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異世界に響け!私とあなたの二重奏-分かたれし魂の共鳴- 作者:夜野うさぎ

第二章 めぐり逢い

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【書き直し】隠者の島

2015.9.12 書き直しに差し替え
 エストリア王国より海上を南に1000キロメートル行くと一つの島がある。
 一周約30キロメートルほどの小さな島だ。

 一年中、温暖な気候で、周りをエメラルドグリーンの海に囲まれている。
 島の中央には標高800メートルほどの小さな火山があり、いつも噴煙を上らせている。
 山の中腹から緑に覆われており、小さいとはいえ自然が豊富な島だ。
 島に住んでいるのは三ツ目族の老女のパティスと入り江の人魚たち、そして、今、透け通るような白い肌に、うっすらと輝く淡い紫の髪をした美女、ノルンが暮らしている。

――――。
 私は今、森の中にしつらえられた台座の上で座禅を組んでいる。
 この修業を始めた頃は足がきつくて大変だったが、もう一年になろうとしている今は自然に足が組めるようになった。
 台座のそばには、真紅の不死鳥フェリシアが地面の上に座り込んで、ノルンの様子を見上げていた。
 目を閉じて呼吸を整え、周りの自然を感じる。
 私の心が広がっていき、周囲の自然に、空気に溶け込んでいく。空や大地、川に流れる赤い魔力の流れと同化し、引き寄せ、赤い力が私の体の中を駆け巡っていく。駆け巡った魔力に私の中の魔力が混ざり合い、再び外の流れへと戻っていく。

「自然にできるようになってきたわね」

 目をうっすらと開けるとパティが私を見ていた。
「そう?」
と聞くとパティがにっこりと微笑む。

 ――パティス――
 ステータス表示不可。

 相変わらず、パティのステータスは何も見えない。
 パティが、
「ええ。こうして話していても魔力が滞ることなく流れているわ」
「ふふふ。教える人が上手だからね」
「……まあ、そういうことにしておきましょうか? それで例の力はどう?」
「見ててね」
 再び目を閉じ意識を集中する。私の心の奥深くを観察し意志を込めた言葉を念じる。――封印解除。
 奥底から白く輝く光があふれ出る。……目を開いた。
「――真魔覚醒」
 赤い魔力とは異なる不思議な力が体からあふれ出し、体の周りに白い衣を形作る。収まりきれない力が白い炎となって現出する。
 これが私に眠る力。荒々しく激しく見えるけれど、その実、力強く穏やかな力。この世界のどの属性にも該当しない聖石の力。
 ちなみに、一年にわたるパティとの訓練で私のステータスはこうなった。

――ノルン・エスタ――
  種族:人間族(女)、半神半人
  年齢:26才   職業:隠者の弟子
  称号:当選者、聖石を宿せし者、分かたれし者
  加護:創造神の祝福、魔道神の加護
  ソウルリンク:フェニックス・フェリシア
  スキル:言語知識、自然回復、マナ操作、マナ無限、魔法の才能、破邪の力、召喚魔法、妖精視、魔力視、精霊視、無詠唱、魔方陣の知識、気配察知、魔力感知、危機感知、暗視、体術4、回避5
  魔法:火魔法7、水魔法7、土魔法7、風魔法7、海魔法7、雷魔法7、神聖魔法7、空間魔法7、無属性魔法7
  ユニークスキル:ナビゲーション

 聖石の力を引き出せるようになった頃から、どうしたわけか私の種族にグレー表示で半神半人が加わっていた。ところが、鑑定スキル3を持つセレンによると種族は人間族だけが見えるというので、一種の隠し属性なのかもしれない。それに当然だけど、魔法を使わずに森羅万象を操作したり概念で何かをするようなこともできないし、普通の人間族と変わりがないと思っている。

「相変わらず凄いわね。その力」
とパティが言った。

 私は坐禅をといて台座から降り、軽く目をつむる。その状態でもまわりの光景が脳裏に浮かぶ。
 私を見つめるパティの顔、風に揺れる草の葉、林の間を飛んでいる小鳥、川に潜む魚、煮えたぎるマグマをたたえた中央の小火山に、歌を歌っている入り江のセレン……。
 ここにいながらにして隠者の島のすべてが見えるし、感じる。そして、この波動の解放と共に、そばに居るフェリシアの内面にも大きな力があふれ出しているのがわかる。

