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異世界に響け!私とあなたの二重奏-分かたれし魂の共鳴- 作者:夜野うさぎ

間章 潮騒のバカンス

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潮騒のバカンス 1

 太陽が燦々(さんさん)と照り輝く、ルーネシアのカフェのオープンデッキで、俺たちはくつろいでいた。
 花柄のマキシワンピを着たノルンが、
 「……ねぇ。今日は街で水着を選んで、明日は海水浴をしない?」
と提案する。

 もうヴァルガンドは|獅子の月(8月)。
 俺たちは休暇も兼ねて、ルーネシアに来ていた。今、みんなでランチを終えたところだ。
 あれ? 水着ってもう持ってなかったけ? でも新しい水着ってのもいいな。
 しっかり者のヘレンが、
 「水着はもう持ってるじゃない?」
 「ふふふ。ヘレン。女子たるもの、水着も服もいくつあったっていいじゃない? ……それにジュンは見たがっているわよ」
 ノルンとヘレンが俺の顔をチラリと見る。ポーカーフェイスをたもちながら、内心で動揺していると、ヘレンがうなづいて、
 「そうね。あれはエッチなことを考えている顔ね」
とノルンに言った。
 「な、なに? 俺は別にそんなことを……」
と慌てて言い訳しようとすると、それを見ていたサクラが、
 「マスターったら、顔に出さなくても私たちにはバレバレですよ」
 俺はびっくりしてサクラを見た。なぜ?
 ノルンがクスクス笑いながら、周りに聞こえないよう小さな声で、
 「もう。……いくど体を重ねたと思ってるのよ」
 いや、まあ。そういうことなのか? だが、そうすると……。
 俺はシエラの方を見た。というのも、シエラとはまだそういう関係になっていないからだ。
 「……」
 シエラは赤くなりながら俺を見ていた。ううっ。視線が痛い。
 サクラがシエラの後ろからしなだれかかり、シエラの耳元で、
 「ね? シエラちゃんも色っぽい水着でマスターを落とすのよね?」
とささやくと、シエラは熱い視線で俺を見たままうなづいた。
 すると人魚族のセレンが、
 「あら? そういえば、次の順番はシエラ? それとも私?」
とノルンにきいている。俺が見ているのを意識してか、ゆっくりと足を組み替えた。スカートの裾から伸びた白い足が、実になまめかしい。
 ノルンが含み笑いしながら、「後で相談ね」とつぶやいた。

――――。
 気を取り直してカフェを出て、ジェラートというアイスクリームみたいな名前の水着のお店に向かっている。なんでも流行の水着があるばかりでなく、豊富な品揃えを誇っているらしい
 俺の隣を歩くノルンが、
 「もちろん、ジュンが選んでくれるのよね?」
とにっこり笑っている。俺はその笑顔にドキッとしながら了解した。
 カフェで教えてもらった道を進むと、「ジェラート」の文字と椰子の木の絵がある看板が見えてきた。若い女性のお客さんが多いようだ。
 店に入って、ノルンが、
 「うわぁ。かわいい」
と思わず一言つぶやいた。結構な広さのあるフロアの約7割が女性の水着コーナーになっているようだ。みんなが目移りしているので、とりあえず、それぞれでお気に入りの水着を探してもらうことにし、俺も男性用水着のコーナーへ向かった。

