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異世界に響け!私とあなたの二重奏-分かたれし魂の共鳴- 作者:夜野うさぎ

第一章 異世界のはじまり

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【書き直し】異世界は電話とともに

2015.8.8 一ヶ月もかかりましたが、第一章の分の書き直しを投稿します。
2016.9.23 記法の確認
――――ルルルル、ルルルル。
 おっと、電話だ……。俺は手にしていたビールをテーブルに置き、ソファから立ち上がってリビングボードに向かった。

 俺は春野純。25才。独身。兄弟はいない。
 両親とは幼い頃に交通事故で死に別れた。幸い遺産があったので無事に大学まで卒業し、現在はとある商社に勤めている。
 会社ではまだまだ下っ端だけど、今年はようやく後輩が入ってきた。後輩の面倒も見つつ充実した毎日をおくっている。
 彼女は……、いないよ。だからといって強がりを言うわけじゃないけど、休日には一人であちこちに旅行に出かけている。寂しくなんかない。……たぶん。

 今年の5月連休は屋久島観光の予定を立てている。高校生の頃からあこがれていた縄文杉を見に行くのだ。
 山の中にそびえる杉の巨木。悠久の歴史と生命に満ちあふれた自然。屋久島の魅力は山ばかりでなく海にもあるが、きっと素敵な旅になるだろう。

 今日は出発の前日。まだ夜の8時だ。仕事の早く終わった日なら、居酒屋で焼き鳥でも(さかな) に一杯飲んでいる時間だろう。
 でもフライトの関係で明日は朝が早い。今日は早めに休むつもりだ。

 ソファに座って、ビールのプルタブを開ける。一口飲みながら、リモコンでテレビをつけて天気予報を確認する。

 その時、電話が鳴り出した。
 ――――ルルルル、ルルルル。

「はい。春野です」「おめでとうございます! 貴方はめでたく当選されました!」
「……はい?」

 受話器から少女の声が飛び出してきた。でも応募もしていないのに当選なんて、明らかに詐欺だ。
 内心でため息をついてさっさと電話を切ろうとした。

「……そういうの間に合ってますんで、結構です」

 置こうとした受話器から相手の女性の声が漏れ聞こえる。

「では早速、賞品としてご招待をいた…し……ま………す」
 相手の声と共に急に目の前が霞んでいき、意識が遠くなっていく。


 ――夢を見た。懐かしい我が家。父さんと母さんがいた頃の記憶。
 玄関の外で父さんと母さんが並んで立っていて、出かける俺を見送っている。
「純。どんなに困難なことがあってもくじけるなよ!」
「そうよ。そして、愛してくれる素敵な女性と結婚しなさい」
「お父さんとお母さんは、お前の幸せを祈っているよ」
 忘却の彼方に行ってしまっていた父さんと母さんの姿と声。子供の頃に戻ったような安らぎ。そう思ったとき、急にその光景が遠ざかっていく。
「「ずっと見守っているからね」」――――。


 ふと意識を取り戻した。
 ……どれくらいの時間が経っただろうか。ぼーっとする頭のままで天井を眺めているうちに、次第に意識がはっきりしてくる。
 自宅の天井じゃない。慌てて上半身を起こして見回した。「ここはどこだ? 俺はいったい……」
 そこは自宅ではなかった。まるで、どこかの実験室を思わせる白い部屋に寝転がっていた。

 おかしいな。夢でも見ているんだろうか。
 そう思ってほっぺたをつねると、普通に痛い。こんなところに来た記憶はないな。さっきまで自宅でビールを……。あの電話か? 招待がどうのこうのと……。
 落ち着け。そう自分に言い聞かせて、わざとゆっくり深呼吸をくりかえす。

 あらためて室内を見渡す。殺風景な部屋でデスクがぽつんと1台だけ置いてある。
 天井も、床も、壁も、置いてある机もすべて白一色。天井は高いところにあり、どこにも蛍光灯などの照明器具は見当たらないし窓もない。それなのに部屋の中は不思議なほど明るい。
 広さは高校の教室ぐらいはあるが肝心の出入り口が見当たらない。静ひつさのただよう時の止まったような不思議な空間。

 ……いったいここはどこだ?
 静寂のなかでたたずんでいると、ゾンビ映画に出てくるような不穏なイメージが浮かぶが、すぐさま頭を振ってそのイメージを打ち消す。
 俺はどっから入ったんだ? どこから入れられたんだ?

 真っ白なデスクに近づいてみると、そばに真っ白なイスが置いてあるのが見えた。
 机の上には拳くらいのサイズの透き通った八角柱の石が光り輝いている。その美しい輝きに思わず目が吸い寄せられた。

 なんて美しい輝きなのだろう。ダイヤモンドかな? それにしてはサイズがでかすぎるけど。

 しばらく石を見つめていたが、見知らぬ部屋にいるのを思い出して気持ちを切り替える。
 どうやったらこの部屋から出られるのか? どこかに出入り口が隠されているのだろうか。
「とんだ招待だな。っていうか担当者いないのかよ」
 思わず愚癡をいうが、ともあれ壁づたいに部屋を一周しながら丹念に壁を調べてみる。壁は乳白色のガラス質になっており、外側の光を柔らかく均一に部屋の中に届けている。
 一周したが、残念ながらどこにも合わせ目はなかった。言ってみれば巨大な一枚のガラスの箱のようだ。

 まじかよ。出られない? ……いや待てよ。デスクに何かヒントがあるのかも。

 そう思い直して再びデスクに行って引き出しを調べる。
「……ない。何にも無い」
 引き出しは空っぽだった。思わず頭を抱える。

 その姿勢のままぼんやりとデスクの上を眺めていると、自然と例の輝く石に目が行った。
 イスに座りって石をじっくりと観察する。

「きれいだな。……もしかして、こいつが何かの鍵だったりして」

 何となくそれもありそうな気がする。おずおずと手を伸ばして輝く石に触ってみた。

「うおっ!」

 石に指が触れた瞬間。光が奔流のようにあふれ出て視界が奪われる。思わず硬直していると、何か温かいものが胸に入ってくるような感覚とともに、再び意識が遠のいていった。
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