案件だった。こうして無事に達成して戻ってきたところを見ると、すでにランクCの実力はあると見て良さそうだ。ギルドとしても、あの森にはランクEやFの冒険者も行くので緊急性が高かったから助かった。

 達成の手続きと報酬の準備をしていると、彼等のメンバーの一人、犬人族の女性セレスが「そういえば」といって話しかけてきた。この子はがさつなんだけど、よく私のことを「あねさん」と呼んでくる。

「姉さんは知ってます? ……なんでも夜中に白い仮面をつけた人がどこかで集会をしているってうわさ
「えっ? 知らないわ。ごく最近なのかしら?」
うわさですよ。うわさ。ここ1ヶ月くらいですかねぇ」
 夜中に集会? 白い仮面? ……それは怪しいわね。サブマスターのアリスさんの耳に入れておいた方がいいだろうか。なにしろ去年のエビルトレント事件以降、アルの街の治安はやや悪くなっているのだ。新しい宗教か? ……それとも反王国の地下組織か。はたまた街の裏で活動するマフィアか。
「もし詳しいことが耳に入ったら教えてね」
 私はセレスにそう言った。他にも信頼できそうな冒険者にも声を掛けておくべきか悩む。

――――。
 夕刻になると依頼を終えた冒険者が帰ってくる。
 エミリーとマリナは忙しそうに依頼の報告を受けていた。
 二人に報告を終えた冒険者は、そのままギルドから出て行ったり、またギルド内のカフェで乾杯する。今日の依頼はどうだったとか、他の冒険者の動向、また森に出た魔獣の情報やエストリア王国内の動向など。こうした場を利用して彼らは情報交換をしているのだ。

 エールをぐいっとあおった壮年の冒険者が、
「そういえば妙な話があったろ?」
と隣の頬に傷のある冒険者に話しかけた。
「ええっと、……夜中に集まる白仮面の話か?」
「ああ。何やら怪しい儀式をしてるって噂だ」
 傷のある冒険者が、
「街の警備兵はなにしてんだろな」
と言ったとき、大柄でそばかすのある女の冒険者が話しに割り込んできた。その腰には使い込まれた長剣がぶら下げてある。
「それが、どうも警備ルートと時間を把握されてるみたいで、決まっていない時間に集合してるみたいよ」
「カタリナ。お前、詳しいじゃないか」
と最初の冒険者が言うと、
「こないだ酒場で警備兵の奴がそんなことを言ってたのさ」
とカタリナと呼ばれた女冒険者が答えた。
「それで、ランディ。その噂がどうしたんだ?」
 カタリナが最初の冒険者にきくと、
「どうも一人二人じゃないらしい。貴族の中にもいるらしい」
と言う。傷のある冒険者が椅子に座り直して腕を組む。
「そりゃ、やばそうだな」
と言うと、カタリナが、
「でもさ。エド。お金になりそうじゃないかい?」
 即座に傷のあるエドと呼ばれた冒険者が、首を横に振った。
「やめといた方が良い。下手に首を突っ込んで殺されたらおしまいだぞ?最悪、アンデッドにされて使役されるかもしれん」
 それを聞いてカタリナは「それもそうだね」と言った。しかし、ランディは、
「どうも東街の商店街の一角に集まってるらしいぞ」
とさらに情報を漏らすと、エドがぐっとランディの腕をつかんだ。
「……それ以上はやめとけ。ここにもどんな耳があるかわからん」
と言った。

 その時、落ち着いてきた受付をマリナに任せたエミリーが、
「エド。ランディ。それにカタリナ。ちょっとこっち来て」
と言って、三人を奥の一室に呼びつけた。
 部屋に入るとエミリーが、
「ちょっとさっきの話だけど詳しいことを教えなさい。サブマスターに報告するから」
と言った。エドは、
「いや、俺とカタリナは詳しいことは知らねえ。ランディに聞いてくれ」
と言う。エミリーはランディをじっと見ると、ランディは、
「俺が知ってるのは、奴らが夜に東街の商店街に集まってるってことぐらいだ。奴らが何者で何をしているかなんて知らないよ」
と言った。エミリーは、
「本当に?」
と言うと、ランディは急に周りを気にしだして、
「実は、これは俺が見かけたんだが、その中の一人に黒い髪をポニーテールにした若い女性もいる。顔は白い仮面で隠れてたからわからないが」
と言った。その場が凍ったように静かになる。エミリーは、
「それをここの外で絶対にいうんじゃないよ」
と語気を荒げて言った。ランディは、
「わかってるって、今はじめていったんだ。……まさかマリナさんじゃないと思うけど」
と言った。エミリーはぎょろっとランディをにらんで、
「本当にわかってるんでしょうね?」
と言うとランディはこわごわとうなづいた。
「ならいいわ。三人とも今の話は絶対に内緒よ。いいわね?」
と言った。

 その日のギルドの業務が終わったとき、マリナが、
「じゃ、お先に」
と言って裏口に向かった。エミリーは、
「気をつけて。また明日ね」
と言うと、マリナがふふふと笑って手を振って歩いて行く。
 それを見送ったエミリーは二回にあるサブマスターのアリスの執務室に向かった。

 この時間、まだアリスはいるはずだ。
 ドアをノックすると中から、
「いいぞ。開いてる」
と声がかかりエミリーは中に入る。アリスは、エミリーが言い出しにくそうにしているのを感じて、
「どうした? 何か問題でもあったのか?」
と声を掛ける。エミリーは、
「サブマスターは、近頃、白仮面をした人々がどこかに集まっているという話をご存じでしょうか?」
と切り出した。アリスは、しばらくじっとエミリーの顔を見て、
「ああ。それについては知っている」
と言った。
「その内容については?」
「さて、そういった話は警備隊のすることだろう」
 エミリーの両手にぎゅっと力がこもる。
「実は……、マリナが、マリナが参加している可能性があります」
「……本当か?」
「本人には聞いていません。その、怖くて」
「……」

 アリスはしばし考えて、
「あの、ほら何といったか。聖女の弟子をチームに加えた奴がいたろ?」
 エミリーは急に話が変わったので、とまどいながら、
「え、ええ。ジュンさんのチームですね」
「そいつらにこっそり指名依頼してはどうだ?」
「指名依頼ですか? なぜそのチームに」
「聖女の弟子がいるからだよ。もし何かの儀式なら彼女の方が我々より詳しいだろう。危険かどうかについても」
「なるほど。……確かにそうですね」
「報酬は私に請求しておけ。それと3日に一度は進捗を報告させろ。いいな?」
「はい。ありがとうございます」
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