 男性用も色々ある。いわゆるブーメランといわれるもの、ショートボクサーのもの、七分ほどのサーフのものなど、色もデザインも様々だ。
 まあ特にこだわりもないし、売り場にいる男性の店員におすすめを聞いて、それにしてしまおう。
 「すみません。今年の流行はどんなのですか?」
 「いらっしゃいませ。……最新の流行は、こちらになります」
といって、店員が示した棚には、ほとんど紐で男性器を隠すほどの布地しかないものだ。これって、ほとんどヌードって感じだよね。
 ……予想外に過激なデザインだ。これが流行しているだと? さすがにこれは無いな。こんなのを着たら、すぐさまみんなに襲われそうだ。
 「うん。俺としてはもうちょっと大人しいのがいいな。」
 「そうですか。お客様なら似合いそうですが……。ではこちらの棚はいかがでしょうか。ショートボクサータイプのもので、デザインは比較的オーソドックスといってよろしいでしょう。ですが素材が特徴的でして、シーサーペントの皮を利用していたり、布地にミスリル粉を溶かしこんだ合成素材であったりするものです」
 なるほど。デザインよりも素材で勝負しているわけだな。こっちの方が俺にはあっているだろう。
 「ふむふむ……。なるほど。微量の魔力を感知して色が変わるのか。おもしろいな。これ」
 「ああ。それに目をつけられましたか。そちらは先ほど申したミスリルを練り込んだものでして、ルーネシアきってのデザイナーのトラボルタ様によるものです。着用者の魔力、または自然界のマナに反応して、その強さによって様々な色に変化いたします。また柔軟性を備えつつも強靭な素材でして、水の抵抗も少ない逸品でございますよ」
 俺が手にしたのは、ショートボクサータイプでホワイトを主体としつつも、セルリアンブルーを大胆に取り入れ、かつ細やかな黒の文様が入っているものだ。しかも魔力を感知して、ホワイトとセルリアンブルーの箇所がピンクになったりパープルに変化する。
 俺は結局その水着に決めた。

 さてみんなの方はどうかな? 俺が選ぶって言っちゃったから様子を見に行こう。

 店内は視界をさえぎるほど水着の棚が並んでいる。
 気配感知で探ってみると、どうやらノルン、ヘレン、セレンは一人で選んでいるようで、サクラとシエラは二人で一緒に選んでいるようだ。それぞれのグループにきっちりと女性店員が一人ずつ付いていて、アドバイスや説明をしている。

 俺は、まずノルンのところに向かった。
 ノルンは居るのはビキニのコーナーだった。
 ノルンは、店員さんの説明を聞きながら二つの水着を見比べている。
 一つはオレンジの花柄の水着で、もう一つはピンクの水着だ。そして、今、店員さんから青紫の竜胆りんどう色の水着の説明を受けている。

 「ノルン。どう?決まった?」

 「あ。ジュン。……ええとね。この三つので迷ってるのよ」
 そういって、ノルンは一つずつ水着のかかったハンガーを見せてくれた。
 オレンジ色の水着は、大きな花柄、ひまわりの絵柄のもので、ワンピース型だが両サイドと背中が大胆に開いている、モノキニの水着だ。
 健康そうで元気な女性にとってもよく似合いそうな水着。うちのメンバーでいうと、申しわけないがノルンよりもサクラが似合いそうだ。

 次の水着はピンクのビキニでレースのパレオがついている。パレオは裾が花のレースになっていて、全体的にシースルーになっている。ビキニ本体にも白のラインが入っていて、おしゃれな感じで、ぐいっと胸を寄せるタイプでこっちが緊張してしまいそうだ。
 ……これはこれでアリだな。ピンク色が、ノルンの可愛いさを引き立ててくれそうだ。

 三つ目の水着はさっきまで店員さんの説明を聞いていたもので、ビキニスタイル。ノルンの髪の色にあわせようとしたのだろう。竜胆の美しい色だ。ボトムスはサイドが紐になっていて、とてもセクシーだ。……うわぁ。これを着たノルンも見てみたいな。

 「お客様。いかがでしょうか。美しく輝く淡い紫の髪。白いお肌。きっとこの水着はお客様の魅力を引き出してくれることでしょう」
 女性店員が自信を持ってお薦めしている。
 ノルンは、あごに手を当てて、うんうんとうなりながら決めかねているようだ。と、チラチラと俺の方を見て、何かを期待しているような目をしている。

 「ね。ジュンは、どれがいいと思う?」
 「そうだな。ノルンは美人は当然だが、かつ清楚で可憐だから……。その上品さと明るさを表現するなら、このピンクのかな? ただし、三つ目の竜胆色の水着も捨てがたい。自然なセクシーさがノルンの新しい魅力を引き出してくれそうだ」
 ノルンは少し照れながら、
 「清楚で可憐か。面と向かってそう言われると照れちゃうわね。ふふふ。ピンクか竜胆色、……う~ん」
 俺のアドバイスを聞いたノルンは、候補を二つに絞り込んだようだが、再び考え込んでいる。ま、後はノルン次第だな。俺が全部選んでしまっては驚く楽しみも無くなるし。
 「じゃ、ノルン。俺はヘレンの方も見てくるよ。……楽しみにしてるよ」
 最後にボソッと耳元でささやいて、その場を離れた。

