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異世界に響け!私とあなたの二重奏-分かたれし魂の共鳴- 作者:夜野うさぎ

第五章 炎の記憶と暗躍する悪魔 機工王国アーク編

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【書き直し】機工王国アークへの到着

書き直し原稿に差し替えました。
ですが、この章のおおきな流れに変更はありません。
 「……次の目的地は、アークだったな?」
 男性の問いかける声が聞こえる。

 そこは不思議な空間だった。あたかも夢の中のような、明るいとも白いともつかない空間。どちらが上で下か、右か左か、方角さえも広いのか狭いのかもわからない。
 今、その空間に一人の若い女性がたたずんでいる。
 女性は、中空を見上げながら笑顔で問いかけに答えた。
 「ええ。シン様。その通りでございますわ」
 問いかける声は面白そうに、
 「その様子だと、気づかれずに上手くいったようだな」
 女性は首をかしげながら、
 「ふふふ。それはどうでしょうかねぇ。案外、ノルンは私の正体に気がついているかもしれないですよ?」
 男性の声は感心したように、
 「ほう。なかなかの目をしているというわけか」
 「だって、あの子は一緒に生活してましたからねぇ」
 どことなくほのぼととした雰囲気がただよっている。
 しかし次の男性の言葉で、急に剣呑な雰囲気に変わった。
 「……それはそうと、いよいよ始まるぞ。お前も心しておいた方がいい」
 女性もそれを聞いて、真剣な表情になる。
 「はい。……では、また御指示があれば遠慮なく申しつけ下さい」
 女性はその場で深く頭を下げた。
 「うむ。それではまずは――――」

――――。

「ふひぃ~。やっと着いた」

 ネコマタの美少女サクラが、ぐったりとした様子でタラップを歩いている。
 白く輝く美しい船と港をつなぐタラップには、主人公のジュン、薄紫がかった白銀の美しい髪を持つ美女ノルン、真紅の髪をして大きな胸を修道服に隠したグラマー美人のヘレン、同じくダイナマイトボディをドラゴンメイルで包み大楯を背中に抱えた竜人族の美女シエラが続いて歩いている。
 もう一人の仲間、人魚族のセレンは、今は海竜王リヴァイアサンの指示で故国ミルラウスへ戻っている。
 季節はもう|天秤の月(10月)から|白蝎の月(11月)になろうとしている。この季節特有の高い空にうっすらと筋雲が出ている。
 全員がタラップを降りたところでノルンが手をかかげると、船はみるみるうちに小さくなり、そのままノルンの手元で姿が消えた。アイテムボックスに収納したのだ。
 不思議な光景に周りの人々は目を丸くしているが、それに気がつかないかのように一行は港湾事務所に向かう。

――――。
 俺が、
「結構な長旅になったな」
と言うと、あきれたようにヘレンが、
「ジュン。あなたが今回は転移魔方陣を使わないでのんびりクルーズしようって言ったのよ?」
 俺は苦笑しながら、
「でもよ。その分、いちゃいちゃできただろ?」
というと、ヘレンが少し赤くなりながら、
「それはそうだけど。……私、今日はお肉が食べたいわ。よろしく」
とそっぽを向いた。
 そこへサクラが後ろから飛びついてきて、
「マスター! 私もです! ってか、ここの名物って何ですかね?」
と元気に言うと、シエラが形の良いあごに指を当てて、
「う~ん。ルーネシアでの情報だと、牛肉とかでもシンプルな味付けの料理が多いって話でしたね」
 そうそう。確かにステーキでも塩、胡椒にガーリックくらいだとか。これが本拠地にしているエストリアだと手の込んだソースがかかったりする。

