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アンナリーザは今日も元気 ~私の娘は規格外~ 作者:和久井 透夏

第1章 ある日森の中、魔物を放った♪

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#7 アンナリーザは不満

「CからAに格上げって、一体何があったんですか……?」
「実は、魔物討伐は毎日続けているんですが、最近日に日に出てくる魔物の数が多くなってもう手に負えなくなってきたんです。出てくる魔物の種類は大分減って今は三種類しかいないそうなんですが……」

 お姉さんの言葉に、私はすぐにピンと来た。
 そう、例の蛾とイナゴとムカデの魔物達だ。

「それで調べてみたらのその魔物達は国の方で特別危険生物に指定されているらしくて、国の方に報告を上げたら、正式に国から駆除の依頼が来て、その時にランクも一気に二つ上がってAランクになったんです」

 まあ、あの魔物達は一種類だけでも過去に飢饉や疫病を流行らせた事もあるので、そういう意味ではAランク指定も頷ける。
 もっとも、事前に森から出る前に隔離できたので、今回の危険度はそんなに高くないような気もするけれど。

 Aランクの依頼ともなると、報酬もかなり跳ね上がる。
 依頼元は国に変更されたので、これ以上村の人が森の魔物のせいで懐を痛める事は無いだろう。

 国は森ごと魔物を焼き払う事を決め、現在大規模な火属性魔法を扱える、もしくは、火属性の魔法攻撃を遮断できる魔術師を募集しているらしい。
 魔法攻撃の遮断は、魔法による炎の影響が周囲に及ばないようするためのものだろう。

「あ、それと早々に異変に気づいて森に結界を張って魔物を隔離したレティシアさんにはその功績を認めた報奨金と感謝状、それと直々の協力要請が出てます。さっき国から連絡に来た方が施設の方に行ったので、入れ違いになっちゃいましたね」

「え」
 ついでのように添えられたお姉さんの言葉に私は固まる。

「レティシアさんは火属性の最高火力魔法も絶対魔術防壁も習得済みですし、スキル的にも全く問題はありませんよね! お仕事の日はちゃんとうちで責任持ってアンナリーザちゃんをお預かりしますし、バックアップは任せてください!」

 爽やかな笑顔で報奨金と協力要請の証書を私に見せながら受付のお姉さんは言い放つ。
 あー……、これは絶対断れないやつだ。

 私達は現在、成り行きではあるけれども冒険者ギルドに住居を提供してもらっている。
 それなりの恩もあり、仕事のバックアップもしてくれると言ってくれているのに、国から直々の協力要請を断って顔を潰すような事があれば、それこそもうここでは仕事を受けられないだろう。

 国の方も、火属性の最高火力魔法や絶対魔術防壁は習得難易度が高くて使える人間が少ないので、ちょうどよく使えそうな人間がいるなら確保しておこうって事なのだろう。

 まあ、こうなった原因はアンナリーザなので、そんなものがなくても今回の事で働くのは全くやぶさかではないのだけれど。
 むしろ、報酬を貰っていいのかと言う気さえする。

 ……貰うけど。



「森、全部燃やしちゃうの?」
 その後、私は施設に戻って国からの要請を伝えにきたお姉さんに会った。
 正式に報奨金を受け取り、同時に協力要請も受けた私はそれを快諾する。
 隣で話を聞いていたアンナリーザは、おねえさんが帰った後、私の服の袖を引っ張りながら不安そうな顔で聞いてきた。

「そうね。あの森はもう魔物が増えすぎてどうしようもないみたいだし、仕方ないわ」
「前に本で読んだ、大規模な魔物寄せの魔法で集めてまとめて倒したりできないの?」
 アンナリーザの言葉に私は静かに首を横に振る。
 確かに家にはそんな魔法について書かれた魔術書もあったけれど、いつの間に読んでいたのだろう。

「それで寄って来るのは自力で動ける成虫や幼虫だけで、卵は反応しないから、完全な駆除は出来ないわ。それに、大規模とは言っても魔法の効果範囲に対して森が広すぎるわ」
「そうなんだ……でも、森がなくなったら、皆困るよね」
 しゅんとした様子でアンナリーザがうつむく。
 今回の事で責任を感じているようだ。

「今の状態のままだったら困るだろうけど、森が全部更地になれば、新たに畑を作る事もできるし、将来的には村もそれでより豊かになるかもしれないわ」
「でも、そしたら私はどこで魔法使えばいいの? 森がなくなったら家の前が外から丸見えになっちゃう」

 ……責任を感じてなくもないのだろうけど、アンナリーザが森を焼き払うの嫌がるのは人目につかずに自由に魔法を使える場所がなくなるのが嫌なのが大きいようだ。
 一応、ちゃんと私の言いつけを守って自分が魔法を使える事を隠そうとしているのは褒めるべきなのだろうけども……。

「まあ、家の周りに大きな塀を作るか、引越しかしらね」
「それはいつまで?」
「森を焼き払うのは一ヶ月後みたいだから、すぐにどうこうしても、それまでは無理ね」
 Aランクの依頼ともなれば、それなりに求められる技術が高くなるし、その技術を持った人間は限られてくる。

 募集の一ヶ月というのも、それだけの技術を持った魔術師を集めるには時間が必要だからだ。
 一ヶ月もあれば、確実に森は魔物達に見る影も無く食い荒らされてしまうだろう。
 まあ、魔物は森の中から出られないし、全て焼き払うつもりなのだろうからそれでいいのだろうけれど……。

 万が一にも我が家がその森を焼き払う時に被害を受けないとは言い切れないので、貴重品などはそれまでに避難させた方が良さそうだ。

「そんなに使わなかったら使い方忘れちゃうよ!」
 だだをこねるようにアンナリーザが言う。
 しばらく魔法が使えないことが我慢ならないらしい。

「もうずっと魔法使ってない! 使いたい! 魔法! 魔法!」
 気持ちが爆発したようにアンナリーザは淡いその水色の髪を振り乱しながら駄々をこね出した。
 まずい、このままだとまた隠れてどっかで魔法を使いそうだ。
 そして、今それをされると色々と大変な事になる。

 何か、何かアンナリーザの気をそらせるものは……私は部屋の中を見回して、ふとある事を思い出した。
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