 さて、次はヘレンだ。順番はお約束って奴だな。この順番を守らないと争いの元になりかねない。
 ヘレンは、……いた。ちょうど反対側のブースだ。すらっとした美人の店員が一緒にいる。
 「ヘ~レ~ン。どう?決まった?」
 「あ、ジュン。……そうね。私はこれとこれかな」
 そういうヘレンの腕には二つの水着が抱えられていた。
 両方とも黒い色だ。どんな種類かはちょっとわからない。
 「お客様は、真紅の髪をお持ちで整ったお顔をされております。そして、うらやまけしからん胸。その魅力を引き出すためにはスタイリッシュなもの、または野性味を醸し出すようなものがお薦めです」
 これまた自信を持った店員だ。だが、言っていることは納得できる。
 「ふむ。確かにヘレンにはそのどちらかが似合いそうだな」
 「でしょ? それでね。結局、決められないから、……両方買うから」
 「ん? 両方?」
 両方買うのか。そんなに海で遊ぶような機会もないように思うが……。そう思っていると、ヘレンは上目遣いに小悪魔的な笑みを浮かべてささやいた。
 「そ。……だって、ジュンだって両方見てみたいでしょ?」
 「見たい! 許す!」
 「思った通りね」
 うん。やっぱりね。見たいですよ。……あとでノルンにも両方買っていいと伝えておこう。むふふ。楽しみが増えたぞ。
 いつのまにか思考がエロ親父である。

 「次はサクラとシエラのところで見に行くか。どこかな」
 そう思って売り場を見渡していると、お店の中央付近でキャッキャッと楽しそうに話している声がする。そこだな。
 近づくと、楽しそうな声が聞こえてくる。
 「うっわ。シエラちゃん。ちょっと大胆じゃない?」
 「やっぱり? 本当はもっとこういう感じのがいいかなって。」
 「お客様。これはお客様にお似合いでございますよ。大丈夫です」
 「……これならジュンさんもグッときますかね?」
 「はい。お客様。どんな男性でもグッと来ますよ」
 「ふむふむ。なら、これは買いね」
 シエラの目がランランと水着を見つめているのを、遠目に見つつ、俺は会話に割り込んだ。
 「どうだい。いいのあった?」
 ビクッ! シエラがビクッとした後、ギギギと音が出そうなぎこちなさで俺の方へ振り向いた。
 「シエラ?」
 思わず大丈夫か? と声をかけそうになるが、シエラは真っ赤になって下着を抱きしめた。
 ……うん。見なかったことにしよう。サクラに話を降っておこう。
 「どう? サクラは決まったの?」
 「はい! マスター。私はこれでーす!」
 キャピっという音が出そうな元気良さで、サクラが見せてくれたのはセルリアンブルーのモノキニだった。肩紐がなくてチューブトップのようなトップス。……サクラに似合いそうだ。
おや? よく見ると変わった布地だな。
 「おや?お客様は気付かれましたか?この生地は細かいドットが入っておりまして、光の加減によって色合いを変化させます」
 「へぇ。面白いな」
 「ですよね! ね! マスター! 私もう楽しみです!」
 大興奮のサクラだ。この裏表のない性格って可愛いよな。
 思わずサクラの頭をよしよしと撫でてしまった。見ると、サクラはふにゃぁっと幸せそうな顔をしている。
 「いいなぁ。サクラちゃん……」
 ぼそっとシエラの声が聞こえて、慌てて撫でている手を止めてシエラの方を見る。
 「で、どうだ?シエラの方は?」
 「は、はい。……こっちとこっちで迷ってるんですけど」
 ふむ。シエラはやっぱり二つで迷っていると。……だが、シエラ。両方買えばいいんだぞ? 俺のためにもな。
 「なあ。シエラ。両方買っても……」
 ところが、俺が言いかけたところを遮って、シエラが水着を掲げて聞いてきた。
 「ジュンさん!どっちがいいですか?」
 「あ、ああ……、あ?」
 俺は、シエラの選んだ水着を見てびっくりした。
 なぜなら、一つはどう見てもスクール水着だからだ。あの紺の女学生が着るやつである。一体どうしてこんなものがこの世界にあるのだろう?
 「こちらは一見するとどこが魅力的なのかよくわからないかもしれません。しかし、当代きってのデザイナーの手によるもので、その真価は着用した時におわかりになることでしょう。……特に意中の男性がいる方にとっては」
 むむう。Gカップはあるシエラがこれを着る?そりゃあ、ぐっとくるかもしれないが……、でもなぁ。
 そして、もう一着は真っ赤なかなりきわどいマイクロビキニだ。……こりゃイカンだろ。
 「あのなぁ。シエラ。悪いとは言わないが、お前の良さはそのスタイルと無邪気なところだ。こっちの赤い奴は止めといた方がいいんじゃないか?かといって、こっちはこっちでアリだが、……もう一着別のを探した方がいいな」
 「あ、そ、そうですか。わかりました!」
 「サプライズがないとつまらないから、もうちょっと探してごらん」
 「はい!」
 シエラに話しかけた後で、そばにいた女性店員にこっそりと話しかける。
 「すみませんが、シックな黒の三角ビキニのちょっと色っぽいのを選んでやって下さい」
 「……かしこまりましたわ」
 店員は澄ました顔で一礼している。……でもあの水着、あんたが薦めたんだよな? 大丈夫か? と不安にもなるが、まあ楽しみにしておこう。……別の用途に使えるかもしれないし。

