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異世界に響け!私とあなたの二重奏-分かたれし魂の共鳴- 作者:夜野うさぎ

第六章 さらわれた少女と不思議な横丁

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ランクA昇級

すみません。ギルド長。ファル老にしていたのを忘れていました。訂正します。
新章突入です。
 「あ!ひさしぶりですね!ジュンさん!」

 俺たちがギルドに入ると、マリナさんの声が迎えてくれた。

 久しぶりのエストリア王国アルの冒険者ギルド。俺たちは、機工王国アークを出国した後、ようやくエストリアへと帰還した。
 思えば人食い鮫退治から始まって、幽霊船、漂流、ルーネシア、アーク、魔族の町、闇の神殿と、長いことかけて移動してきたもんだ。

 「ようやく帰ってこれましたよ。マリナさん。エミリーさん。」

 久しぶりのギルドのなかを見回すと、ちょうど昼の時間ともあって数人がカフェで食事をしているくらいだ。受付からは、マリナさんのとなりにエミリーさんもいて、こっちに笑顔を見せてくれている。

 俺たちは、早速受付へ向かった。
 「えっと、マリナさん。港湾都市ベルトニアで受けた依頼ですけど、こっちでの達成報告でもいいですよね?」
 「もちろんよ。というより、ベルトニアのギルドからも報告があがっているわよ。漁師たちも感謝しているって。……はい。これ報酬よ。」
 「ありがとうございます。」
 俺は礼をいうと、渡された報酬をそのままノルンのアイテムボックスに入れてもらった。
 それを確認したエミリーさんが話しかけてくる。

 「ジュンさん。あなたたちが戻ったら連絡するようにギルド長からいわれているわ。ちょっと待っててくれるかしら?」
 「えっ?ギルド長ですか?わ、わかりました。」

 エミリーさんがそのまま奥の通路を進み、しばらくすると戻ってきた。そして、俺たちはエミリーさんの案内で、はじめてのギルド長室へと向かった。

 「失礼します。ジュンさんたちをお連れしました。」
 「……入りなさい。」

 中から聞こえてきたのは女性の声だ。そういえば、ここのギルド長って、フルール村防衛戦の時のファル老が引退したって聞いていたけど。新しいギルド長ってどんな人なんだろう。
 エミリーさんがドアを開けてくれ、俺たちに中に入るように促す。

 「失礼します。」

 部屋の中には、正面に大きなデスクがあって、その向こうに一人の女性の姿があった。年の頃は20代後半といったところ。金髪で細身でしなやかなそうだ。そして、透き通るような白い肌に耳先が少しとがっている、……エルフだ。ということは、実年齢は見た目通りではないだろう。

 「あなたたちは、ここに来るのは初めてね。さあ、そっちのソファに座って。……エミリー。お茶を人数分よろしく。」
 「はい。かしこまりました。」
 エミリーさんが部屋を出て行った。俺たちは、ギルド長の指示通りに、ソファに座る。

 「さて、はじめまして。私がこのアルのギルドマスターのエスメラルダよ。あなたたちのことは聞いてるわ。」
 「はじめまして。俺がジュンです。で、こっちからノルン、ヘレン、サクラ、シエラです。」
 「あなたたちが活躍してくれているから、ここのギルドの評判もあがってうれしいわ。人食いの巨大鮫退治、シーサーペント退治、そして、ルーネシア王家とアーク機工騎士団長からの感謝の言葉が届いています。……一時は死亡したものと思われたんですけど、生きていてくれてよかったわ。」

 「ああ。幽霊船に乗ったあと、漂流しましたからねぇ。」
 やっぱり、幽霊船に乗って行方不明になったから、死亡のニュースも広がったのか……。トーマスとか心配したんじゃないだろうか?今度あったら何かおごってやんなきゃな。
 そんなことを考えていると、ギルマスからは今までの経緯説明をお願いされた。

 「そうそう。幽霊船にも乗ったんでしたっけ?……今までのこと、詳しく聞かせてくれるかしら?」
 「えっ。長くなりますよ?」
 「いいわよ。時間はあるから。」
 「わかりました。じゃあ………………。」

 それから、俺は幽霊船セルレイオスの話から始まって、アークでの魔族との出来事まで、順番に説明した。考えてみれば、ほとんどエストリア国外での活動だったから、ギルマスが俺たちの口から直接聞きたいというのもわかる。
 それから小一時間。時折、みんなから補足を受けたり、質問を受けたりしながら、今までのことを説明し続けた。

 「ふぅ……なるほどねぇ。」
 エスメラルダは、話を聞き終わると、ソファに深く腰掛けて身をもたれかけさせると、目をつぶって深くため息をはいた。
 そのまましばらく何事かを考えているようであったが、おもむろに目を開くと、ジュンを見つめる。

 「はっきりいってランクCには収まる話じゃないわね。それに、天災となのる複数の不気味な人物の情報。……よろしい!あなたたちは今日からランクAです。」

 え?いきなりランクA?上から三つ目じゃないか!

