レイン・フライ・アウェイ
『大きくなったら、お空を飛びたいね。どこまでも、どこまでも、天の果てまで』
って、昔言ってたよね、雫。
そういえば、そうだったね、みなもちゃん。
……それ、今、叶っちゃったね。
まさか、こんな風に叶うなんて、思わなかったよ。ほら見て、みなもちゃん。今、世界をさかさまに見渡しているんだよ? これって、すごい体験だよね。
そうだね。雨が降っていなかったら、もっとキレイな空が見下ろせたんだけどね。
でも、ごめんね。こんなところにまで一緒に来てもらっちゃって。……本当に、わたしと一緒でよかったの? 後悔……しない?
しないよ、絶対。だから、今日はクランテホテルの最上階のレストランで、二人で雫の誕生日パーティーしようって、提案したんじゃん。私、雫のこと、大好き。愛してるよ。
……ありがとう。わたしも、みなもちゃんのこと大好き。この手、ずっと握ったままでいてね?
うん。絶対に離さない。たとえ、この体がバラバラになってm
「き、キャアアアァァァァッ!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ねえ、ちょっとタカシ聞いた?」
「なんだよ?」
「昨日、クランテホテルの最上階のレストランから、うちらと同い年の女の子二人が落ちて死んだんだって!」
「マジかよ。俺達が明日行くところじゃん!」
「なんか、その二人の女の子が座っていた席の横に大きな窓ガラスがあって、たまたま立て付けが悪かったらしくてさー。それが偶然外れて。ほら、あそこって八十階じゃん? 外に抜ける風に押されて、二人とも落ちちゃったらしいよ」
「うわ、やべぇなそれ」
「で、ここが気味悪いところなんだけど、地面に叩きつけられた時に二人とも体がバラバラになったんだけど、なんと……どっちがどっちだかわかんないけど、右手同士が指を絡めた部分だけ、パーツが残ったんだってさ。なんかの呪いみたいだよね」
「それ気持ちわりーな。もう俺達の大学卒業祝いのデートにそこ使えなくなっちまったじゃん。ホント迷惑」
どうも、壊れ始めたラジオです。
これは先日、Twitterで「雨が降る中で手を繋いでいる百合」という言葉を見つけて思いついたものです。
結構エグい話になってしまいました。
それでは。