 パティがいうには、この力は私の魂と融合している聖石のものらしい。けれど私が尋ねても、聖石が何かは教えてはくれなかった。「自分で答えを見つけなさい」だって。

「さ、もうそろそろ止めてちょうだい」
「ええ。わかったわ」
 私は聖石の力を鎮め、封印(リミッター)をかけながらパティに笑いかけた。
 それから私とパティは並んで林道を歩き入り江に向かった。フェリシアは私たちの頭上をゆっくりと飛んでいる。
 木漏れ日が林道を歩く私とパティに降り注ぎ、生命力に満ちた森の匂いを吸い込むともっと元気になれる気がする。   

「あなたが来てから、もう一年になるのね」
「うふふ。パティったら急にどうしたの?」

 パティの言葉に、私はここ一年間を思い出していた。
 パティからこの世界のことや料理、そして魔法や戦い方を教えてもらったこと。パティは、特に魔力操作の修練、そして、聖石の力を自由自在に使いこなすことを重視して鍛えてくれた。

 実は隠者の島には、小さいながらも火山もあり、森もあり、海もあり、川もあり……。いろんな環境がこの島に居ながらにして体験できるし、数が少ないながらも殆どの種類の薬草が手に入る。

 パティと一緒に冬に火山に登り、ブリザードの厳しさと同時に燃えさかるエネルギッシュな火口のマグマを一晩中眺めたり、森で野草や薬草、毒草の見分けをしたり、川で魚を手づかみしようとしてひっくり返ったり、入り江でセレンと海に潜って砂浜でみんなでバーベキューをしたり、パティやセレンと一緒に色んなことをした。楽しかったなあ。

 隣を歩くパティが、
「セレンが入り江で呼んでたわよ」
と教えてくれた。セレンはここしばらく姿を見せなかったけれど、ようやく戻ってきたのね。

「あなたに渡すものがあるんだって」
「お土産かな? ……そういえばセレンってどこに行ってたの?」
「海底王国ミルラウスよ」
「ミルラウス?」

 ミルラウスは海底にある人魚達の国で、そこには人魚に認められた人しか行くことができない。私もセレンから許可は出てるのでそのうち行きたいと思っているけど、なかなかタイミングが合わないのよね。

 林道が二手に分かれているところまでくると、パティがにっこり笑って、
「じゃ、私は先に家に帰ってるわ」
と言いい、家に向かう道を歩いて行った。その姿を少し見送ってから入り江に向かう道へと進んでいく。
 林を抜けると、すぐ目の前に小さな砂浜に囲まれた入り江が見えてきた。砂浜から中央の岩場まで簡易的な桟橋(さんばし)ができている。

 その中央の岩場にセレンが腰かけ一人で歌を歌っていた。美しい旋律が風となり海面を渡っていく――。透き通るような歌声が私を包み、そして通り過ぎていく。ゆったりとのびやかに。

 ――セレン・トリトン・ミルラウス――
  種族:人魚族(女)  年齢:25才
  職業:ミルラウスの姫君
  称号:美貌の歌姫、おてんば王女
  加護:海神セルレイオスの加護、海竜王の加護
  スキル:人化、気配察知、魔力感知、危機感知、鑑定3、水魔法4、海魔法4、歌魔法4、回復魔法3、神聖魔法3、調理3

 いつ聞いても「美貌の歌姫」セレンの歌声は美しい。私はしばしその場にたたずんで歌声に聞き入った。
 やがて歌が終わると、セレンが私に手を振る。

「お~い! ノルン! フェリシア! こっちこっち!」
 私は笑みを浮かべ、手を振りかえしながら桟橋を渡る。
「セレン、おかえり!」
 するとセレンは、岩場からすっと海に潜り桟橋に飛び乗った。私と同じくらいの大きさの胸が揺れ、下半身の尻尾のうろこがキラキラと光を反射する。
 私はセレンの隣に並んで桟橋に腰かけた。フェリシアも私の隣に舞い降りて、おとなしく座っている。

「ミルラウスはどうだった?」
「久しぶりにゆっくりできたわ。ここも居心地が良いけど、やっぱり故郷が一番よ」

 この世界の人魚のほとんどがミルラウスを故郷とする。
 ――故郷。記憶のない私にはそれがどのようなものかわからない。それがなんだか寂しく感じるのだった。

「そっかぁ。故郷か……」
 思わず漏れたつぶやきに、セレンが慌てて、
「あ、ごめんごめん。記憶が無かったのを忘れていたわ」
「ううん。いいのよ」
 急にセレンが私の顔をのぞき込んで、
「でもさ。記憶が戻るまで、ここを故郷にしたらいいんじゃない?」
と言った。
「そっか。……そうよね。……それがいいわ!」