 「えっと、いいんですか?」
 思わず俺は聞き返したが、エスメラルダは大きく頷くと、エミリーさんにギルドカードの更新を命じた。

 「もちろんよ。ルーネシア王家に感謝され、アーク王国で活躍しているしね。今度は是非エストリアで活躍してほしいものね。」
 「うっ。確かに国外で活躍して、国内ではそれほどではないですね。」
 「いいのよ。その時の巡り合わせってあるからね。……それから説明しておくけど、ランクAになったら、ギルドからの強制依頼が発令される時があるわ。その時は、別の依頼を受理している場合を除いて、必ずこのギルドに集まること。いいわね?そうしないと除名することになるわよ。」
 「強制依頼ですか?それってどんなものがあるんですか?」
 「そうね。例えば、魔物の大量発生とか、王国軍と共同作戦をする必要がある時とか、実力のある冒険者でないと対処できないと判断される依頼とかね。」
 「……なるほど。わかりました。」
 確かに魔物の大量発生とかは人手が必要だろうな。……別にフラグじゃないよ?多分。

 それから俺たちはギルマスの部屋を退出して、受付でエミリーさんから更新されたギルドカードを受け取った。

 「はい。ギルドカードです。……昇級おめでとうございます。今までで一番昇級が早いですよ。」

 エミリーさんがぼそっと伝えてくれた。普通は何年も依頼を続けて、少しずつ昇級するのだろう。俺たちみたいに一年半ほどでランクAまでくるってのは……、自分でも規格外かも知れないって思う。

 「ありがとうございます。」
 俺たちはお礼をいって、その日は依頼を受けることなく、懐かしい冒険者の憩い亭へと向かった。

 カランっカランっ

 ドアにつけられたベルの音が鳴ると、カウンターで暇そうにしていた少女が、はっとこちらを見る。

 「あっ!いらっしゃい。……えっと、もしかしてハーレムの人?」

 俺はそれを聞いて思わずカクンと脱力してしまった。何だよ一体。ハーレムの人って!ひどい覚え方じゃないか!


 「あはははは。お帰り、久しぶりだね。ジュンさん。」
 その俺の様子を見て、笑いながら横から話しかけてくる男性がいる。

 「おお!ケイムじゃないか。久しぶりだな。」
 その男性は、かつて俺たちと一緒に初心者合宿を受けた冒険者、草原を渡る風のケイム・キルギスだった。ケイムの後ろには、同じチームのシーフであるセレスとハーフエルフのアイスがイスに座って手を振っているのが見える。
 それに気づいたみんな、セレスとアイスに手を振り返す。

 「あれ?トーマスとルンは?」

 怪訝に思った俺の質問だったが、どうやら単純に二人で買い出しに出かけているだけのようだ。
 トーマスたちも順調に依頼をこなし、今ではランクBになったそうだ。思えば初心者合宿の教官をしてくれたランドさんとルイさんがランクBだった。同じランクに昇級したことは、あの頃の教官に肩を並べたということだから、感慨深いものがある。

 「おっ!ジュンじゃないか!久しぶり。」
 「ん。なつかしい。」
 話をしていたら、ちょうどトーマスとルンが帰ってきたみたいだ。……こいつらの仲も進展したのかね。

 それから少し雑談をしていたが、俺たちがランクAに昇級したと聞くと、驚くとともに悔しがっていた。

 「くっそ~。先を越されたか。でも追いついてみせるよ。」
 「あはは。トーマスもがんばれ。それに、俺たちはまだ実感がないんだよ。」

 その日は昇級祝いとして、トーマスたちと宴会をした。
 彼らと俺たちは、いわば同期だ。お互いの近況を報告し合ったが、俺たちの幽霊船や漂流、そして、行商人のイリーシャさんの話には心底驚いていた。

 「へぇ~。あのイリーシャさんがねぇ。ルーネシア王家の関係者だったとは。」
 トーマスとケイムは目を丸くしている。その横で、どうやら女性陣は別の印象を受けたようだ。
 「ふぅん。ロマンチックだけど、悲しい愛の物語だね。ヘレンもそう思うでしょ?」
 セレスがヘレンにそう話しかけた。普段は快活な彼女の言葉とは思えなかったが、やはり乙女心があったのだろう。
 それから女性陣は、悲恋の話題で盛り上がっていたようだ。

 「あ、そうだ。ノルンさんとか興味あるかもしれない。……今、王都エストリアにある国立博物館で『古の魔法道具とエストリアの歴史』っていう展示会をやっているよ。」

 宴もたけなわといった頃、魔法使いのハーフエルフであるアイスが、ノルンに興味深い情報を教えてく
れた。

 「魔法道具と歴史かぁ。……ありがと。アイス。おもしろそうね。」

 ノルンの目が、おもしろそうというように輝いている。ノルンは、その目を俺に向ける。

 「ねぇ。ジュン。行ってみない?……ほら、王都観光も兼ねて。どう?」

 ノルンのその目を見たら、もう行くしかないでしょ。……そう思いつつ、他のメンバーを見ると、みんなも行きたそうな顔をしている。

 「そうだな。俺も見てみたいし、みんなも行きたそうだ。……一息ついたら行っていようか。」

 「やったぁ。楽しみだわ。ね?ヘレン。」
 「そうね。……王都かぁ。ジュンに服を買ってもらいたいわね。」
 ヘレンがそういうと、サクラもシエラも即座に同調した。
 「私も服がほしいです。マスター。よろしくお願いします。」
 「ジュンさん。私の分もです。」
 最後にノルンが止めの一言。

 「というわけで、ジュンには嫁になる私たちのために、王都で服を買ってもらいましょう。いいわよね?アナタ?」

 四人が期待に満ちた目で見ている。断れるわけはない。
 「……もちろんだ。と、いうわけで次の目的地は王都エストリアだ。」

 それからも賑やかに宿の夜は過ぎていくのであった。
 王都で、新たな出会いが待っているとも知らずに。
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