 港に面した赤レンガ倉庫を見ながら通りすぎて、3階建ての港湾事務所に入港と入国手続きのために入る。入港入国カウンターに行くと、茶色のボブカットをして眼鏡をした女性が、
 「入港と入国の手続きですね?」
 「はい」
 「ではどうぞ」
 女性の前のイスに座り、俺たちの船、神船テーテュースの入港手続きを行う。
 「え? 船は停泊しない?」
 驚いた女性の顔を見ながら、俺の横にいるノルンが、
 「ええ。ミルラウスの最新鋭の船です。自在にサイズを変えられるから自分たちで持参しますわ」
 女性は下がった眼鏡をもとの位置に直す。
 「ミルラウス船籍ですか……。それならありうるのでしょうね」と言いつつ、眼鏡の奥の目がキランッと輝く。
 「自在にサイズを変えられるとは! いい一体どういう技術なのでしょうか? 素晴らしい! 是非、その船を拝見させてもらえませんか?」
 女性の鼻息が荒い。ノルンに目配せをしてアイテムボックスから出してもらう。
 それを見た女性のテンションが異常なほど上がっている。
 「おおお! こ、これが……。すごい! これならマジックバックに入りますね。ほおおぉ。……ぜ、是非、この技術を知りたい!」
 両の拳をぎゅっと握りしめる女性だったが、その視線がふっと後ろのヘレンに行くと怪訝な顔をした。
 「そちらの女性は染めてられるのですか?」
 興奮状態がまるでリセットして何も無かったかのように冷静な女性におののきつつも、ヘレンが、
 「え? 私の髪? ええっと地毛ですけど……」
 すると女性が険しい顔をする。
 「地毛? ……失礼ですけど人間族ですよね? ギルドカードを確認しても?」
 「ええ。いいわよ。はい」
 ヘレンがギルドカードを女性に渡すと女性がしげしげとカードを眺めた。不安になった俺が、
 「ヘレンに何かあるのですか?」
と尋ねると、女性はカードをヘレンに返しながら、
 「いえ。……確かに人間族ですね。珍しいこともあるものです」
と言い、言葉を潜めて、
 「失礼ですが、この国に滞在されている間、ヘレンさんはローブで髪を隠していただいた方がいいでしょう。ヘレンさんがどうというわけではなく、その真紅の髪はこの国では忌むべきものとされています。いらぬ事件に巻き込まれる可能性が高いですよ」
と説明してくれた。
 ノルンが、
 「それって理由をおうかがいしても?」
と言うと、女性は、
 「一〇〇〇年前の人魔大戦でかの魔族の王は燃えるような真紅の髪をしていたと伝えられています。そもそも赤い髪は魔族以外ではありえませんし、今の魔族の方々も他の種族との混血が続いて赤い髪の子が生まれることは100年に一度あるかどうかというところです」
 なるほど。たしかにこっちの世界に来たときに、紫とか銀色、水色などの髪は見かけたが赤い髪は見たことがない。ファンタジー世界なのに珍しいなぁと思っていたが……。
 気がついてみると、この港湾事務所の中の職員たちがヘレンを見ていた。ヘレンが気まずそうに髪を隠した。
 「忠告、感謝するわ」
 ヘレンが女性に礼を言うと、女性がにこっと笑って、
 「いえいえ。では手続きは終わりましたので、よいご旅行を」
と俺たちを見送ってくれた。
 俺たちは礼をいって出口に向かうが、外に出る前にノルンがヘレンに、
 「ヘレン。ちょっとまって。ずっとそれじゃ大変だからさ」
と言って、ヘレンの頭の上に手を当てて、
 「ミラージュ」
とつぶやいた。
 「さ、これで大丈夫よ。外に行きましょう」
 ノルンはそう言ってドアを開けた。
 俺はそっとヘレンの顔をのぞき込んだら、ヘレンの髪の色がきれいな黒い髪になっていた。
 「おおぅ! これは新鮮だな」
とつぶやく。ヘレンが、
 「え? なに?」
 俺はそっと「髪が黒くなってる」とささやくと、ヘレンは納得したように、
 「さっすがはノルンね」
と言ってノルンに続いて外に出て行った。

 港湾事務所を出て、さっそくヘレンがローブのフードを下ろす。みんなそれを見て驚くが、サクラが、
 「わっ! ……ヘレンさんじゃないみたいですね。なんだかマスターのお姉さんみたい」
と言うと、ヘレンはふっと笑って、俺にいたずらっぽい表情で、
 「あら。それもいいわね。……確か今晩は私の番だったわよね。そういう設定にする?」
と笑いかけた。
 俺は微妙にひきつりながら、
 「いらんっつうの」
と言うが、ヘレンは機嫌良さそうに鼻歌を歌い出した。
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