 私の記憶の始まりは、ここ隠者の島。なら、セレンが言うようにここが私の故郷といっても間違いじゃないわ。そして、パティは私の家族。それでいいじゃない。

「セレン。ありがと」
 セレンにお礼を言うと、セレンはふふふと笑いながら私に一つの指輪を差し出してきた。
 その指輪には真珠が一つだけ取り付けられていて、よく見ると指輪の側面に小さな文字が見える。
「はい、これ。お土産って訳じゃないけど、ミルラウスの通行証よ」
「ほんと? 私に?」
「ええ、そうよ。私と一緒ならこんなのいらないけれど。これがあれば、私がいなくても大丈夫よ」

「……どっかに行くの?」
 私がそう尋ねると、セレンはちょっと寂しそうな表情を見せた。

「海竜王様のご命令でね。ちょっとあちこち行かなきゃいけないのよ」
「ふうん。海竜王様の……、なら仕方ないわね」
 そう寂しそうに言うと、セレンは私の背中をばしっと叩いた。
「なに言ってるのよ。あなたもそろそろ出発するんでしょ?」
と言ってきた。
「え? 出発?」
と怪訝な顔で返すと、セレンがあれっというような表情を見せる。
「あれれ? パティスに聞いていないの?」
「何にもきいてないよ~。パティね?」
「そうよ。後でちゃんと聞いておきなさいよ」

 セレンと他愛ないお話をしてから家に帰ると、すでにパティが夕飯の準備をしていた。
「じゃ、いただきま~す」
 鳥肉をじっくりと煮込んだスープを一口飲むと、調和のとれた肉と野菜のうまみが口の中に広がる。ハーブの味付けがまた丁度いい。スプーンをくわえて、
「ん~~。おいし!」
「うふふ。まったく子供みたいなんだから」
「いいもん。私はパティの子供なんだから!」
「……あらあら。子供っていうより孫かしらね」
「そうそう! 孫よ! 可愛い孫だからいいの!」
「くすくす。まったく貴方ったら……。これじゃ心配だわね」

 くすぐったそうな微笑みを見せるパティが、かすかに寂しげな色を表情に見せた。
「心配?」
とききかえすと、パティは、
「……食事が終わってからって思っていたけど、そろそろ出発しなければならない時よ」

 出発。昼にセレンが話していたことだろう。……でも、私はずっとここにいたいのよ。ね、パティ。
 そう思って、私は、
「いやよ。どこにも行きたくはないわ。ここでずっとパティと暮らすわ。友達のセレンだっているし」
ときっぱりと言った。するとパティは困ったようなうれしいような複雑な表情をして、

「ノルン。私は貴方にこの世界を見てもらいたいの。この広い世界で、いろんな人と出会って、いろんな経験をして欲しいの。……こんな世界の片隅の小さな島だけで生活して欲しくないのよ」
「で、でも、パティ」
「それにね。貴方と魂を分かち合っている人が、きっと貴方とめぐり会うのを待っているはずよ」
「……うん」
「きっとその人は貴方と同じく素敵な人よ。友人になってくれるでしょうし、男性だったら恋に落ちることでしょう。……私は貴方に幸せになって欲しいの」
「パティ……」

 パティの言葉が、私の胸の中でじんわりと温かくなる。こんなに愛されて私はなんて幸せなんだろう。自然と涙が目に浮かんできた。
「ふふふ。でもまあ、さっきの言葉はうれしかったわ。貴方は孫だからね。素敵な男性を連れて帰ってきて欲しいわね」
 目尻に浮かんだ涙をごしごしとこすりながら、私はうなずいた。そんな私を見てパティがにっこりと微笑む。

「私なら大丈夫よ。今までも一人だったしセレンも来てくれるし。それに私だって出かけるときもあるから、どこかでひょっこり出会えるかもしれないわよ」
「うん。そうだったらうれしいな」

 それからパティが言うには、私が出発するのは明後日がいいとのこと。急な決定だったけど、パティの占いのよるものと聞いて私は納得した。……だってパティの占いは100%の確率で当たるから。

 きっとセレンも事前にパティに話を聞いていて、あの指輪を用意してくれたのでしょうね。
 次の日、私は入り江でセレンと話をして、この島を出ること、そして、ミルラウスの場所と行き方を教えて貰った。……なかなか容易でないとだけ、ここで記しておこうかしら。

 それからパティとあれこれ話をして、いよいよ出発の日を迎えることになった。
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