 さてと、後は……セレンか。あいつはさっき見たところでは、角の方にいたな。
 セレンがいた方を探してみると、試着室の前に一人の店員が待ち構えているのが見えた。セレンと一緒にいた人だ。きっとあそこだろう。
 「どうですか?セレンのはいいのがありましたか?」
 俺は近寄りながら、店員に話しかける。
 「……ええ。思ったよりも独特の感覚をお持ちの方のようですね」
 うん? どういうことだ? ちょっと疑問に感じていると、試着室の中から声がかかった。
 「あれ? ジュン。そこにいるの?」
 「ああ。ここにいるよ」
 「丁度よかった。今、試着したところ。どうぞカーテンを開けて評価してね」
 「うん? いいのか? ……じゃ、失礼しまーす」
 そういって、試着室のカーテンを開けた俺は、中を見て固まった。
 それを見てセレンが蠱惑的な笑顔を見せる。
 「どうかしら? 感想はいかが?」
 そういうセレンはトップレスで乳房が露わになっていた。さらにボトムスは赤い色でサイドが紐になっているセクシーな奴。
 「う、わ、あわわわ。な、なんでトップレスなんだ?」
 思わず変な声が出るが、俺の視線はセレンの胸にロックオンしている。色白でなめらかな肌。ピンクの先端が上を向いている。ボリュームはノルンと同じくらいだ。
 「あら? だってジュンの気を引くなら、こういうのがいいんじゃないかしら?」
 そういうと、セレンはふざけて手で乳房の先端を隠してポーズをとる。……マーメイド族ってこんなのばっかりなのかな? 人魚のイメージが壊れつつも、俺はカーテンを閉めるとセレンに話しかけた。
 「それだと他の奴にも見られちゃうだろ? 違うのにしとけ」
 ……その時、さっきの俺の変な声が聞こえたのだろう。ノルンがやってきた。
 「大丈夫? ジュン。……ここ、セレン? ねぇ。セレンはどんなの選んだの?」
 そういうとノルンはカーテンをちょこっと開いて、頭を潜り込ませた。
 「ああ! これをジュンに見せたの?」
 そういうとカーテンを閉めると俺の方に詰め寄ってきて、無言で頭をぽかりと叩く。そして、耳元でこそこそと話しかけてきた。
 「こんな店の中でイチャイチャしない!」
 可愛らしくしかめっ面をつくるノルンに、俺は、あははと笑いながら誤魔化した。
 俺から離れたノルンは右手で拳を作ると、こつんとかわいらしく俺の胸を叩いて、
 「セレンが決まったら、一度レジの前で集まるわよ」
と言って離れていった。
 「じゃ、俺もレジの方へ行ってるから。楽しみにしてるぜ」
 「はいは~い! 私の魅力にメロメロにしてあげるわよ!」
 セレンはそういうと試着室の中でクフフと笑っていた。

 結局、俺が一着、みんなは二着ずつ水着を購入した。……明日が楽しみだ。
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