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花をさかすことしかできない魔法使いモン [花モン] 作者:井上ジェット
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4.炎のミリアレッド

――ヴェルサ中心街の外れ

 魔法使いといえど、空を飛べる者は20人に一人というところ。道具を使わずに空を飛べる者はもっと少ない。
 14人の若者が泥だまりに高く掛けたロープを渡りきれるかという遊びをしています。誰かが落ちれば皆が大笑い。落ちた者が他の者を引っ張り込んでまた大笑い。戦地へ行く予定の者がいる時にこれをやって泥だらけになり盛り上がります。泥がつかないのは最後の一人だけ。魔法で空を飛べる者がいても最初にバケツで泥をかけられ、全員が泥だらけになります。モンも泥だらけになって大笑いです。
「次行こう!」
 泥かぶり会が終われば着替えることなく宴会です。いつもより贅沢なゴハンを食べてから、今度は酒をかけ合います。
「オレは炎のミリアレッドだ!」
「おまえは炎のミリアレッドだ!」
 ミリアレッドは先鋒隊に所属しています。奪われた土地を取り返す戦いから帰ってきて、そしてまた次の場所へ向けて出発をするのです。今日は彼のための集まりで、すっかり酒も回ってきた時のことです。
「マキだって今度出発する。心配だよ。戦わずに済めばいいのにな」
 壮行会でモンがつぶやいた一言が、酒の入ったミリアレッドの気に障りました。
「モンは出兵せずに俺たちの気持ちがわかるのか?戦いにも行かず、何やってるんだ」
 モンは自分が戦力にならないことを知っています。言い返さず我慢しました。ミリアレッドはモンの頭に酒をかけました。周りの者がミリアレッドを止めます。
「今日はキミの日だ。ミリアレッド」
 ミリアレッドを立てるつもりでモンは言いましたが、そうなりません。
「おまえ、マジメすぎるぞ。そういう態度が癪に障る。おまえを殴っていいか?戦っている者の気持ちが少しはわかるだろうよ」
 周りが本格的に止めに入り、ミリアレッドは拳を下ろしましたが…
 ミリアレッドは片手を力強く前に出し衝撃波を放ちました。モンは腹に空気の塊を受けると、草原へ弾き出て地面を弾んで川の向こう岸まで飛ばされました。
「みなできることがあるからやる。力や能力はなんのためにあると思うのか」
 ミリアレッドは、モンのほうへ歩みながら、言いました。
「そんなものなければ、暴力を振るわなくて済むじゃないか」
「主義やモラルがない者だっている。男の本能とはそういうものだろう。公平とか、くそ食らえの、支配派のやつらがいる」
「僕は支配派じゃない」
「オレもさ!人がバカになってるんだ。賢いやり方など、通じない。意味なんて考えない。戦って終わらせるんだ。動物を躾けるように。言って聞かないから戦うんだ。譲り合えないから」
「譲れるだろう!」
「モン、君こそこの考えを譲っていないだろう!」
「ああ…なら譲る。また殴ってみせろよ」
 ミリアレッドは殴りませんでした。
「…すまない。…キミのやり方があるなら、やってみせろ。…今日は言い過ぎた…」
 ミリアレッドが謝ると、モンも謝りました。
「ミリアレッド…ごめん」

 マキもその場にいたが何もできませんでした。
「私は…ミリアレッドの考えが正しいと思う…」
「マキもそう思うのか?」
「私、あなた達のケンカを止めようと思ったの…そうしたら体から力が溢れ出るようで、怖くなったわ…。私のこの力はどこから出てくるのかしら…」
「マキ…大丈夫かい?そのことはまた話し合おうね。さあ、今日はもう帰って落ち着こう」
 モンはマキを支えて帰って行きました。

『マキは、戦う…
 ミリアレッドも戦う…
 僕は戦えない!?
 …なぜ僕はそんな風に大人になったんだ…僕にも戦わせてくれよ…
 守ることも、戦うこともできないなんて!』

 モンの魔法の花は果物や野菜など実がならないものだったので、皆にとって都合が良いとは言えません。皆は、なあんだと、役に立たない魔法だとつぶやいていました。戦争で戦うことについても、手のひらに乗るような花には、強力な炎や雷に対抗できるものではないのです。
「モンは戦わなくて良いんだよ…私が戦うから」
 マキはやさしく言いました。マキが戦地へ行く日は数日に迫っています。 
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